リノベーション向きの中古物件を、自分の目でも見極める
中古物件の選び方によっては、希望のリノベーションができないケースも。
そこで劣化の程度に関しては、建物の現状を検査、診断するインスペクションという制度があり、購入前に利用することで、後々のトラブルを防いでいくことができます。
しかしそれ以外にも中古住宅の中には、希望のリノベーションができないもの、新築を超えるほどの費用が掛かってしまうもの、複数回のリフォームが必要なものもあります。これらを購入前に見極めておくために、リノベ—ションがしやすい中古物件を見抜く7つのポイントをご紹介します。
ポイント1. 外壁や基礎のヒビに注目、自分の目で確認して見抜く
外壁や基礎の状態を、自分の目でじっくり確認しておこう。
中古住宅でよく見る、外壁にできた細く小さなヒビは表面だけの劣化であることが多く、それ程心配は要りません。ただし表面は傷んでいるわけですから、早目に外壁塗装リフォームを計画する必要があります。
しかし太く大きなヒビがあったら要注意です。家の歪みが原因になっていることがあり、地盤や基礎の沈下、構造の腐食、もともと欠陥住宅であったなどが考えられます。
耐震上問題があることも多く、この先長く住むのであれば大掛かりな修繕のリフォームが必要になる可能性があります。当然多額の費用が掛かるため、リノベーション向き中古物件とは言えないでしょう。
ポイント2.窓サッシやドアの開閉を行い、自分で確認して見抜く
窓の交換は費用がかさむので、既存が生かせればリノベーション費用を抑えられる。
サッシの滑りの悪さは、戸車の劣化や歪みによることが多く、戸車の交換やサッシの調整などの軽微なリフォームで解消することができます。
しかし枠とサッシが斜めに傾いてスキマができていたり、ドアの立て付けが極端に悪かったりする場合は、構造に問題が起きている可能性があります。1階の壁量が不足して2階が支えきれずに鴨居が下がり、戸が動かなくなっていた家もありますので、専門家に確認してもらいましょう。
また窓の断熱性能が低いと、結露がしやすいだけでなく、冷暖房の効きが悪く、その分光熱費が高くつきます。古い物件は概して、性能が低いため、快適に暮らすためには、断熱サッシやガラスへの交換、内窓の取り付けなどが必要になります。
このような窓のリフォームは、数が多いため費用がかさみます。もともと断熱性の高い窓が取り付けられている中古物件なら、その分リノベーション費用を抑えることができますので、窓の性能をシッカリ確認しておきましょう。
ポイント3.湿気や水は大敵、シミやカビ、ニオイを自分で確認して見抜く
最上階の天井のシミは雨漏りの跡である可能性が高い。
天井のシミは要注意です。雨漏りの跡であることが多く、今は止まっていても、きちんと対策していないと再び雨漏りする可能性があります。
雨漏りは、屋根だけでなく外壁が原因であることもあり、原因の特定と修繕が難しいものです。補修工事が大掛かりになることもあり、費用が掛かり過ぎて、希望のリノベーションができないケースもありますので、注意しましょう。
また北側のサッシ周りや壁面、収納内部に結露の跡やカビがないか、床下がカビ臭くないか、出窓まわりに結露によるカビや腐食が無いか確認しておきましょう。床下は床下収納庫などから確認できます。
カビが顕著に現れている場合は、湿気対策が必要です。床下からの湿気なのか、断熱不足による結露なのか、雨漏りなのか、それぞれ対策方法も費用も異なりますので、まずは専門家に見てもらいましょう。
ポイント4.バリアフリーにしやすいか、間取りが生かせるかを見抜く
バリアフリー化の中でも手すりの取り付けなどは比較的工事は簡単。
バリアフリー化は、簡単にできるものと、そうでないものがあり、床の段差解消、ドア幅を引き戸にする、手すりの取り付けなどのリフォームは比較的簡単にできます。
しかし廊下の幅を広げたり、階段の移動や勾配を変えるような構造が絡む工事は大掛かりになりがちで、費用もかさみます。
また水まわりの移動も費用がかさみます。「寝室の側にトイレが欲しい」 などの希望がある場合は、そのままの間取りが生かせるような物件を選ぶと、リノベーションの費用が節約できます。
