マネープラン/子育て世代のためのマネープラン

ビンボー50代にならない!40代で考えるマネープラン

子どもの独立の目途がたち、定年退職まで残り10年。この期間が人生最後の貯めどきと言われています。しかし、最近は50代から老後資金を貯めようとしても、うまくいかない世帯がでてきています。その原因は、実は40代の過ごし方にあるのです。今40代の人がビンボー50代にならないためにやっておくべきことをご紹介します。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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実は、40代は収支に一番余裕がある年代

40代は、なかなか微妙な年代。「40にして惑わず」といいますが、実際は不安なことがたくさんある年代です。仕事の場面では、会社の中核社員として働きがいのある年代。一方で、ある程度、自分のポジションも見えてきて、この先の収入の伸びがあまり期待できないと考える人もいます。

プライベートでは、子どもが高校進学でひと息ついたと思えば、すぐにやってくる大学受験。住宅ローンの返済も重なり、家計が最も苦しい時期に差し掛かります。また、シングルの人は、結婚をしないと決めたわけではないけれど、もしかしたら一生ひとりかも。という不安を抱きながら過ごしている人も少なくないでしょう。

総務省の家計調査(2021年2月公表)によると、収入は50代が約69万6000円と最も多くなり、支出も約48万円と、全世代を通して最も多くなります。その結果、収支差は約21万6000円となり、他の年代と比べて特段、余裕があるわけではありません。収支差でいえば30代が約22万6000円で最も高くなっています。年代が上がるごとに収入は増えるものの、支出も増えていき、50代でピークを迎えることになります。これは、晩婚化などの影響などもあり、子どもの学費がかかる時期が後ろ倒しになっていることも、ひとつの要因でしょう。

 
年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の1カ月の家計収支

年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の1カ月の家計収支差



ひと昔前なら、子どもが大学を卒業すれば、浮いた学費の分を自分たちの老後資金に振り分ければいいので、定年退職までの5~10年で1000万円程度のお金を貯めることができました。退職金で住宅ローンを精算しても、残りの退職金は老後資金に回すことができました。

しかし、最近は、定年退職後も子どもの学費負担がある、住宅ローンを完済したら退職金はゼロ。このような50代、60代の世帯が増えているのです。

こうした世帯には酷かもしれませんが、このような事態は急にやってきたわけではありません。少なくとも子どもが生まれたときに、ある程度は予測ができていたことです。また、子どもの進路が明確になった時点や住宅購入した時点で、50代、60代でどんな収支になるのか、シミュレーションすることもできたのです。しかし、シミュレーションはしたけれど、予想外の出費がかさなった、急な配置転換で収入が減った、退職金が想定より少なかった、ということもあるでしょう。

しかし、50代になると、仕事で稼げる時期が残り少ないだけに、気づいた時点でリカバリーしようとすると、リスクの高い投資商品に多額の資金を投入してしまい、大きな損失を被ることになりかねません。ゆとりある老後を過ごせると思っていたのが、一転。老後は節約節約、という生活を送ることになってしまうのです。
 

40代で家庭の中長期計画を立てて、予測する

今、40代なら10年後、20年後のライフプランを書き出すことによって、問題があれば立て直すことができる時間があります。子どもの年齢、進学時期と自分の年齢を突き合わせて、いついくらかかるのか、このとき住宅ローンはいくら残っているのか、といったお金の中長期計画を立てていない人が意外と多いのです。会社では、企業の中長期計画に沿って仕事をしているはずなのに、家計運営はほったらかし。これでは、突発的な出来事に対応することは難しくなるでしょう。

もちろん、計画どおりに事が運ぶとは限りません。しかし、10年後、20年後までの家族の予定とお金の予定を一覧で作っておけば、計画どおりにいかなかったときに、どうやってカバーすればいいのか、考えるきっかけになるはずです。参考に簡単な10年プラン表を紹介しますので、家族で話し合いながら作ってみてください。
 
10年先のライフプランで家族のイベントと予算をチェックする

10年先のライフプランで家族のイベントと予算をチェックする



 

40代では想定できないこともある

人は、常に「あのとき、こうしていれば」と後悔するものです。その後悔をバネに、これから同じ失敗をしないように対策を立てることができるのも人間です。

40代の今、「20代でこんなことをしておけばよかった、30代でこれをしなかったのは悔やまれる」。そんな思いを抱いている人もいるでしょう。50代になった筆者も、30代、40代でこんなことをしておけば、今、もう少しラクに生活できたのに、と思うことはしばしばあります。たとえば、アタマが柔らかいうちに、資格取得の勉強をしておけばよかった、積立はしているけど積立投資の額を増やしておけばよかったと。数えあげたらキリがありません。

しかし、後悔してばかりでは何の解決にもなりません。今感じている後悔は、次の10年先を変えるための魔法の言葉と思えばいいのです。

●40代で資格を取りたかったけれど、今50代になって取りたい資格は別にある。だから今から頑張ろう。

●積立投資を早く始めればよかったけれど、60歳で終わりじゃない。70歳で使うお金を積み立てよう。

●50歳で病気になって収入が減ったけど、40代で貯蓄を頑張ったから、なんとか乗り切れる。治ったらまた頑張ろう。


過去を変えることはできないけれど、後悔したことを、これからやるべきことと捉えて、今の生活に少しだけ想像力を働かせて、10年先の準備をすることが大事なのではないでしょうか。

しかし、想像力がなかなか働かないことのひとつに、病気・ケガがあります。筆者もそうですが、40代、50代で病気をし、思うようにお金が貯められない時期がありました。現時点、健康で人間ドックでも問題ないと言われていても、男女ともに50歳前後からカラダは変調をきたします。そのときに収入が減っても乗り切れるだけの対策は、今後10年の準備のひとつとして、忘れないようにしてください。

もうひとつ、想像力が働かないのは、「生活のダウンサイジング」です。40代は仕事もプライベートもアクティブで何かと付き合いも多く、日々の出費は嵩みます。これを50代になったら、60代になったら減らせると思ったら大間違いです。一度、膨らんだ家計を縮小させるのは、かなりの努力が必要です。

実際、先に紹介した家計収支では、60代以上で収入がガクッと減る一方、支出の削減額はそれほどでもありません。勤労者世帯のデータですから、定年退職後も再雇用や継続雇用での収入がある世帯が対象です。一定の収入があるとはいえ、現役時代とは収入が違うのですから、支出もそれに見合ったものに見直ししなければならないはずです。

今は、余裕があり、貯蓄もできているかもしれませんが、そういうときにこそ、「この出費は子どもが独立したら減らせる」「この出費はキャリアアップのために、今、必要」というように、減らせるお金、減らせないお金、いずれは出費しなくて済むお金、という具合に、生活のダウンサイジングの計画だけでも立てておくといいでしょう。

50代からラストスパートで老後資金を貯める、というセオリーが通じなくなった今、ビンボー50代にならないためには、40代の今、お金のことでできることはやっておきましょう。

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