眠気が起こるメカニズム

睡眠・覚醒メカニズム

睡眠と覚醒の関して、3つのメカニズムが働いています

これまで、私たちが眠くなるメカニズムでは、恒常性維持機構(ホメオスタシス機構)と体内時計による生体リズムが知られていました。

起きていた時間に比例して脳に睡眠物質がたまり、その睡眠物質の量に比例して眠気が強くなります。眠ると睡眠物質が減るので、十分な睡眠をとると眠気がなくなり目が覚めます。このように、体の中の環境を常に一定に保とうとする働きが、恒常性維持機構(ホメオスタシス機構)です。

一方、夜になったら眠くなり、朝が来たら目が覚めるという、体内時計にコントロールされた生体リズムもあります。徹夜明けの朝に、なぜだか目がスッキリ冴えていることがあります。恒常性維持機構(ホメオスタシス機構)からいえば、脳内には睡眠物質がたくさんあるので眠いはずですが、体内時計に働きで眠気を感じなくなるのです。

最近、これら2つのメカニズムのほかに、「睡眠システム」と「覚醒システム」のバランスが注目されています。

覚醒システムの親玉・オレキシン

オレキシン

睡眠システムと覚醒システムは、シーソーに似ています

睡眠システムとは、睡眠にかかわる脳の神経細胞のネットワークです。一方、覚醒システムは、脳を目覚めさせていようとする神経の集まりです。睡眠システムと覚醒システムは、それぞれがシーソーの両端に乗っているようなものです。2つのシステムが互いに抑制し合い、バランスをとることで、睡眠と覚醒の切り替えがスムーズに進みます。

覚醒システムを活性化して、シッカリ目覚めていさせてくれる脳内物質が「オレキシン」です。オレキシンは1996年に、テキサス大学にいた柳沢正史医師(現・筑波大学)と櫻井武医師(現・金沢大学)が発見しました。

日中はオレキシンの分泌が増えて、覚醒システムが睡眠システムよりも強くなり、目を覚ましていられます。夜になるとオレキシンの分泌が減り、覚醒システムが弱まって眠たくなります。オレキシンは、ストレスや不安が解消したり、食事でお腹がふくれたりしても、分泌が減ります。ご飯のあとに眠くなるのは、おもにこのためです。

世界初の睡眠薬「ベルソムラ」

ベルソムラ

まったく新しいタイプの睡眠薬が登場しました

これまで使われてきた睡眠薬は主に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ゼット・ドラッグ)、メラトニン受容体作動薬の3種類です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳内のギャバ(GABA)という物質の働きを高めて、催眠効果を発揮します。メラトニン受容体作動薬は、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンと同じような働きをして、眠気を作り出します。

2014年9月に、オレキシンの覚醒作用をブロックする、全く新しい睡眠薬「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」が発売されました。ベルソムラは、覚醒システムを活性化しているオレキシンの作用を弱めるので、覚醒と睡眠のシーソーが睡眠側に傾き、眠気が強くなります。

ベルソムラの適応症は、「不眠症」です。薬の作用のしかたを考えると、頭がさえて眠れないとか、夜中に何回も目が覚める、グッスリ眠った気がしない、といった人が飲むと良いのではないでしょうか。

ベルソムラの飲み方ですが、成人の場合は1日1回20mg錠を1錠、高齢者では1日1回15mg錠を1錠、眠る直前に服用します。飲んだあとは、すぐに寝床に入りましょう。

発売前の調査では、ベルソムラを飲むと寝つきが良くなり、グッスリ眠っていられることが分かっています。睡眠潜時(寝床に入ってから寝入るまでの時間)は、ベルソムラを飲み始めて3か月のあいだに、25分も短くなりました。また、総睡眠時間は、ベルソムラを飲み始めて3か月たつと、飲む前に比べて55分も長くなりました。

一方、副作用は少なくなっています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で問題となる、翌朝の認知機能の低下や反跳性不眠(急に薬をやめると不眠が以前よりひどくなること)は、プラセボ(偽薬)と同じぐらいです。ベルソムラはこれまでの睡眠薬に比べて、かなり安全な薬と言えます。

ベルソムラは、まだ発売されたばかりの薬です。本当の効果や副作用の頻度、他の睡眠薬との使い分けなどは、これからしっかり見ていかなければなりません。とはいえ、全く新しいタイプの睡眠薬ですから、不眠症に悩む人たちにとって、新しい希望の光となりそうです。

【関連サイト】
快眠ジャパン
睡眠薬・睡眠改善薬・睡眠導入剤
睡眠のメカニズムとリズム
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