ウンゲラーがテディベアに託して描く戦争と平和『オットー』
オットーは、ドイツの工場で作られた本物のテディベアです。オットーは、彼の持ち主であるユダヤ人の少年デビッドとその親友オスカーの3人で楽しい毎日を送っていました。しかし、戦争が起こり、3人は戦火の中それぞれの運命に翻弄されていきます。空襲にあい吹き飛ばされたオットー。やがて不思議な巡り合わせでアメリカ兵の命を助けたオットーは、ドイツからアメリカへと渡ります。長い年月を経て、様々な出来事が重なった末に、アメリカの骨董品屋の店先に並んでいたオットーに奇跡が起こりました。
ショーウインドウに並んでいたオットーに気づき、彼を買い上げてくれたのは、あのオスカーでした。しかもこの奇跡の再開が新聞にとりあげられたことで、さらなる奇跡が起こったのです。その奇跡とは、どのようなことだったのでしょうか?
題名の通り、この物語の主人公はぬいぐるみのクマであり、その戦争体験は悲しく辛いものでした。でもひょっとすると、ウンゲラーが本当に描きたかったのは、デビッドやオスカーの戦争体験だったのかもしれません。けれど、敢えてその悲惨な体験をオットーに投影し、温かな結末を用意することで、平和の素晴らしさをより際立たせているように思えます。ウンゲラーを敏腕プロデューサーと呼びたくなるのは、こんなところにその理由があるのかもしれません。
【書籍データ】
書籍名:オットー 戦火をくぐったテディベア
作:トミー・ウンゲラー 訳:鏡哲生
価格:1404円
出版社:評論社
推奨年齢:小学生くらいから
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