運動はニューロン同士の結合を促進する

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鉄棒など技能が必要な運動はさらに効果的

ニューロンの結合は、「結合」という表現を使うので混乱しやすいのですが、実際にニューロン同士がくっつくわけではなく、ニューロン同士で情報伝達を行うことが「結合」と呼ばれています。そして、その情報伝達が効率的であればあるほど、脳が活性化し、学習の効率もあがっていると言えるのです。

その情報伝達に関わっているのが、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンといった情報伝達物質といわれるものです。これらはそれぞれ個々の役割を持っていることは分かっていますが、お互いが複雑に作用しあってニューロン間での情報伝達を行っているので、どの物質をどれだけ増やせば効果が出るというものではありません。

大切なことは、運動することによってこれらのバランスが保たれ、情報伝達の効率が向上するということです。

「ニューロンの結合」を「人が歩いて道を作ること」に例えてみる

ニューロン間での情報伝達は、上記のような情報伝達物質が関わって行われますが、ニューロンの結合をより強固にして、さらに情報伝達を効率的にする物質としてBDNFという物質があります。このBDNFを説明するにあたり、「ニューロンの結合」を「人が歩いて道を作ること」に例えてみると、わかりやすくなります。

ニューロン間を渡り歩く人が多ければ多いほど、そしてそのスピードが速ければ速いほど、脳が活性化していると言えます。先ほど述べた情報伝達物質のバランスを保つことは、渡り歩く人へ作用するものですが、このBDNFは、通路を整備する働きをします。通路が整備されればそこを歩く人は歩きやすくなり、速く渡れるようになるし渡る人も多くなる、つまりニューロン間の情報伝達効率が上がるのです。

さて、このBDNFという物質ですが、これも運動によって増加すると考えられています。カリフォルニア大学の神経学者カール・コットマンの実験では、マウスを4つのグループに分け、マウスの好きな回し車で走らせると、走ったマウスの脳ではBDNFが増え、長く走ったマウスほどその量は多くなっていました。

どんな運動が効果的なのか

さて、ここまでで運動が多くの面で脳に良い影響を与えるということについてなんとなく理解していただけたと思いますが、それらを考慮して具体的にどういった運動をすればよいのかについて考えてみましょう。

かけっこ、ボール遊びなど、毎日続けられる無理のないもので良いのですが、さらに効果的な運動は……

有酸素運動が神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出します。一方、複雑な動きは、ネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにし、動きが複雑であればあるほど、シナプスの結びつきは、複雑になります。

つまり、そのどちらの効果も得ようと思えば、有酸素運動と複雑な動きをする運動を組み合わせた運動をすることが最も効果があると言えるでしょう。例えば、走りながら次の自分の動き瞬時に考えて行動するテニスや、あるいは10分ほどの有酸素運動でウォーミングアップをしたのち、逆立ちや鉄棒をするなど技能が必要な運動をするのが効果的です。

運動をすればいいだけではない

ここまで運動が脳に与える影響について述べてきましたが、学力をアップさせるためには、運動をすればいいだけではなく、もちろん、勉強をしなければなりません。運動すると脳の血流量が増し、思考力や集中力が高まるので、勉強を始める前に運動をすることが効果的です。実際、授業前の運動で、健康面でも学習面でも目覚ましく向上したという報告があがっています。

お休みの日の朝は、少しだけ早起きをしてお子さんとランニングや体操をしてみてはいかがでしょうか。もしかすると、三文以上の徳につながるかもしれません。

【参考文献】
「脳を鍛えるには運動しかない!」ジョンJ.レイティ
「子どもの脳を育む!良い習慣」久保田競


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