企業経営のノウハウ/社内報の活用法

パナソニック社内報復刊に見る、社内メディアの課題(2ページ目)

社内報コンクールの受賞常連企業パナソニック。優秀な社内報が有名な企業です。社内の方針で紙の社内報を2012年に廃刊し、イントラネットでの配信に一本化しましたが、2015年1月に紙の社内報を復刊しました。なかなかWeb社内報は読んでもらえないそうです。一方で、海外も含めたグループ報が増えています。グループという大きなネタを扱うので、こちらもなかなか読んでもらえないとか。社内メディアの今日的課題を考えます。

豊田 健一

執筆者:豊田 健一

総務人事・社内コミュニケーションガイド

活字離れの若年層を繋ぎとめる、読み応えのない社内報へ

社内報を読んでいる様子

どうしたら活字離れの若年層に社内報を読んでもらうには…

一方、印刷された社内報にも課題はあります。読んでほしい若年層が、 活字離れの影響により、なかなか社内報を読んでくれないという課題です。そこで、編集部としては、文字を少なくして写真や図版を多く取り入れ、「読む」社内報から、「見る」社内報へと工夫しています。その結果、読み応えがなくなり、社内報を熱心に読んでいた読者が離れてしまうという懸念があります。

また、本当に理解して欲しいコンテンツ、伝えたいコンテンツはストーリーを通じて伝えないと、心底伝わることはありません。ストーリーテリングを社内報でも活用するとなると、どうしても文字は多くなるはずです。文字が多いと読まない読者。文字を費やさないと伝わらない大事なメッセージ。この矛盾に多くの社内報担当者は悩んでいるはずです。

一つの考えとして、CSR報告書のように、社内報にはサマリーを掲載し、フルコンテンツをWeb社内報に掲載。社内報を「見て」、さらに読みたい人は、Web社内報へ誘導。ここにストーリーで展開していきます。画面上で長文を読むのはつらいので、出力して読んでもらうことを前提に、出力された時のレイアウトを整えるという工夫を施します。自ら情報を取りに行くPull型メディアとしてWeb社内報を使ってもらうのです。

前提として、Web社内報は全従業員に読んでもらうという考えを捨て、問題意識のある従業員のみをターゲットと考え、読みたい人が読みにいく、そんなメディアにしてしまいます。その根底としては、正規分布「2:6:2」の考えがあります。問題意識のある上位2割の従業員に読んでもらい、その行動が変わることにより、中位6割に影響を与えるという考えです。そして、その6割から徐々に上位2割に移行してもらい、組織を徐々に進化させていくというものです。

グループ報、海外版社内報の矛盾。読ませる「接点」の減少

グループ報、海外版社内報の発行が増えています。従来、中核会社の社内報であったもので、グループを意識して企画していたものを、明確に「グループ報」として銘打ってリニュアルされたケースもあるでしょう。グループ報の課題は、取り扱うネタが、グループという大きなテーマとなることと、日々の業務に直接関係の無い各グループ会社の紹介となることにより、従業員の社内報への関心が薄まってしまうことです。

関心が薄まる要因は、社内報に掲載されるコンテンツの「接点」の少なさにあります。人は接点があるから、あるいは、接点(興味関心)を求めて読むものです。知人が登場していれば読みますし、興味があれば読みにいきます。掲載されるコンテンツがグループ全体に広がると、なかなか接点が見えないものです。

社内報の作成側も、グループ報となると、グループ全体に係わる「大きな」ネタを取り上げざるを得ず、リスク管理上(読者から突っ込まれないために)、経営層を登場させたがります。結果、現場感が失われ、従業員にとって身近なものではなくなってしまうのです。そして、社内報離れが起きてしまうということなります。

同じ流れが海外版社内報にも当てはまります。海外現地従業員にも読んでもらいたいため、海外ネタを数多く掲載することになります。その結果、国内従業員の関心が薄れていってしまいます。また、海外従業員に読んでもらうために、日英併記にしてしまうと、従来のページ数と同じであれば、単純に掲載できるコンテンツの量は半分となります。その半分のコンテンツ量における国内ネタは、従来の中核会社単独の社内報の時と比較して、はるかに少なくなってしまいます。先に記した「接点」が極端に少なくなってしまうのです。
つまり、グループ報、海外版社内報と、その目的に忠実になればなるほど、逆に国内従業員というメイン読者を逃してしまうという矛盾が生じてしまうのです。

グループビジョンや経営方針。これは国内外問わず全従業員に係わり、伝えるべきコンテンツです。それ以外に掲載するコンテンツは、各地域に係わるコンテンツを中心に選択し、同一誌名メディアであっても、地域によってコンテンツの異なるものとし、各地域従業員の「接点」を増やして、まずは手に取ってもらう社内報を目指すべきではないでしょうか。

時代とともに変化する社内メディア。ツールの進化に踊ることなく、経営体制とのリンクは意識しつつも、「人はどうしたら読むのか」ということは常に考えて企画、運営したいものです。

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