不妊症

リプロダクションクリニック大阪 訪問記(3ページ目)

今回は、2013年9月に大阪駅前のグランフロント大阪にオープンした「リプロダクションクリニック大阪」に取材をさせて頂きました。このクリニックは泌尿器科医が男性不妊を担当し、婦人科医が女性不妊を担当し、両方から同時にアプローチできる日本初のクリニックとして、注目を浴びています。既に関西でも有数の不妊専門クリニックに成長しました。

執筆者:池上 文尋

特区認定について教えてください

大阪発で世界に発信できるような企業を誘致すべく、グランフロント大阪は関西イノベーション国際戦略総合特区となりました。ここをお借りするにあたり、三菱地所と面接があったのですが、私のプレゼンテーションを聞いて、「ぜひこれは特区申請をしてください」と言っていただきました。

ということで我々は一号案件でした。特区認定で大阪府、大阪市のお墨付きを頂き、スターティングスタッフの意気も非常に上がりました。私の「日本を変えたいんや」という夢物語に対しても、「日本経済新聞にも載るくらいやから、あながちいけるんと違うか」、と雰囲気が変わったように思います。この特区のおかげでもメディア取材が増えていき、その関係でも男性不妊助成金制度ができるよいきっかけにもなりました。
リプロダクション大阪

待合室の様子


三重県知事鈴木英敬氏とは神戸の大学浪人時代(駿台予備学校)からの旧知の仲であり、選挙の際にもメールなどでやりとりをしていました。日本の医療のどこがおかしいか、痒い所に手が届く政策についてなどメールでやり取りをしていました。医療政策のことが中心でしたが、地方から日本を変えたいという思いは非常に強いものがあり、行動力のある同級生を頼もしく思っていました。特に地方自治体にとっては、少子化対策は喫近の課題であり、何か政策としてできることはないかと模索しておられました。

そして、不妊治療の助成をしている自治体として、一度話を聞いてみたいとの依頼があり、県庁の職員向けに講演をさせて頂きました。日本の女性だけが治療を受けている現況、男性不妊には助成がないこと、日本の男性の意識を変えたいと、その後も熱く語りあい、県庁職員も数多く巻き込んで頑張ってくれました。意見交換も何度となく行い、そういった経緯で2014年4月から全国にさきがけて、三重県が男性不妊、無精子症における手術に対しての助成金をスタートすることになりました。

この助成金が少子化対策にダイレクトに直結するとは思っていませんが、男性の意識が変わり、家庭への参画、働く女性への理解が変わっていけば、と期待しています。知事にクリニック視察もして頂き、三重県の男性不妊のドクターを育成することも開始し、あいかわらず意見交換をしています。
リプロダクション大阪

待合室の様子(2)


そして、三重からスタートして、現在では20ほどの都道府県自治体で男性不妊治療を助成しようという流れになっています。これは同級生二人が始めた小さなことが日本の社会を大きく変えるうねりとなってきているうれしいムーブメントです。こういったことは医師として患者を診るだけでなく、いい方向に社会を変えていくという自分自身のモチベーションにもつながっています。

そして、今は国際的な交流も積極的に行っています。先日はJICAの関係で、モンゴルからの視察と研修を受け入れました。他にも当院の見学にはスウェーデン、タイ、アメリカと様々なところから来られましたが、すべて当院主催セミナーで自国の生殖医療を講演していただき、全スタッフ参加でおもてなし、そして意見交換をさせて頂きました。

最後に言いたいことがあればお願いします

はい、自分でいうのもなんですが、私は究極の「ぼんぼん」だと思っています。医者の息子として、子供のころから何不自由なく育ってきました。その私が12歳で親元を離れ、寮生活を機に仲間と一緒に自分で生きていく術を身につけてきたと思っています(もちろんそれでも守られていたとは思いますが)。大学病院を辞める時にも、後ろ盾があるのだからそんなマネができるのだと面と向かって言われもしました。このクリニックも医療法人の力で建てているし、運営もすべてサポートしてもらっている。経済的なことを考えなくていいから、そんな正論が吐けるのだと言われもします。
リプロダクション大阪

スタッフ紹介ボード


生まれ落ちた環境や置かれた環境は自分で変えることはできないし、当然享受してきた部分は大きいと感じていますが、それをどう生かせるかは自分自身の能力とやる気と矜持にかかっていると思います。どうせならそのいい環境を利用して自分の信ずる道を切り開いていけば、それが周りの人間にとってもプラスになる可能性がある。

やりたいことが近い人間が集まって、一緒にお互いの幹をどんどん太らせる。お互いにとってモチベーションを高めあえるようなチームでありたいと切に願っています。そして社会に貢献できる機会や、自分の体力・気力が十分な時期はこの短い人生の中でそうそうないわけですので、やれるだけ、そしてできるうちに頑張りたい。

最先端の医療を実施し、その知見を世界に発信するのが我々のやりたいことと言えます。

当院のスタッフは去年のアメリカ医学会(ASRM)などの国際学会でも口演で発表しています。開業してたった一年のクリニックが自分たちのデータだけで発表しました。今後も国際学会で当院のスタッフには、医師だけではなく、コメディカルにもどんどん発表してもらう予定です。

基本方針はとにかく透明性をもって、きちんとした医療を行っていく。これが今の我々のやるべきことと考えています。

スタッフも増えて、ドクターが非常勤合わせて12名、胚培養士が11名。全スタッフは50名を超えました。だんだんと大所帯になってきました。当院は一年365日中361日OPENしています。スタッフ全員でチームとして患者さんの治療に貢献できればと思っています。

それから今、様々な大学とコラボレーションして臨床の場で得られる情報を元に共同研究を進めています。民間のクリニックでも大学と肩を並べて様々な研究が出来ることもどんどんと見せて発信していければと思っています。

まずは「率先垂範」。現在法人内で最も働いている自信はありますが、リーダーが理念をしっかりともって、すべてのことに真剣に、ステップ軽く、面倒くさがらずに取り組む。多くの信頼できるスタッフとともに、患者さんの治療はもとより、自分たち自身も楽しみながら前進していければ、と考えながら日々運営をしています。「建設は忍耐、破壊は一瞬」、これを肝に銘じて今後も毎日取り組んでいきたいと思います。

まとめ

石川先生と初めてお会いしたのは、岡山二人クリニックに視察に伺った時でした。ちょうど男性不妊手術に来られていて、その時にお目にかかりました。

その時、不妊治療に対する熱い思いが体一杯に詰まっている先生だと感じました。そして、まもなく開業のお話があり、OPENして1年半という年月が経ったとは思えないくらいです。

不妊治療に対する熱い思いを具現化したのが今のリプロダクションクリニック大阪であり、それを今回初めてインタビュー出来たのは、非常に有意義な時間でした。

このクリニックはまだまだこれから成長し、多くの患者さんを救う場になると思います。私としては定時観測的に取材に伺いたいと思いました。きっと来年伺ったらまた進歩しているのだろうなと容易に予測がつきます。

石川先生、お忙しい中、取材に応じて頂き、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。


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