労務管理/労務管理に関する法律

あなたの会社は大丈夫?よくある労務トラブル5選

国が受ける労働相談の件数は平成21年までは増加の一途をたどっていましたが、その後は、若干減少しています。ただし、ここ数年で、社内に相談窓口を設ける企業も増えてきていますので、単純に労務トラブルが減ってきているとは一概にいえません。今回は、主なトラブルを5つに分けて、概説していきます。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

企業経営のサポートガイド

1.職場内嫌がらせ(ハラスメント)

職場のトラブルで最も多いのが嫌がらせ、いわゆるハラスメントです。セクハラ、パワハラがメインでしたが、近年では、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)といったものも取り沙汰されています。

こうしたハラスメントは、悪化すれば行った側の解雇などの問題や、受けた側のメンタルヘルスの問題にも結びついていきます。またいろいろな労務トラブルも、もとはハラスメントが原因であることも少なくありません。

ほかにもトラブルとして相談に上るまではいかないものの、アルコール・ハラスメントやスモーク・ハラスメントなど、ハラスメントの種類はますます増えてきています。


2.解雇

解雇を巡るトラブルは昔から常に労務トラブルの大部分を占めてきました。

特に今では中途採用が一般的になったため、採用時のスキルに関する情報と、実際に働いた際の実務能力が著しく乖離しているといったこともしばしば起こります。採用時に期待されたスキルが不足していることは、会社にとっても解雇理由として検討されます。さらに、採用された社員も仕事についていけず、勤務不良の原因になるなど、労使双方の問題となっています。

さらにどこまでが解雇として認められるのかといった問題もあります。労働者の生活もありますので、今の制度では解雇を行う場合には強い制約があり、十分な検討が必要となります。


3.退職関連

解雇以外にも、退職を巡るトラブルは起こります。

例えば、業績の悪化などによるリストラでは、希望退職制度の実施の際に、対象社員への退職勧奨が行われます。退職勧奨は、社員との双方合意の上での退職なので、一方的な意思表示である解雇とは異なりますが、行き過ぎた退職勧奨は解雇と同様に取り扱われる場合もあります。

さらに、他社への引き抜きによる退職や、期間など定められた退職ルールを守らないケースなど退職を巡るトラブルも多岐にわたります。


4.労働条件の引き下げ

労働条件の引き下げも、会社側が説明責任を果たさなければトラブルとなります。

例えば、業績悪化によりやむを得ず賃金を引き下げしなければならない場合や、成果主義の導入などによる賃金が低下してしまう場合には、社員の納得の上で行うことが必要です。会社の事情で勝手に進めれば、個別のトラブルだけでなく、社内全体の士気の低下にもつながります。

さらにケースによっては、労働条件の不利益変更にも該当してきますので、労働者の同意がなければ違法となるリスクもあります。


5.出向、配置転換

出向による賃金や労働条件の変更や、配置転換もトラブルの原因の一つです。出向先での賃金体系が出向元より低いことや、本人の望まない配置転換が元でトラブルが起こるケースがあります。

以前は、終身雇用の裏返しで、会社命令であれば異動はやむを得ないといった風潮がありました。しかし、終身雇用が崩れてきた現在では、会社命令での望まない異動は本人の退職やトラブルにつながりやすくなっています。


労務トラブルは予防が重要

いかがでしょうか。このように、一口に労務トラブルといってもその内容は多岐にわたります。また、以前は解雇がトラブルで最も件数が多かったのですが、平成24年からは、職場内の嫌がらせの相談がトップとなるなど、労務トラブルの内容も変化してきています。このように変化する労務トラブルに柔軟に対応して、未然に防ぐことが経営リスクの軽減のために重要です。

次回以降で、各労務トラブルごとに、どのようなことが問題になるのかといったことや、その防止法や解決法について詳しく説明していきます。

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