親子間に良好な関係を築くことを助ける「PRIDEスキル」
どんな特性を持った子にも良好な親子関係が鍵
小児神経科や小児精神科、療育センターなどへ問い合わせ、対応の仕方を相談するのも方法です。例えば、親子相互交流療法 (PCIT) も、そうした対応方法身につけるセラピーのひとつです。親子のカウンセリングを通し、一般的な親子から、反抗挑戦性障害やADHDなどの特性を持つ子、また虐待してしまう親などを対象に、親子間に良好 な関係を築くことに力を入れています。著しい成果を挙げ、世界中で認められているメソッドです。
「民主的子育てスタイル」を目指すと掲げるこの親子相互交流療法の根幹にある「PRIDE スキル」は、家庭でも様々な場面で用いることができます。「PRIDE スキル」とは、 「Praise, Reflect, Imitate, Describe, Enjoy (褒め、省み、真似し、描写し、楽しむ)」の頭文字を取ったもの。好ましくない行為に注意を向けず、よい行為を「褒め」るようにし、子供の行為を「省み」、否定するのではなく「真似し描写」する、そしてその子と共に過ごす時を「楽しんでいる」と表現します。
例えば、セラピー風景は次のように進みます。反抗挑戦性障害を持つ6歳の男の子とお母さんのやりとりです。
母親:マグネットで素敵なロボットを作ったわね! ママとっても気に入ったわ。
男の子:ロボットじゃなくて城に変身させた(反抗的な態度で)。
母親:あら、ロボットを城に変えてしまうなんて、賢い!(舌を出す男の子)
母親:舌を出したのね(男の子の行為をそのまま描写)。
男の子:皆ロボットのこと大嫌いだから、城に変身したんだよ(ロボットがしゃべっている振りをしながら)。
母親:いいアイデアね。ありがとう、教えてくれて(男の子はロボットの口調で面白おかしく話し始めます。母親もその口調を「真似します」)
母親:あなたの想像力はロボットのように羽ばたいていくのね。こんな風に違ったデザインを考え出しちゃうなんて、ママ本当にすごいと思う!
このように、穏やかに楽しんでいる様子で、良い面に着目していきます。「すぐ反抗的なこと言って!」「舌を出すなんてどういうこと!」などと、「好ましくない行為」に声を荒げ感情的に反応することを控えるだけでも、随分と違ってきます。セラピーでは、まずは親が「PRIDEスキル」を身に着けること、そしてその次に進む段階が「こちらの要求を聞くようにする」とされています。親の要求を通そうとする前に、まずは親子間にその土台となる絆を築いていくのですね。
それほど珍しいという割合ではなく、生まれつき難しい特性を持つ子というのはいます。「親のせい」と悩み、ただでさえ大変な思いをしている親自身をそれ以上追い詰めないことです。その子ができないことばかりではなく、ポジティブな面に目を向け、少しでも ゆったりとその子に向き合い、温もりある環境を整えられるよう、フォーカスしていきましょう。
(*)出典:
International Journal of Neuropsychopharmacology(2014)「Genotypes do not confer risk for delinquency but rather alter susceptibility to positive and negative environmental factors」より
Scientific American(2014)「Parent Training Can Improve Kids’ Behavior」より