桑名の実業家・二代目諸戸清六の邸宅「六華苑(ろっかえん)」
六華苑の洋館は四階建てです
六華苑は、実業家二代目諸戸清六の邸宅として明治44年(1911年)に着工し、大正2年(1913年)に完成しました。鹿鳴館の設計で有名なイギリス人建築家ジョサイア・コンドル設計による4層の塔屋をもつ木造2階建て天然スレート葺きの洋館、和館や蔵、池泉回遊式庭園などがあります。総面積は18,000平方メートル余に及んでいます。
諸戸家が桑名市内に別邸を建て、そちらに生活の場所を移したことから、戦中戦後には諸戸家の関連会社の事務所として使用されていました。戦争の被害が少なかったことも幸いし、また、高台にあったことから伊勢湾台風での大きな被害も免れています。なお、戦争当時の防空壕が庭園に残されていて、一般公開される前はタヌキの親子が住んでいたそうです。
平成2年(1990年)に建物は桑名市に寄贈されました。翌年には敷地も市に売却され、市指定文化財となります。平成5年(1993年)から一般に公開されています。平成9年(1997年)に国の重要文化財に指定され、平成13年(2001年)庭園が国の名勝に指定されました。
洋館は遊び心が満載のデザイン
洋館には暖炉があります。
洋館は、全体的にシンプルなデザインです。木造2階建てでヴィクトリア朝住宅の様式を基調としています。外観の特徴として東北の隅に立つ4階建の塔屋や、庭園に面して多角形に張り出した1階のベランダと2階のサンルームがあげられます。
当時の部屋を再現しています。
コンドルが描いた当初の図面では塔屋は3階建でしたが、「揖斐川を見渡せるように」との清六の意向で4階建てに変更されました。伊勢湾台風で流されてしまいましたが、堤防沿いに植えた桜並木が4階から美しく見えたそうです。現在は周辺の環境の変化もあり、塔屋3・4階は非公開となっています。
日当りの良い二階のベランダです。
内部のインテリアについては1階は家具類含めて洋風ですが、2階は和洋折衷になっています。襖や押入れの中に収納棚を作り付けるなどの工夫もしてあります。また、トイレは大正時代から水洗トイレです。日本製の陶器の水洗便器にはTOTOの表示がありますよ。調べてみると、TOTOは1917年(大正6年)に創立されていました。水洗便器の製造を始めて約100年ですね。
水洗トイレです。
暖炉含めて細かい細工があちこちにありました。じっくり探してみると楽しいですよ。ハートのマークが暖炉や階段の手すりなどにありました。新婚夫婦用に建築された建物なので、イギリス風のハートが使われているようです。
ハートのマーク
電気のスイッチには菊の花がデザインされていました。ちょっとした遊び心が随所にみられて楽しい建物ですね。
電器のスイッチも菊の模様です。
次ページは和館のご紹介です。