謝珠栄undefined兵庫県出身。山田卓氏にダンスを師事し、71年に宝塚歌劇団に入団。75年退団後、NY留学。帰国後は振付家としてミュージカル、演劇、映画、TVで活躍し、90年に本格的に演出家へ転向。芸術選奨文部大臣新人賞、芸術祭優秀賞、菊田一夫演劇賞、紀伊国屋演劇賞個人賞等、受賞多数。(C)Marino Matsushima

謝珠栄 兵庫県出身。山田卓氏にダンスを師事し、71年に宝塚歌劇団に入団。75年退団後、NY留学。帰国後は振付家としてミュージカル、演劇、映画、TVで活躍し、90年に本格的に演出家へ転向。芸術選奨文部大臣新人賞、芸術祭優秀賞、菊田一夫演劇賞、紀伊国屋演劇賞個人賞等、受賞多数。(C)Marino Matsushima

宝塚の男役として活躍後、NY留学を経て、振付家としてデビューした謝珠栄さん。数多くの劇団、プロデュース公演に参加。後に演出家へ転向し、自身のカンパニー【TSミュージカルファンデーション】では様々なオリジナル・ミュージカルを発信しています。その熱く、“本気!”の舞台づくりで役者たちからは全幅の信頼を置かれ、今拓哉さんの「TSから声がかかれば出ると決めています」、岸祐二さんの「TSの人と言われる役者でありたい」、東山義久さんの「(謝さんは)限界の一つ上を求めてくる演出家」など、謝さんを慕う声は後を絶ちません。

その彼女が現在手掛けているのが、10年に初演した『GARANTIDO』。劇場で合宿をしながら稽古をしているある劇団のドラマと、彼らが演じるブラジル移民の物語が交互に展開しながら、人生の意味が問われてゆく作品です。今回はD-BOYSの舞台シリーズ“Dステ”との提携という形で、柳下大さんはじめ清新なキャストが骨太のドラマに挑戦。なぜ、この作品が選ばれたのでしょうか。

D-BOYSが体当たりで挑戦する、“一人一人が主人公”の骨太ドラマ

――そもそも本作の“ブラジル移民”というアイディアは、どこから生まれたのでしょうか?
『GARANTIDO』前回公演より

『GARANTIDO』前回公演より

「私は世界文化や音楽を使ったミュージカルづくりをしたいと常々思っていて、ブラジルにはボサノバという独特な音楽もあるし、カポエイラも取り入れたら面白い舞台ができるのでは、と思ってブラジルの素材をいろいろ探していました。そんな中でブラジルのある小説と出会い、現代の日本の劇団の話を組み合わせた脚本を作ったのですが、当時の出演者には年齢的に合わない部分がありました。物語世界と日本の劇団の話を組み合わせるという構成自体はとても面白かったので、ではブラジルのストーリー部分を変えてみようということで、ブラジル一世の人達のお話を組み合わせることになったんです」

――今回、台本は多少改訂されているようですが、出演者に合わせてということでしょうか?
「最初に出演者に合わせて作る部分もあるので、役者さんが変わった場合は設定やキャラクターを少しづつ変えています。それがオリジナル・ミュージカルのいいところなんですよね。今回は実際に日系三世であるマルシアさんも出演されるので、作品の中に日系二世や三世の訴えも少し強烈に入れたいな、という思いもありました」

――今回はD-BOYSの方が大挙出演される舞台ですね。

「最近はミュージカルの公演が非常に多くなってきていますが、その中で、歌の上手さだけで役者を判断する傾向も見られます。でも、私はこれまで仕事をしてきた中で、声の質というより、演技力のある人の方が説得力があるなと思ったことが何回もありました。もちろんレッスンは必要ですが、まずは“歌いたい”“踊りたい”という(純粋な)気持ちを持っている人に、ミュージカルにも挑戦していってほしいと思っています。

そんな中、ワタナベエンターテインメントの渡辺ミキさんが育てていらっしゃるD-BOYSを知り、今回ご一緒することになりました。役者は“声”を持っていることが一番大切で、どの演出家も“声”を持つ役者を欲しがりますが、そういう意味でD-BOYSのメンバーは舞台をたくさんやってきて“声”を持っていますから、今、稽古を見ていると、すごくいい線いっているんですよ。今はまだソロになると緊張でうまくいかないところもあるけど、やっぱり“声”を持っている人たちですね。お芝居の人は、音程を気にするよりも、本当に気持ちから入っていくから、音の“圧力”がいい雰囲気で出てくるんですよ。コーラスも“合唱”という感じよりも“芝居”として発されるので、とても新鮮に聞こえてくることがある。そういうの、私は好きですね」

――柳下大さんはTSの前作『familia』から連続してのご出演ですね。
『familia~4月25日誕生の日』写真提供:TSミュージカルファンデーション

『familia~4月25日誕生の日』写真提供:TSミュージカルファンデーション

「今回は、彼の演じる役の魂がこの舞台のベースになっている部分があって、大事な役ではありますが、彼だけが主演という形はとっていません。登場人物それぞれの生き方が見えてくること、そして劇団という集団の形もメインになっています」

――ご自身のバックグラウンドともリンクする点で、特にマルシアさんは思い入れが強いのではないでしょうか。

「それはものすごいですよ。この作品を通して、移民一世の苦労がより分って、お母さんやおばあちゃんをすごく尊敬すると話していますね。D-BOYSは彼女と同じ事務所の後輩でもあり、彼女のその思いを受け、よりきちんとやらなくてはという思いが強いようです」

――本作は二つの世界を行き来しながら“自分は人生で何を残すのか”を問うていますが、若いキャストはどう受け止めていらっしゃるでしょうか。
『GARANTIDO』

『GARANTIDO』

「人生経験を踏まないとわからない部分もあると思うので、勉強しなさいと言っています。その時代のこと、当時の人たちの痛みを知ることから、想像を広げてゆく。“自分は王様になったことがないから王様役は演じられない”ではなく、それを想像して、もし自分が王様だったらどうするか…ということを経験できるのが、役者の面白いところ。人の心を理解するのは、人間の成長としてもプラスではないかと思います。

でも、D-BOYSのように“なんでもある”環境で育ってきた彼らにとって、“食べたいものが食べられない”“連絡をとるすべがない”というのはどういうことかを理解するのは、なかなか難しいようですね。今はわからなくても、想像してゆくことが彼らの今後の人生にとっていいのではないかなと思っています」

*次頁からは謝さんの「これまで」を語っていただきました。ファッションデザイナーになっていたかもしれない謝さんは、ひょんなことから振付の道へ…。