労務管理

セクハラ防止のためにできること

労務トラブルの中でも、職場内嫌がらせ、いわゆるハラスメントは、国が受ける相談件数でも解雇を抜いて1位となっています。特に労働者意識の高まりとともに、ハラスメントにもさまざまな種類が生まれていることが相談件数の増加につながっていると考えられます。今回は、ハラスメントの中でも最も認知度の高いセクハラについて解説していきます。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

企業経営のサポートガイド

セクハラとは?

ハラスメントと聞いて、セクシャルハラスメント、いわゆるセクハラを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。テレビなどでも、「それセクハラです。」といったセリフをよく聞きます。このように日常に浸透しているため頻繁に使われる言葉になりましたが、セクハラを一言で表すと、「相手の意に反する性的な言動」といえます。

ドラマなどでは女性社員に意図的なボディタッチをする上司が描かれるケースが多いですが、実際には日常の何気ない行動でもセクハラになるおそれがあるので注意が必要です。実際に面と向かってセクハラだなんていえる状況は、実際の職場ではそうそうありません。気づかないうちに行っている行動こそセクハラになりうるということを認識する必要があります。

 

受け取り方はひとそれぞれ。肩をたたいただけでもセクハラに?

例えば、日常の業務中に男性の上司が部下の肩をポンとたたく行為。部下が男性であればセクハラになることはないでしょうが、部下が女性の場合はどうでしょうか。そのような行為を全く気にしない女性もいますが、やはり抵抗を覚える場合も少なくありません。

上司としてはコミュニケーションのつもりでも、部下はそのようには受け止めていないことも往々にしてあります。こうした何気ない行動が繰り返されると、部下の心中で上司への警戒感が生まれ、場合によってはセクハラとして、人事部などに相談されることも考えられます。

また、セクハラの多くは、飲みの席で起きています。飲み会では会社とは別の場所ということで、気も緩みますし、お酒が入ることで気持ちも大きくなってしまいます。下ネタなど、言動がエスカレートしないように気を付けましょう。

 

セクハラを防ぐには、まず相手の気持ちを想像すること

セクハラの具体的な事例を挙げればキリがありませんが、重要なのは相手が不快に思うことはしないということです。このようにいうと、なんだか小学校の注意みたいですが、セクハラの防止には、まずこの一言に尽きます。

最初にセクハラの定義として、「相手の意に反する」と書きましたが、先ほどの肩に手をやるといった何気ない行為でも、嫌がらない相手もいれば、抵抗感を感じる相手もいます。要は相手の立場や気持ちを思いやって、それぞれに対する距離感を把握することが、セクハラを防ぐ上で、重要な心構えの一つです。

一律に過去のセクハラの事例に該当する行動をとらないと決めてしまうと、それはそれで職場がぎくしゃくしてしまいます。日々の職場での会話の仕方や表情から、「この人の許容範囲はここまでかな」といった想像をすることが大切です。もちろん各自の距離感も一緒に働くうちに変化していきますので、そうした変化を読み取っていければ、セクハラ防止につながるだけでなく、職場関係も円滑になるでしょう。

 

ときにはドライに考えよう

自分が好意をもった人に対しては、いくら相手の気持ちを思いやる意識があっても、行動を抑えられない場合もあります。こんな状況で、食事に誘って思いを伝えるくらいであればセクハラとはいえませんが、こうした行動がエスカレートしてしまう場合も、往々にしてあります。ストーキングまではいかなくても、しつこく誘う行動は、受け手の心理的な負担になります。

このような場合は、社内恋愛のような相互理解に基づく場合は別として、所詮は職場の同僚の関係といったドライなとらえ方をして合コンやパーティーにでも行ったほうが、自分自身にとっても、職場にとっても健全です。

特に上司と部下といった関係であれば、職場の環境に与える影響も大きいので、なおさら節度ある行動を心がけなくてはなりません。

 

セクハラ防止は、各自の心構え次第

セクハラを防止するための研修や、社内規程を作ることももちろん大切です。しかし、もっと重要なことは、ここまで書いてきたように各自が相手の気持ちにたって、許容される行動について想像力を働かせること、そして個々人の人格を尊重することにあるのではないでしょうか。こうしたことは、研修などで一朝一夕に身につくものではなく、各自が自覚をもって、ときに自己を抑制する倫理観が必要です。

また、女性が被害者といったケースだけでなく、もちろん男性だって被害者になりえます。特にナイーブな男性も最近は増えてきているようですので、例えば「男のくせに」といった発言で相手を傷つけないよう、意識しておきたいものです。


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