がちがちのニッチさに、強烈なジャズを感じる作品

今回ご紹介するのは、話題の映画「セッション」(原題 WHIPLASH)。ジャズを扱った映画の中で、近年ここまで話題になった映画はないでしょう。アカデミー賞三部門受賞を筆頭に、数々の賞を受賞、世界中でヒットを続けているジャズ映画です。
(C) 2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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そしてこの「セッション」は、日本ではWEB上で、封切前からジャズ界、映画界を巻き込んだ喧々諤々のやり取りに至った問題作でもあります。

映画に対する賛否は観る人により分かれるところですが、その上映前の熱いやり取りにより、結果映画興行としては大成功。封切られるや大ヒットを記録しています。

私も先日、土、日の両日観に行きましたが、どちらの日も朝から晩までソールドアウトの満席状態。近年では、珍しいくらいの話題性と、熱気にあふれる映画と言えます。

では、この「セッション」の何が、ここまで話題性を広めたのでしょうか。それは、やはり作品として突き抜けた魅力があったからの一言。二時間もの間、観客をひきつける力は、並みの作品ではないのは確かなところ。

こと映画と言うジャンルで考えれば、音楽映画という範疇だけではくくれないスリリングな展開に、どんどん引き込まれていく秀逸な内容です。ジャズという狭い音楽世界での、大学のビッグバンドの世界という、より狭い範囲での戦いと勝利を描いているのに、観る者を一瞬たりとも飽きさせません。

先の見えない可能性とのびしろをもつ19歳のドラマーが、超一流のイメージと概念、そして自身の音楽に対する固定観念を持つ鬼教授と真剣勝負を繰りひろげます。ドラマーの演奏と言う実在する音と、教授の頭の中にしかない教授の音。この二つの一向に交わらない実と虚が、対立を平行線に保ったまま、ぎりぎりと音が聞こえるほどの対人緊張感を高めていきます。

この教授が再三強調するのが、「私のバンド」の「私の音」、「私の速度」、「私のチューニング」といった自分自身の強制的な世界観。そして、そこに相容れないものは、妥協なく順応を強います。
(C) 2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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もしミュージシャンが教授の思う通りになったとしても、それは教授のバンド内での小さな勝利でしかない現実。このがちがちのニッチさが、強烈にジャズを感じさせ、この映画の迫真性を何段階も押し上げ、成功に導いてます。

この映画の中で、取り上げられたジャズが、はたして本当にすごいジャズなのだろうか? そういった疑問は、妥当ではあります。でも、ジャズはジャンルにおいてこれほど多岐にわたるものもありません。主人公と教授の上り詰めていった先はそもそも非常に狭い袋小路のような場所です。もしかしたら、そこに場所やスペースは存在しないのかもしれません。

それでも、映画の中で燃えた二人の物語が、手に汗握る痛快な物だったことは、映画としての評価で明らかです。そしてその対価としての映画祭での受賞と思えば、音楽、映画と分けて考えずに、「セッション」という作品の結晶として楽しむことができるものと思います。


「セッション」も参考にしたと思われるドラム・ソロを収録した作品

この映画の中で、キーマンとして出てくるドラマーがバディ・リッチ。主人公が最も憧れるジャズメンでもあり、鬼教師が模範ともしているドラムの神様です。実際バディ・リッチは、30年代から様々なバンドで活躍し、60年代から87年の亡くなる直前まで自身のビッグバンドを率いたレジェンドです。
Swingin New Big Band

Swingin New Big Band

代表作は沢山ありますが、この「セッション」も参考にしたと思われるドラム・ソロをフィーチャーした「ウェスト・サイド・ストーリー・メドレー」を収録する「スウィンギン・ニュー・ビッグ・バンド」がお勧め。すっきりまとめたドラム・ソロに、「セッション」の主人公の姿が重なります。(Amazon

今回の話題作「セッション」のご紹介はいかがでしたか?これからも、ジャズ関連の話題作をどんどん取り上げていきます。では、またお会いしましょう!


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