人は誰でも何かを思い込むものですが、それに気付くことはなかなか難しいことかもしれません
例えば、自分は周りの人よりもすごくできる人間だと思い込んでしまう。あるいは、職場の同僚のことを全く変な人だと思い込む、といった場合もあるかもしれません。
こうした思い込みは時に何かの失敗につながることがあります。しかし、何かのチャンスにつながる可能性も秘めています。
今回は思い込みのメリット・デメリットを精神医学的に詳しく解説します。
思い込みが強まると、なかなかそれを訂正できない!?
何かを思い込むということは、事実を見るということではなく、主観的にそれを認識するということです。もし間違った情報が脳にインプットされて、それに基づいて行動をしてしまえば、何か大きな間違いが起きてしまう可能性もあるでしょう。例えば、天気は晴れの予報なのに雷雨と思い込み、長靴・雨具のフル装備で家のドアを開けると、頭上に抜けるような青空が広がっていたら、ちょっとうろたえるかもしれません。
この程度ならばまだ生活に問題はないでしょうが、もし思い込みが人生を左右するような場面で起きたらどうでしょうか。結婚相手を選んだ理由に何か強い思い込みがあった場合、後で気付いた時は大変かもしれません。
その際、精神医学的に問題になりやすいのは、間違いに気付いた時の対処です。特に対処が不合理な場合は要注意! 場合によっては合理的な証拠がいくつもあっても、その思い込みを全く訂正できない場合もあるかもしれません。
思い込みは心の病気が原因である可能性も!
思い込みは、時に心の病気の症状として現われる可能性もあります。特にその内容に不合理性が強まっている場合は要注意。場合によっては妄想のレベルになっている可能性もあるかもしれません。妄想は思考内容に問題がある代表的な精神症状です。妄想の内容自体は幅広く、他人から見れば荒唐無稽な場合もあれば、日常的な猜疑心や疑念が不合理化した場合もあります。
たとえば、「相手が浮気をしているにちがいない」と思い込んだ場合、通常は何らかの根拠があるでしょうが、場合によっては特に根拠がなくても、こうした疑念が強まる場合もあります。
元々のパーソナリティに猜疑心が強い傾向がある場合、日常のストレスが強くなると、こうした傾向はより顕著になる可能性があります。また、場合によっては、脳内の機能に何らかの不調が生じた結果、猜疑心が病的になる可能性もあります。関連する心の病気としては妄想性障害などがあります。
思考内容に何か不合理性があれば、身近な人はそれに気付きやすいものですが、本人自身はなかなか気付かないものです。実際、妄想性障害など精神科受診が望ましい場合でも、実際に受診される事はかなり少なくなっています。
辛い時を乗り越えるためには思い込むことも必要!?
思い込みは悪い結果を招くだけとは限りません。このストレス社会を生き抜くため、時にそれが必要になることもあります。人によっては朝起きてから、夜、床につくまで、いろいろ嫌な事が起きたかもしれません。そして、自分が直面している状況に適切な解決策が見いだせない場合もあるでしょう。辛い時を乗り越えるためには普段以上の活力が必要でしょう。その妨げとなりやすいネガティブな観念は、そんな時に限って頭に浮かびやすいものです。そうした観念を、「自分なら必ずできる」といった思い込みで打ち消していく、一種の心の防衛機制(defense mechanism)も事態を乗り越えるためには役に立つかもしれません。
また、「必ず成果を出す!」といった信念は実際に潜在能力を引き出す面もあるかと思います。実際、薬用成分がない物質を治療薬だと思い込み、服用していくと実際に治療効果が現われる「プラセボ効果」は、これに類した現象でしょう。
このように思い込みにはポジティブな面も存在し、人が人生を上手くやっていく上で重要な道具にもなり得ます。しかし、やはり不合理な思い込みは困った事態をまねく可能性が大きいです。もし、他人からそれを指摘された際は聞き流さないで一応しっかり受けとめておきましょう!