ポイント5.リフォーム履歴やインスペクションで、将来の出費を見抜く
家は大きな買い物。10年後、20年後の出費を考えると、インスペクションの費用は決して高くない。
特に屋根、外壁、床下は、大きな費用が掛かりますので、今までのリフォーム履歴を確認し、適宜にメンテナンスがされているかを確認しましょう。
現状を確認するために有効なのが、既存住宅の現況検査、インスペクションです。インスペクションは大きくわけて3種類、今の状態を知る検査、劣化の原因や範囲を特定する診断、性能向上に関するものがあります。費用は簡易なもので5万円~程度です。
家は一生に一度の大きな買い物です。安心して購入するためにも、このインスペクションを上手に利用しましょう。詳細は下記でご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
その際は、現在の痛み具合だけでなく、10年後、20年後のメンテナンスにどの程度の費用が掛かるのか?というところまで把握して選べば、先々の出費に差が付きます。今はよくても10年後にまた何百万円も掛かるようでは困ります。将来の出費を節約できる家が、リノベーション向き中古物件と言えます。
ポイント6.1981年が持つ意味を知って、地震に強い家を見抜く
1981年以降の耐震基準を新耐震基準と言い、安全に暮らすために必要な性能。
住宅の耐震性能は建築基準法によって定められていて、1981年に大きな改正があり、新しい基準が定められました。
つまり1981年より前に建てられた住宅は、現在必要な耐震性能よりも低い基準で設計されているので、耐震リフォームが必要になります。
リノベーションの予算を考える際は、このような性能向上のための費用をみておく必要があります。節約したい場合は、1981年以降の基準に沿って設計された物件を購入するといいでしょう。また1981年以前の基準で設計されている場合は、耐震リフォームの実績を確認しましょう。
耐震改修を行なう際の注意点、自分でできる簡易診断テストは下記で詳しくご紹介します。
ポイント7.完了検査済証が無い時は?書類をチェックして見抜く
書類の有無だけではなく、現況をシッカリ見極めることがポイント。
建築確認申請書は新築の時に作成する書類で、間取りや面積などのデータが記されています。また完了検査済証はその申請に沿って建てられたことを証明する書類です。
この完了検査済証は無いことも多いのですが、問題はその理由です。古い住宅では単純に取らなかったということもありますが、中には違反建築を行ったために完了検査済証が取れなかったというケースがあります。
違反で多いのは建ぺい率や容積率の違反ですが、違反建築の確認申請は通りませんし、銀行融資も受けられませんので、リノベーション向き中古物件とは言えません。
また途中で法令が変わって法令違反になってしまっているケースは既存不適格と呼び、違反建築物ではないのですが、申請が必要な増築・大規模リフォームを行う場合は、法令に適合させる必要がありますので注意しましょう。(一部緩和規定あり)
まずは書類と現況が合っているかを確認し、違う場合や書類が無い場合は建築士に見てもらうようにしましょう。
住みながらのDIYリフォームで、理想の我が家を目指すのもあり
住みながら理想の住まいを目指してDIYリフォームするのも楽しい。
また中古購入に際しては、購入資金とリフォーム資金と一体になったローン商品もありますので、上手に利用するともいいでしょう。
住んでみて初めて分かることもありますし、住みながら少しずつ手を入れるのも楽しいものです。中古マンション購入+リノベーションの注意点は下記でまとめていますので、マンションの購入を考えている方は、下記をご覧下さい。
比較的新しい一戸建てを購入した筈なのに10年後に1000万円の差がついた!など、中古購入リフォーム・リノベーションでの失敗事例は下記でご紹介しています。
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