バレエと落語を舞台上でどのようにコラボレートさせるのでしょう。
安達>花緑さんの『おさよ』が完成されたひとつの作品になっているので、今回は落語とバレエを入れ込んだ形にしています。最初はバレエと落語をきっちり分けた方がいいのではと考えましたが、それより『おさよ』がつくられたときのイメージをバレエでおみせするのが一番『ジゼル』も『おさよ』も壊さない形になるのではということで、融合させるようにしました。花緑さんもとても歩み寄ってくださって、花緑さんが出てくるときの音楽も出囃子ではなく『ジゼル』の曲だったり、アルブレヒトが出て来るときに一度花緑さんと目を合わせてお互い認識するような場面をつくっています。そうやって融合していくことで、お客さまに何か感じていただけるのではないかと期待しています。
最初に『おさよ』を聴いてもらい、キーになるところはバレエを踊ってまた『おさよ』にスッと入っていけるようにするなど、流れを大切につくっ
ています。あとバレエと落語それぞれに重要なシーンというのがあって、そこは活かすようにしました。なかでも狂乱の場面というのはジゼル役者になったバレリーナにとって大きな見せ場。落語のおさよはすっと死んでいくけれど、バレエは狂っていく様をかなりの時間費やしています。また二幕にあたる『おさよ』の幽霊の場面はすごく面白いし、やっぱり白眉だと思うので、集中して聴かせるようにしています。
クラシックバレエの特徴として、白い衣裳で沢山のバレリーナたちが群舞 を踊るというのが他のダンスにない魅力でもあり、そこをおみせするとことで幽霊の場面としっくり来る。花緑さんもあそこは長くやりましょうと言ってくださって、ウィリのシーンにしっかり時間を割くようにしました。
ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥのシーンは割愛していますが、最後のお別れのシーンをきちんとやることで、『おさよ』が昇天していくという花緑さんのお話と重なる形にしています。
花緑>おさよだったら本当は最後に手を合わせるんでしょうけど、どこか僕の中でも『ジゼル』に引っぱられていて、それができないんです。あそこで手を合わせると何か滑稽な感じがして。だから本来“成仏してください”と手を合わせるところを、花を胸に押しあててみたり。僕の中でも『ジゼル』のイメージがあって、完全に和になってないんです。もしかするとそれは、よりイメージしやすい形で、ひとつの舞台にしていただいているということなのかもしれません。