耐震リフォーム

建築士の目線で考える「地震の時に安全な家」、今すぐできる地震対策

大きな地震が発生したら、どう対処すればよいのでしょうか。一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの筆者が、地震時に安全な家のつくりや、今すぐやっておきたい地震対策をご紹介します。

尾間 紫/Yuu

執筆者:尾間 紫/Yuu

リフォームガイド

大きな地震が来たら……どう対処する?

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先日、大きな地震が発生しました。毎日を不安な気持ちで過ごしていらっしゃる方もいることでしょう。地震時には皆さんどのような行動をとられたでしょうか? 編集部の皆さんに当日の様子を聞くと、リビングの中央でふんばったという人、逃げ場がわからず室内をうろうろし続けた人、机の下にもぐったなどという声も。

今回は、一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの筆者が、地震時に安全な家のつくりや、今すぐやっておきたい地震対策をご紹介します。

 

地震発生時、意外と迷う「どこに逃げる」か

地震が発生したら、家の中のどこにいれば安全なのでしょうか?

筆者が子どもの頃、昭和の時代には「地震の時は机の下へ」と言われ、学校の避難訓練では、落下物や倒れてくる家具から身を守るために、まず机の下にもぐる練習をしました。

ただこれはケースバイケースで、落下物から頭などを守りやすくはなりますが、大きな地震では机ごと飛ばされる可能性もあるのです。1995年に発生した阪神・淡路大震災の経験者からは、「地震時に寝ていたら、大きなテレビが身体すれすれに飛んできて命の危険を感じた」という話を聞きました。

また昔は、地震が来たら「トイレに逃げ込めば安心」とも言われていました。というのも、トイレは1畳ほどの小さな部屋を4本の柱で囲んでいますので、地震が来ても潰れにくいとされていたからです。

確かにトイレ内には上から落ちてくる物や倒れてくる家具がないので、ケガの心配は少なくなります。そういった面では他の部屋より安全と言えるでしょう。

 

「トイレが安全」説は前提条件ありき!

しかしこれは、家が「倒壊」しなければの話です。倒壊とは、室内空間がなくなるほど家がつぶれてしまう状態のことで、2018年の熊本地震では倒壊した家も少なくありませんでした。そうなれば、トイレ内に避難したとしても無事ではいられません。

つまり地震が来たらトイレの個室に逃げ込めば安心というのは、家そのものが無事であることが前提の話ということになります。

またトイレに避難することには、ひとつ危険が伴います。地震で家がゆがんでしまうとドアが開かなくなる可能性があるのです。そうなると狭いトイレの中に閉じ込められてしまいます。

リビングであれば掃き出し窓などから外に出ることができますが、トイレの窓は小さいのでなかなかそうもいきません。もしもトイレにいる時に大きな地震が来たら、まずはドアを開けて逃げ道を確保しつつ、命の安全を優先に行動することを心掛けていただければと思います。

 

地震時に「安全な家」とは? 熊本地震の調査で分かったこと

では地震時に安全な家とはどんな家でしょうか?

まずは倒壊しないこと、そして落下物や家具の転倒によるケガをしない家であることです。もちろん、津波や火災などの危険がある場合は、速やかに避難することが肝心になります。

地震時の建物の強さは建築基準法によって定められていますが、この基準は大きな地震を経るごとに新しい基準へと強化されてきました。この基準が大きく変わったのが1981年。この年を境目に地震への強さが大きく変わり、それ以前を旧耐震基準、それ以降を新耐震基準と呼んで区別しています。

これは一戸建て・マンションとも共通で、新耐震基準に沿って建てられた家であれば、倒壊しにくい家と言えます。また、旧耐震基準の家でも耐震改修をして新しい基準を満たしていれば安心です。

加えて、木造住宅の場合は2000年にも追加された基準があります。その内容は、柱と梁などの接合部をしっかり金物でつなぐ、壁の配置バランスをよくするというもので、熊本地震の被害状況の調査(※)では、新耐震と旧耐震の家で倒壊数に大きな差があっただけでなく、2000年以降の家は、それ以前の家と比べて被害が少なかったことが分かりました。

つまり木造住宅の場合は、2000年の基準もチェックしておくことで、更に安心度が高まるというわけです。

(※新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法より / 一般財団法人日本建築防災協会、国土交通大臣指定耐震改修支援センター)

 

地震時に家の中で安全な場所はどこ? 地震対策で今すぐできる3つのこと

次に、地震時に家の中のどこにいれば安全かを考えてみましょう。大地震の被害では、建物の倒壊だけでなく、家の中にあるものによる被害も少なくありません。

つまり家の中で安全な場所は、「落下物や倒れてくる家具がなく、ガラスが飛び散らず、そしていざという時に外に出やすい部屋」なのです。

そこで地震対策として今すぐできること3つ、ご紹介しましょう。

1. 落下物や家具の転倒、物の飛び出しを防ぐ工夫
タンス、テレビ、ピアノなど大物家具は建物と一体化するようにしっかり固定します。ホームセンターで売っている転倒防止金物を使うといいでしょう。ピアノは専用の金物を使用してください。

ただし、固定する天井や壁、床の強度が低いと、すぐに外れてしまったり壁ごと飛んできたりすることも。下地が入った壁にしっかり留めるようにしましょう。下地の有無が分からない場合は、市販の下地チェッカー(下地センサー、下地探し)が1000円程度から購入できます。

また、大きな地震になると収納の扉が開いてアイロンやハサミ、花瓶など危険を伴う収納物が勢いよく飛び出してくることもありますから、吊戸棚を含む収納扉には「耐震ラッチ」(揺れるとロックが掛かって扉が開かなくなる金物)を取り付けておきましょう。ホームセンターなどで入手可能です。

2. ガラスの飛散防止
地震でガラスが割れると、その破片で大ケガをしてしまうこともあります。家の中では裸足でいることもありますので、窓ガラスや収納扉のガラスなど室内にあるガラスには、やはりホームセンター等で入手できる「飛散防止フィルム」を貼るなどして対策をしておきましょう。地震だけでなく台風時にも役立ちます。

3. 備蓄品の準備
ライフラインがストップした時のことを考え、水なら3日分程度は用意を。4人家族の場合はおよそ36リットル、つまり2リットルのペットボトル18本分です。6本入り段ボールで3箱、その他に食料も必要になるので、大きめの収納スペースを確保する必要があります。

収納位置の基本は重いものは足元に、軽い物は頭の上に。収納ソファーやベッドなど家具を利用したり、あまり使っていない吊戸棚や天袋を活用したり、工夫をしてみてください。

食品類は、ローリングストック法で消費すれば、賞味期限切れを防ぎやすくなります。ローリングストックとは、少し多めに食品を備蓄して、普段に食べながら買い足す方法です。最近では防災備蓄セットのサブスク「カップヌードル ローリングストックセット」もあります。食品類とカセットボンベ、水などをセットにしたもので、入れ替える食品だけが3カ月おきに新しく届きます。


いざという時の備えが何よりも大切です。災害対策への意識を高め、毎日を安心してお過ごしくださいね。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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