住宅リフォーム/マンションリフォーム

親の老後のために、築40年マンションリフォーム事例

築40年超のマンションリフォーム事例をご紹介します。高齢の親のために娘がリフォームを依頼。老築化が激しかった住まいが、老後を安心して暮らせるバリアフリーで自然素材のやさしさにあふれる終の棲家へと生まれ変わりました。(2017年改訂版、初出:2015年6月)

尾間 紫/Yuu

執筆者:尾間 紫/Yuu

リフォームガイド

高齢の親の終の棲家として、築40年のマンションをリフォーム

築40年のマンションは、設備の老朽化、床の段差、冬の寒さに悩まされるなど、高齢になったご両親にとって快適とは言えないものでした。そこで、これからも安心して老後を暮らせるよう娘がリフォームを依頼。バリアフリーで自然素材のやさしさに溢れる終の棲家へと生まれ変わった事例をご紹介します。

設備の老朽化、冬の寒さに悩む築40年のマンションリフォーム事例

歳を取ると住み慣れた街や家を離れたくないという思いを持つ人が多いもの。古くなったから気軽に住み替えるというのは、なかなか難しいものがあります。今回ご紹介するのは、高齢のご夫婦が40年以上を暮らし続けた老築化が目立つマンションを、終の棲家として老後を快適に暮らし続ける新しい住まいへとリフォームした事例です。

まずは築40年超のリフォーム前の様子からご覧頂きましょう。浴室、キッチンなどの設備は老朽化が進み、使いにくいだけでなく掃除に大変な手間がかかっていました。また浴室の床のタイルは冷たく滑り、入り口には大きな段差があるなど危険もありました。

中古マンションのキッチン

リフォーム前。老築化したキッチン。古いサッシのスキマ風で冬はとても寒い。


古いお風呂

リフォーム前。約40年前の浴室。床のタイルは冷たく滑る。入り口には段差。


古びた間取り

リフォーム前。細かく間仕切られた使いにくい間取り。床面には段差、カビも見られる。


昔の間取りの平面図

リフォーム前の間取り。築42年。50平方メートルで3LDK。部屋数が多く夫婦2人には暮らしにくい。暗く風通しが悪いのも気になる。


築年数が古いマンションのため、和室が中心の間取りで、部屋が細かく間仕切られていて狭い部屋がたくさんあり、老後を暮らすには不便を感じていました。また古いサッシからはスキマ風が入り冬はとても寒く、壁が多いので光や風が通りにくく、あちこちにカビも見られました。

親の老後のためのマンションリフォーム、バリアフリー&快適な終の棲家

リフォームを勧めたのは、別に暮らしている娘さんでした。築40年超のマンション暮らしは、設備の老朽化、床の段差、冬の寒さに悩まされるなど、ご両親が老後を暮らすのに快適とは言えませんでした。かと言って住み替えは、高齢者にとって大きな負担になります。特に今まで築いてきたご近所付き合いやコミュニティを離れることは、辛く感じる人が少なくないでしょう。

そこで、40年以上暮らした愛着のある今の街、今の住まいで、高齢になった両親がこれからも安全に快適に暮らし続けられるようマンションのリフォームを依頼。離れていてもお互いが安心して暮らせるよう、バリアフリーで快適な住まいづくりをスタートさせました。

構造部や共用部をのぞく全てを解体、マンションのスケルトンリフォーム

築年数が古いマンションで注意しておきたいのが、配管や断熱といった暮らしを支える基本の性能部分です。いくら見栄えをよくしても、配管が劣化していれば漏水の危険がありますし、断熱性能が低ければ結露や寒さ、暑さに悩まされることになります。

これから長く暮らし続けるためにも、これらの現状の見極めと性能の確認が必要なため、コンクリートの内側の専有部分をいったん撤去。構造部や配管部を全てむき出しにしました。これがいわゆるスケルトンと呼ばれる状態です。

