国が公的年金「世代間格差」マンガを公開

国は所得代替率について50%を将来にわたり維持すると言っている。そうすると、世代間格差はこれ以上拡大しないことになるが……

国は所得代替率について50%を将来にわたり維持すると言っている。そうすると、世代間格差はこれ以上拡大しないことになるが……

昨年、国は公的年金の制度や将来展望について説明するマンガを公開しました。マンガという若者のカルチャーを利用して、若者の公的年金への不信感を少しでも払拭し、制度の理解を深めてもらおうという試みのようです。

ただ、内容については、さまざまな意見(批判)があるようです。特に、「世代間格差」について検証している部分です。

若い世代の皆さんが公的年金に対していだく不信感の原因の一つとして「世代間格差」があると思います。今の日本は制度を支える若い世代が少なくなり、年金を受け取る人が増え続けています。

制度を維持するため、保険料が上がり続けている一方、受給開始年齢は引き上げられ、給付も引き下げられたりしています。制度が改悪され続けているこの状況だと「若い人ほど損をする」という世代間格差を否定することは困難なように思います。

実際のところ、年金の世代間格差はあるのか

さて、世代間格差についての国の主張を見る前に、実際のところ世代間格差はあるのかどうか、数字で見てみたいと思います。

国は昨年公的年金の受給水準の推移を公表しました。現役世代の収入に対する年金受給額の割合を「所得代替率」と言い、この割合の推移をまとめています。

「夫は会社員、妻は専業主婦」の世帯で、平均的な収入での推移をみると、平成26年時点で所得代替率は次のとおりです(年齢は平成26年時点。

65歳 62.7%
60歳 59.7%
55歳 58.3%
50歳 56.8%
45歳 54.8%
40歳 52.3%
35歳 50.6%
30歳 50.6%

この数字からも、年金受給世代と若い世代の「格差」はあると言わざるを得ません。

世代間格差の原因は、日本の公的年金制度が今の保険料が今の年金支給の財源となる「賦課(ふか)方式」にあります。一方、自分の保険料が自分の年金の財源とするのが「積立方式」と言い、積立方式へ制度を抜本的に変更すべきという声もあります。

若者の生活は厳しく、一方、裕福な高齢者もいる

では、年金マンガにおける「世代間格差」に対する意見を見てみましょう。まず、「今の年金受給者は親を扶養しながら苦労してきた。そのおかげで若い世代は豊かに暮らせているから、年金が少なくても損とは思えないのでは?」という主張をしています。

確かに、昔と比べると、「若い世代がリタイアした親を養う」というよりも、「リタイアした親に生活の支援をしてもらっている若い世代」が多いかもしれません。

これはリタイア世代が元気で、生活に余裕があるということでしょう。生活に余裕があるのは、今の年金制度のお蔭もあるかもしれません。

年金マンガでも、「今のお年寄りに年金がなければ、お年寄りはどうやって暮らすのか」「何らかの形で若い世代が親を養わなければならない」のではないか?と主張しています。

ただ、今の若い世代の生活が厳しく、年金受給世代が比較的裕福であることも忘れてはいけませんね。

年金は「保険」。損得で考えてはいけない!?

年金マンガのもう一つの主張が「年金制度を損得で考えてはいけない」ということです。損得で考えるものではないので、世代間の格差を語るのはナンセンスだという主張でしょう。これについては、私も過去の記事「損得を語るのはそもそも間違い!? 公的年金の本質とは」でも指摘しています。

この記事の中で、「公的年金の保険料は『町内会の会費』みたいなもの」と言いました。町内会費を払って、慶弔等があれば見舞金やお祝い金を受け取るという「町内会の会費」システムに損得を論じるのは、確かにナンセンスですね。

理屈はそうなのかもしれませんですが、「年を取った時に受け取るために保険料を支払う」というイメージが強く、なかなか納得しにくいのも事実でしょう。

今の日本で賦課方式を続ける限り、「世代間格差」は今後も存在し続けるでしょう。ただ、格差の是正のため、今の高齢者にも痛みを共有してもらう必要があるでしょう。年金制度への理解を深めるため、義務教育で年金を含めた税や社会保障について、国語や数学と同じぐらい重要な科目として教育していく必要があるのではとも思います。

一方、年金マンガの中で、女性に「結婚してどんどん子供を産めばいいのよ!」と話している部分については、ちょっとデリカシーに欠けると思います。こういった主張が、制度や運営主体である国そのものへの不信につながってしまうということを自覚してもらいたいですね。

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