社会ニュース/よくわかる時事問題

私たちの個人情報は果たして守られるのだろうか?(2ページ目)

政府は3月10日、個人情報保護法とマイナンバー法の改正案を閣議決定した。個人情報保護法では、企業が個人情報を利用するためのルールの厳格化と不正への罰則の強化、マイナンバー制度では脱税の防止を目的に2018年から預金口座への適用を可能にするものだ。これらの改正は国民にどのような影響を与えるのだろうか。

松井 政就

執筆者:松井 政就

社会ニュースガイド

情報管理の「アップル型」と「ソニー型」

情報管理は大まかに2つのタイプに大別できる。
企業を例に見てみよう。

アップルコンピュータの製品を購入するとアップルIDが登録できる(ユーザー登録)。IDを一つ持てば他の製品を購入した場合も別のサービスを利用する場合も一つのIDで一元管理できる。
これを私は「アップル型」と名付けている。

一方、ソニーでも商品を買えばユーザー登録ができるが、カテゴリーやサービスが異なる場合はそれぞれ個別のIDが必要となる場合がある。ソニーは事業ごとに別会社になっているからで、複数のサービスに対してそれぞれ個別のIDが必要となる。
これを私は「ソニー型」と名付けている。

2つのうち、ユーザーにとっても企業側にとっても、「利便性」においては「アップル型」が圧倒的に優れているが、それには企業が情報を厳格に管理できることが絶対条件となる。


アメリカは「アップル型」、日本は「ソニー型」

国家が行う情報管理は、概ねそのどちらかの形式に属している。

たとえばアメリカの行政における情報管理は「アップル型」で、日本は省庁などの組織が縦割りで行う「ソニー型」だ。日本における「マイナンバー制度」の導入は、国民管理の仕組みを現在のソニー型からアップル型へ変更することを意味するものだ。

現在のところ、縦割り行政の弊害で無駄な管理コストがかかっている点は改善されるが、その反面、国民の情報が国によって一元管理されることは、悪意による不正使用や過失による漏洩により、一度に全ての情報が漏れるリスクが高まることを意味している。


高い厳格さが求められる一元型情報管理

私が「アップル型」と呼ぶ情報一元管理の場合、事業者側の管理コストは安く、ユーザーも管理がしやすいというメリットがあるが、ひとたび情報が漏れれば全て一度に漏れる危険性がある。

つまり、マイナンバー制度が安全に運用できるかどうかは、日本の行政が一元管理を厳格に実行できるかどうかにかかっていると言える。

一方、「ソニー型」の場合は管理コストが高く、ユーザーにも煩雑なID管理が必要だが、情報管理がそれぞれ独立しているため、仮に一つが漏れても連鎖的に全て丸ごと漏れることはない。

利便性か安全性のどちらを優先するかといった考え方の違いにより、それぞれメリットにもデメリットにもなるのだ。


国民は企業を選べても国は選べない

特定非営利活動法人 東アジア国際ビジネス支援センター(EABuS)が実施した「国民番号制度に関する日韓国民意識調査」によれば、自分の情報が知らないうちに第三者(企業や役所を含む)に知られる可能性について、「法律で禁止あるいは制限すべき」と答えた比率が傑出して高かったのが「生体情報(指紋・虹彩等)」の67.0%、「金融与信情報」の65.9%、「年収・財産情報」の65.7%、「顔写真」の62.7%、「病歴・健康情報」の59.6%だった。

調査では、自分の身体や財産に関する情報が、最も知られたくない傾向が現れている。2016年以降、それらの情報がマイナンバー制度によって一元管理されるようになる。

企業のサービスを利用するのであれば、利用規約に同意できなければ使わないという選択肢もあるが、国の政策の場合は国民に選択肢はなく、否応なしに加入させられる。

私たちにできるのは、国が厳格に管理してくれるのを祈ることだけである。
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