スケルトンリフォーム

床、壁、天井、配管などリフォームが許された専有部分を全て取り払ったスケルトン状態。


錆びた配管の断面

古い配管の断面。錆が詰まり劣化が進行している。

壁を取り払ってみると、中に断熱材は無く、また古い配管を確認すると、かなり劣化が進行していることがわかりました。断熱材が入っていない古い時代のマンションは、冬寒く、夏暑く、結露が起きやすい状況にあります。また配管の劣化がこのまま進めば、漏水や破裂の危険性もあります。

そこで新しく断熱材を入れ、配管は全て新しくすることにしました。これでこの先もずっと長く安心して暮らせます。配管や断熱は表面には見えない部分ですが、快適に暮らすためにはとても大事なポイントです。特に築20年を超えた古いマンションでは、力を入れたいリフォームです。

 

安心快適な終の棲家を目指して、断熱と最新の配管リフォームを実施

マンションでの断熱リフォームの基本は、屋外に面した壁面を断熱材で覆うようにすることです。ただし中途半端な工事をしてしまうと、内部結露を起こして、却ってカビの温床になってしまうことも。断熱工事は、マンションの工事に慣れた業者に依頼することが肝心です。

壁断熱

断熱材をスキマ無く施工することで冬暖かく夏涼しくなる。


マンションの配管材料と工法は、ここ20年ほどでかなり進化しています。丈夫で劣化に強く、またメンテナンスがしやすくなっているのが特徴です。リフォームの際には、配管の更新も忘れずに計画に入れておきましょう。後からやろうと思うと、二度手間になります。

配管リフォーム

丈夫で長持ち、メンテナンス性に優れた配管、積水化学工業製「架橋ポリエチレン管エスロペックス」


築40年マンションリフォーム後!バリアフリーで暮らしやすい終の棲家へ

高齢の両親の老後のための築40年のマンションリフォーム、完成の様子です。細かく間仕切られていた壁を取り払ってひろびろとした大空間になりました。いったんスケルトン状態にしたので壁は全て新しくなり、風通しよく、そして部屋の隅々まで明るい光が差し込んでいます。

リビングのリフォーム

リフォーム後。大きなLDKと仕切りを設けただけのオープンなベッドルーム。


現在の平面図

リフォーム後の間取り。高齢の夫婦2人の暮らしやすさを追求している。


高齢の夫婦2人が終の棲家としてこの先もずっと安全に便利に暮らせるよう、全ての物に目が届く完全バリアフリーな住まいになっています。床の段差はすべて解消、ベッドから水まわりを最短距離にし、洗面台もオープンスタイルになっていて、車いすの生活にも対応できます。

完全バリアフリー

リフォーム後。ベッドから水まわりを最短距離に、段差が無い完全バリアフリー。


自然素材のぬくもりと気持ちいい風が通り抜けるマンションに

これから長く暮らす住まいですから、機能だけでなく快適性も大事なポイントです。壁には断熱リフォーム、内窓の取り付けを行い、間取りを変えることで風抜けをよくしました。また自然素材を使うことで、エアコンに頼りすぎない快適な住まいを目指しています。

版熱窓リフォーム

リフォーム後。窓には内窓を取り付けることで、スキマ風を防ぎ、断熱効果も高まった。


床は国産杉の無垢材を使用。素足に柔らかく、湿度の高い時でもサラサラと気持ちよく、冬はほんのりとしたぬくもりを感じます。コンクリートの床面との間にスキマを作る二重床システムにしているので、配管のメンテナンスなども楽にできるようになりました。

いかがでしたでしょうか。築42年、50平方メートルのマンションの一室が、素晴らしい終の棲家に変身しました。高齢の両親の暮らしを心配している世代はもちろん、ご自身の終の棲家づくりにも参考になる事例です。
(取材協力:積水化学マルリノ

マンションは一戸建てに比べてコンパクトで質の高い暮らしができるので、老後はマンション暮らしを選択するシニア世代が増えています。中古マンション購入+リフォームを行う際の注意点と成功のポイントは下記で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
マンションの水まわりリフォームの注意点は下記にまとめてありますのであわせてご覧下さい。
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