社会保険/社会保険の基礎知識

平成27年4月から変更!在職中の年金の仕組み(3ページ目)

60歳台の従業員にとって給与と年金は収入の源。在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)は、受給している老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額により年金額が調整(支給停止)されます。今般この年金額を調整する際の基準額が変更になりました。総務人事担当の皆様は、対象者から年金相談を受けることも多いことでしょう。本記事で改正内容と調整(支給停止)の仕組みを理解しておきましょう。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


「高年齢雇用継続給付」を受けると
更に年金の一部が調整(支給停止)に!

対象者の収入は、給与+年金+高年齢雇用継続給付の3本立てがポイント!

対象者の収入は、給与+年金+高年齢雇用継続給付の3本立てがポイント!

いかがでしょうか。60歳台前半と後半以降では全く調整の仕組みが違うことが分かりましたね。これだけでも理解するのに一苦労。でも実は企業実務では、もうひとつ押さえておかなければならない調整(支給停止)があります。それは雇用保険からの「高年齢雇用継続給付(※)」を受けられる場合です。

その場合は前述の60歳から64歳まで(60歳台前半)の在職老齢年金の調整だけでなく、さらに年金の一部が支給停止されるのです。なお調整(支給停止)される期間は60歳台前半だけになります。支給停止される年金額は最高で、標準報酬月額(賃金)6%です。

(※)高年齢継続給付とは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳から65歳になるまでの加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満になった者を対象に、最高で賃金額の15%に当たる額が雇用保険から支払われるものです。

1.具体的計算例
【高年齢雇用継続給付と在職老齢年金(60歳以上65歳未満)
日本年金機構リーフレットの事例】
  • 基本月額10万円(老齢厚生年金額120万円÷12)
  • 賃金が60歳を境に、月額35万円から20万円(総報酬月額相当額)に減額 
上記の対象者の年金は、前述の60歳から64歳まで(60歳台前半)の在職老齢年金のしくみ、2.調整のための計算式(2)の計算式を使って計算します。

○60歳から64歳まで(60歳台前半)の在職老齢年金による支給停止額 
20万円+10万円-28万円÷2=1万円(支給停止A)

○高年齢雇用継続給付を受けることによる支給停止額
20万円(標準報酬月額)×6%=1.2万円(支給停止B)

○高年齢雇用継続給付
20万円(賃金)×15%=3万円
在職老齢年金の支給停止の仕組みundefined日本年金機構リーフレットからの抜粋

在職老齢年金の支給停止の仕組み 日本年金機構リーフレットからの抜粋

この対象者は、老齢厚生年金が月額2.2万円支給停止となり、賃金20万円と老齢厚生年金7.8万円、高年齢雇用継続給付3万円で、月30.8万円が合計収入となります。

まとめ

今回は在職中の老齢厚生年金の支給調整の仕組みのお話でした。年金制度は大変複雑で難解を極めますが実務担当者としては法改正動向を含め普段から知識を深めておきたいものです。70歳未満の従業員は年金を受けていても適用除外の要件に当たらない限り、厚生年金に加入しなければなりません。60歳台以降の賃金設計は年金調整(支給停止)の仕組みの理解なくして成り立たないのです。

<参考資料>
在職老齢年金の支給停止基準額が平成27年4月1日より変更になりました
(日本年金機構)
在職老齢年金の支給停止の仕組み(日本年金機構リーフレット)
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