耐震補強リフォーム

耐震とリフォームをそれぞれ別のものとして捉えてしまうと、計画する上で、あるいは予算を考える上で、後悔することにつながります。

東日本大震災以降、リフォームについてじっくりと考えなおす方が増えたように思います。部屋をキレイにするというリフォームも大切なのですが、それに加えて耐震をリフォームのテーマに掲げられる方も少なくありません。

せっかく苦労して手に入れた(あるいは親から引き継いだ)マイホームなのですから、できれば長く快適に住み続けたいもの。そんな思いがリフォームの要望やプランにも反映されるケースが続出しています。

そこで今回は「耐震」と「改修」を同時に実施した2人の施主の事例をご紹介します。同じようなリフォーム内容だったのですが、明暗が分かれました。そのポイントは一体何だったのでしょうか。

地震でドアが開きにくくなった!

Aさん(60代男性)は古くなった戸建住宅の耐震補強についてずっと悩んでいました。築36年となり、建て替えも念頭に入れる時期ではありましたが、特に大きな破損箇所もなかったことから、そのまま住み続けていました。

ところが今回の震災をきっかけにAさんは耐震について真剣に考えるようになりました。震災後、玄関ドアが開きにくくなったのです。全くドアが開かない訳ではありませんが、調べてみると玄関ドアの枠が若干歪んでいるように見えます。古い建物であるがゆえ、きっと耐震性能が低いせいではないかと思うようになり、改めて家のことを考え直すことになりました。

新しい間取りを考えたり、モデルルームを見学に行く余裕も建て替えの予算もなかったAさんは、リフォームで我が家を再生することを決意し、耐震補強を中心としたリフォームについて業者と打ち合わせを進めていきました。すると、ところどころ構造材が傷んでいて交換が必要であること、現行の耐震基準に達していないと思われる箇所の補強を実施すべきであることが現場調査で判明しました。

80万円の見積りを蹴って470万円で決断

断熱・防犯ドアリフォーム中

開きにくくなったドアを断熱性や防犯性の高いドアに取り替えることで、居住性が大幅にアップします。

数日後、業者から提示された耐震補強リフォームの見積り(約80万円。玄関ドア交換含む)を見ながらAさんは考えました。耐震のためだけにリフォームすることも可能だが、構造材を劣化させる原因となった部分(特に水回りや外壁)をしっかりこの機会に直しておけば、まだ数十年住むことが可能になるのではないか、ということです。早速業者に尋ねてみると「そうした方が長い目で見た時には安上がりになる」との返事。こうしてAさんはタイルのひび割れがきになっていた浴室と、床がブカブカして気になっていたキッチンについて、設備入れ替えを前提としたリフォーム見積りをもらうことにしました。

さらに数日後、業者からの勧めで外壁と屋根の塗装工事も加えた見積り金額は約470万円に膨らんでしまいましたが、住まいを建て替えることを考えたらはるかに安い金額です。耐震補強のみ、浴室・キッチンなどのリフォームのみ、外壁・屋根塗装工事などと、個別に工事をした場合に比べておそらく50万~60万円はお買い得になるだろうとのアドバイスをもらったAさんは、この内容でリフォームすることにしました。

工事後、取材に協力してくれたAさんは「我ながら思い切った決断をしたものです。でも新築やマンションを新しく買う方がもっと私には難しかった。お金の面もそうですが、慣れない場所に戸惑いながら暮らすよりも、自分の思い通りになる我が家をリフォームした方がずっと楽ですから」と話してくれました。そんなAさんの表情からは安心できる我が家をしっかり確保できたという自負が感じられました。

一方、Aさんと同じように耐震補強のリフォームからスタートして、住まいの全面的なリフォームに発展したのですが、何となく不満が残るBさんのケースについて次のページでご紹介します