人気の定番練習曲 ブルグミュラーとはどんな人なのか
ブルグミュラーとはどんな人?
<目次>
ブルグミュラーとはどんな人?
フリードリヒ・ブルグミュラーは、1806年ドイツに生れました。音楽家の両親から手ほどきを受け、兄はチェロとピアノの演奏、弟は同じように作曲家として活動する音楽一家でしたが、26歳の時に単身フランスへ移住。68歳でその生涯を閉じるまでパリを中心に作曲家としてだけでなく、ピアニストそして教育者として活躍しました。同年代を生きたショパンやリストのように、後世コンサートで演奏されるような作品は残さなかったものの、ピアノ教育者としては国王の子供たちを教えるなど高い評価を得ており、その豊かな経験から生み出された練習曲集は、現在でもピアノ学習者に親しまれ弾き続けられています。
3冊のブルグミュラー練習曲
ブルグミュラーは、「25の練習曲」「18の練習曲」「12の練習曲」の3冊の練習曲集を書きました。しかし、ブルグミュラーの練習曲といえば「25の練習曲」を意味すると言っても過言でないほど、3冊間の知名度には差があります。「25の練習曲」が他の2冊に比べ圧倒的にポピュラーになった理由は、レベル的に一番易しかったから。ピアノ譜を読むことに慣れ、指がある程度のスピードで動けるようになった初級者が楽しく取り組める曲集です。
3冊の難易度は25→18→12の順に上がっていき、「18の練習曲」「12の練習曲」は、楽譜に記されたテンポや指示をしっかり守って弾きこなすためには、中級レベル以上のテクニックが必要となります。
それぞれの曲にタイトルがついている
ブルグミュラーの練習曲の一番の特徴は、各曲それぞれに親しみやすいタイトルがつけられていること。これは当時(ロマン派)の特徴でもある「標題音楽」と呼ばれる類のもので、タイトルのイメージに合った演奏をするためには、どのような音色でどのように弾いたらいいのかイメージしやすく、指の動きだけでなく表現力を養う上でとても役に立ちます。■タイトルがつけられ甦った「12の練習曲」
ちなみに、「12の練習曲」は3冊の中で唯一タイトルがついていない練習曲とされていましたが、1861年フランスで出された初版にはそれぞれの曲にタイトルがついていたことが、近年、音楽ライター飯田有抄氏により発見されました。このため、音楽之友社の新版では今まで番号だけだった「12の練習曲」にもそれぞれの曲にタイトルを記載しています。
3冊の中では叙情的というより技巧的な要素が勝っていた「12の練習曲」が、タイトルがつけられたことにより、曲のイメージが膨らみ一気に生き生きとした華麗な小品に生れ変わりました。同年代に活躍していたリストの曲と同じ「ラ・カンパネラ」「鬼火」「泉のほとりで」などのタイトルは、当時のピアノ学習者の練習意欲をより一層かき立てたに違いありません。
バラエティに富んだ曲想で飽きない
どの曲も、そのタイトルを見て想像できるように、静かな曲、勢いのある曲、民族調の香りが漂う曲、心模様をあらわした曲、自然の風景をあらわした曲……と、バラエティに富んでいます。そのため、本のとおり順番に弾いていっても次々曲想が変わるので、飽きずに続けることができます。
また、それぞれの曲想にふさわしい多様なタッチやテンポ、強弱の変化が求められるので、決まった音のパターンを繰り返す典型的な練習曲と違い、曲想を考えて楽しみながら自然に様々なテクニックが身につくようになっています。
1曲ずつが長すぎず、短すぎずちょうど良い
どの曲も、「長すぎない」というのも人気のポイント! 長ければ長くなるほど、それだけ課題も多くなり仕上がるまでに時間がかかります。上達するためには、1曲ずつしっかり時間をかけ完成度を上げてから次へ進むことが大切ですが、さまざまなタイプの曲をできるだけ数多く弾くということも大切。平均して見開き1ページのブルグミュラーの練習曲は、他の曲と併用しても負担にならないちょうど良い長さだと言えるでしょう。
初級者から上級者まで楽しめるブルグミュラー練習曲
初級者のための教則本というイメージの強いブルグミュラー練習曲集。でも、表記のテンポで、楽譜に書かれている指示をしっかり守り、タイトルどおりの曲想を表現しながら弾くのは、どのレベルの人にとってもそう簡単なことではありません。正確なタッチだけでなく、メロディーをきれいに歌う、ニュアンスを弾き分ける、音色に変化をつける、強弱やテンポのコントロール、ペダルの踏みかえなど、いくらでも完成度は上げられるものです。
「子供の頃に弾いた」「自分はもうブルグミュラーのレベルではない」という人も、練習曲だと思わず叙情的小品と思ってもう一度弾いてみると、今までの印象と違ったブルグミュラーに出会えるかもしれません。
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