グランドツアー時代、英国人だらけだった町リヴォルノ
ロンドンのコヴェントガーデンのモデルになったリヴォルノの大広場「ピアッツァ・グランデ」 (c)Ewa Kawamura
リヴォルノ(Livorno)はトスカーナを代表する港町。16世紀ルネッサンス時代、フィレンツェの建築家ブオンタレンティ(1531-1608)による都市計画でデザインされ、さらにメディチ家の免税特区港として、19世紀初頭まで海洋交易で非常に栄えていました。そのため、イギリス、オランダ、ギリシャ、ユダヤ、アルメニアなど各国の外国人コミュニティが花開き、彼らのための専用の教会と墓地もできました。
とりわけ18世紀のグランドツアー全盛期は、英国人の貿易商と旅行者の多い町で、イギリスにイタリア風建築を持ち込んだ建築家イニゴ・ジョーンズ(1573-1652)は、リヴォルノの大広場(Piazza Grande)をモデルに、ロンドンのコヴェントガーデンを設計したほど。リヴォルノにある英国人墓地は、今はすっかり荒れ果ててしまっているもの、結核療養のためリヴォルノに移住・永眠した英国人作家トバイアス・スモレット(1721-1771)の墓もあり、往時の繁栄が偲べます。
有名な芸術家たちを輩出したリヴォルノ
リヴォルノの海岸通りにある「マスカーニのテラス」 (c)Ewa Kawamura
リヴォルノの海岸通りで最も美しい眺望のある「マスカーニのテラス(Terrazza Mascagni)」は、オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』で一躍有名になった作曲家ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)に因んだもの。そんなマスカーニの生家は、カヴァレット広場にありましたが解体、跡地に建った近代的な集合住宅に記念碑がかけられています。画家では、20世紀初頭、パリ・モンパルナスで活躍したアメデオ・モディリアーニ(1884-1920)もリヴォルノの生まれです。
1866年にファットーリが描いたリヴォルノの砂浜(部分)
リヴォルノで泊まるなら、「グランド・ホテル・パラッツォ」
リヴォルノを代表するグランド・ホテル・パラッツォ (c)Ewa Kawamura
そんなリヴォルノの町で泊まってみるべき高級ホテルは、「グランド・ホテル・パラッツォ」です。「マスカーニのテラス」の前にあり、NHホテルチェーンの加盟店で、格付けは5つ星ですが、内容も価格も控え目なので、気軽に泊まれます。創業は1884年。当初はパラス・ホテルという屋号でしたが、ファシズム期に外国語名が禁じられたので、イタリア語の「パラッツォ(パラス)」に変名されて今日に至ります。建物は壮麗なネオ・ルネッサンス様式で、トスカーナ建築でよくみられる塔屋も二つ付いています。
近隣の海浜リゾート地ヴィアレッジョの人気の影に隠れてしまい、1997年に経営難で休業、廃屋化していたのですが、2008年、ホテルを大改装してリニューアルオープンしました。ロビーには、リヴォルノ出身の現代画家マルク・サルデッリの描く、ベルエポック時代のホテルの風景画が架けられています。屋上にはプールと眺めの良いレストラン、1階にももう一つレストランがあります。客室は、ネオ・リージェンシー・スタイルで、シンプルですが、青や白を基調とし海浜らしさも感じさせてくれます。
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■NH Livorno Grand Hotel Palazzo(NH リヴォルノ・グランド・ホテル・パラッツォ)
住所:Viale Italia, 195, 57127 Livorno LI
TEL:+39 0586 260836
料金:160ユーロ~