優しい登場人物
■「待つ」ことを惜しまない人たちIT化が進み世の中が24時間稼働する現在、日々は足早に過ぎていきます。仕事においてもスピード優先。待つことをよしとしないのがイマという時代です。そんな時代に、恋愛時間が止まったままの2人は生きています。
2人はとにかくじれったい。仕事のスピードは速いのに、依子の恋の一歩一歩は驚くくらい緩やかです。巧もそれは同じ。しかし、周りの人たちは彼らを急かすことなく、温かく見守ります。一人ひとりの待つ優しさが、2人を生まれ変わらせたと言ってもいいのではないでしょうか。
■誰かのことを懸命に考える
登場人物は常に誰かのことを思いやり、誰かのために行動しようとします。考えてみれば巧はずっと優しく、不器用な依子のことをいつも心配していました。それは依子も同じ。お節介とわかっていても巧を心配しています。それが恋の始まりなのです。
どんなに振り回されても、2人を責めない島田佳織(国仲涼子)と鷲尾豊(中島 裕翔)も印象的でした。この2人もまた誰かのことを懸命に思い、懸命に行動する優しい心の持ち主です。
脚本は魔法をかける
脚本家の古沢良太は本作に2つの魔法をかけました。1つ目は、知らず知らずのうちに登場人物が”恋”を意識する魔法。主人公2人は職業観、結婚観、あらゆるテーマで論戦を繰り広げていたはずなのに、「恋なんてしたくない」だったはずなのに、気がつけばひかれ合っていきます。動き始める2人のハートは、魔法の仕業としか言いようがありません。
2つ目は登場人物が全員優しすぎるという魔法。“悪”の持つちょっと危険な面白さはないのに、物語からひと時も目が離せなかったのはなぜでしょう。見逃しても展開がわからなくなることもないのに、物語から目が離せないのはなぜでしょう。すべては、魔法のように視聴者を魅了する巧みな脚本のおかげに違いありません。