自動車保険/自動車保険関連情報

「もらい事故」でも賠償責任を問われることがある?

対向車同士の事故で片方がセンターラインオーバーしたケースでは、通常センターラインオーバーした側の過失が問われますが、2015年4月に福井地裁ではセンターラインオーバーされた側にも責任が求められました。自賠責保険や自動車保険では、どう対処するものなのかを解説します。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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センターラインオーバーの責任は?

センターラインオーバーの責任は?

2015年4月13日福井地裁において、車同士が衝突してセンターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故につき、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決がありました。

無過失が証明されなければ賠償責任があると定めている自動車損害賠償補償法(自賠法)に基づき賠償する義務を負うとして、対向車側にも4,000万円余りの損害賠償を命じています。

ニュースが流れるやネット上では、とんでもない判決がでたと、感情論に近いコメントが多数でていたり、法律を専門とされている方からは被害者救済の観点からの判決ではないかなど、さまざまな意見が交わされています。

いずれにしても判決はでましたので、事実関係を拾い出しながらこの事案と自動車保険について整理してみます。

この事故の当事者

この裁判に関わっている方は以下の通りです。なお、加害者・被害者という言葉を使うとこの事案はややっこしくなるためこの記事内での使用をあえて避けています。

■センターラインオーバーした側の車両の関係者 (以下、車両G)
運転者 : A
同乗者 : G(亡くなられた方)
Gの遺族: B等(他の遺族もおられますが、まとめてB等と記載します)
※GはG車両の所有者であり、自己の運行の用に供していた(運行供用者)。

■センターラインオーバーされた側の車両の関係者(以下、車両F)
運転者  :F
車両所有者:法人E(FはEの代表取締役)
※E法人はF車両を自己の運行の用に供していた(運行供用者)。

以下、それぞれA、G、B等、F、E法人などと記載します。

なお、上記のAやGなどですが、実際の判決文で使われているものをそのまま当てはめています。興味のある方は今回の判決文が30ページほどありますので読んでみてください。

実は訴訟事案は2件ある

ニュース記事を読むと、センターラインオーバーした側の遺族の訴訟判決がクローズアップされていますが、下記のとおり双方の車両の当事者それぞれが訴訟の提起をしています。

■甲事件
B等がG車両の運転者A、およびF車両の所有者であるE法人に対する訴訟

■乙事件
FがG車両の運転者A、およびB等に対する訴訟

事故態様・責任原因など

「G車両の運転者Aが時速約50キロで運転したいたところ仮眠状態に陥り、G車両を対向車線に進行させ、同車線上を進行してきたF運転のF車両に衝突させたもの」。これが事故の態様です。

責任原因については、センターラインオーバーした運転手Aが、対向車のF及びB等に対して民法709条の責任を負う、また同乗者Gは対向車のFに対して自賠法3条または民法709条に基づく責任を負う、というのが判決文の前提事実です。

これについては争いが無いか、容易に認定できる事実となっています。

今回は判決のみ注目されていますが、当然センターラインオーバーした側の責任も問われ、損賠賠償を命じられています。

また、Gは亡くなられていますが、対向車の運転者であるFも後遺障害を負う怪我を負っていること。併せて車両Fの前方に先行車が2台おり、2台の先行車はセンターラインオーバーした車を避けていたことも補足しておきます(事前に認識できたか否かは争点になっていました)。

>>>次のページでは、この事件のポイントを解説します

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