万が一に備えて契約書の特約は大切です
たとえば、中古マンションの一室が売買された後、その部屋に隠れた瑕疵(欠陥)が見つかった場合、買主は売主に対して損害賠償を請求することができます。
これを売主の瑕疵担保責任と言いますが、この民法の規定は当事者の合意があれば変更が可能で、極端に言えば「売主は瑕疵担保責任を負わない」とする特約も可能です。
ただし、売主が宅地建物取引業者である場合には、買主を保護するために別の法令上の制限が加わり、民法の規定に比べて買主に不利な条件で特約を結ぶと無効となる場合があります。
今回は、売主の瑕疵担保責任に関する特約の変更に関する制限と、特約に反した場合の取り扱いについて解説します。
押さえるべき論点は2つ!
(1) 瑕疵担保責任に関する原則【民法】売主の瑕疵担保責任を追及する場合の条件を整理すると以下の通りです。
a) 「隠れた瑕疵」であること
通常の注意を払っても知ることができないレベルの欠陥であることが
要件の一つになります。
ただし、売買の対象物件が強制競売による取引の場合には、例外
的に買主は瑕疵担保責任を追及できませんので、注意しましょう。
b) 買主が善意無過失であること
あらかじめ売主などから買主が聞いていた瑕疵は対象となりません。
c) 買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内であること
ただし、部屋の引渡の日から10年を経過した場合には、損害賠
償請求権の消滅時効にかかりますので、併せて覚えてきましょう。
(2) 宅建業法の「自ら売主制限」
民法の上記の規定にかかわらず、売主・買主双方の合意があれば、特約で原則自由に変更することができます。
ただし、売主が宅地建物取引業者で、かつ買主が宅建業者でない場合には、民法の規定に宅建業法上の規制が加わります。これを「自ら売主制限」といいます。
自ら売主制限に関する重要なポイントは、以下の3つです。
イ) 民法の規定よりも買主に不利な特約は、原則無効となる。
ロ) 特約が無効となった場合には、売主は民法の規定通りの責任を負う。
ハ) 有効な特約の条件は、物件引渡の日から2年以上の期間であること。
それでは、次ページでは、マンション管理士試験の過去問にトライしてみましょう。