「難関大の合格者に100万円の奨励金を支給する」と宣言した鹿児島県伊佐市。「お金で釣るのはけしからん」という批判の一方で、「少額でも教育費の足しになるから助かる」という賛同の意見も。どちらかというと賞賛の声の方が多い、この制度、本当のところはどうなのでしょうか。

まずは経緯をおさらい

鹿児島県の伊佐市は、定員割れが続いている市内の県立大口高校の入学者確保策として、東京大・九州大などの旧帝大や、早稲田大・慶応大などの難関私立大は100万円、他の国公立大や同程度の私立大には30万円を支給すると発表しました。

これに真っ先に異を唱えたのが、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏。自身のブログで「吐き気がする」と激怒したことで、ブログは炎上。

ところが、「私大の早慶が100万円なら、国立大の東大は200万は支給すべき」などネット上では冷静な議論がなされるなど、賛否両論あるようです。

問題は、都市部と地方の温度差

尾木ママのブログが炎上した最大の理由は、都市部と地方での温度差の問題をはき違えてしまったことと考えられます。具体的に説明すると、高校や教師の指導力がどうかという教育水準の問題と、都市部への人口集中により急速に少子化や過疎化が進んだ地方で起こっている過疎化の問題が混在しているのです。

こう考えるガイドの地元では、自転車で通える範囲に高校は10校以上あります。電車を使って1時間以内に通える範囲にまで広げると20~30校にも上ります。さらに、それぞれの高校が内申点1点刻みでランク化されているのです。このような都市部では、公教育と学習塾のような民間の教育産業とで、競争原理が働く環境下にあり、最低限の教育水準は自然と維持されていると考えられます。

ところが、少子化や過疎化が進んだ地方ではそうはいきません。自宅からそう遠くないところに高校があること自体が、恵まれた環境といえる地域があるほどです。

高校の廃校は地元にとっては死活問題

この問題の背景には、急速な少子化や過疎化による高校の存続の問題もあります。その証拠に、一連の騒動の最中、伊佐市の市長は高校が統廃合されることは地域にとっては死活問題という旨の発言をしています。

もし、高校が廃校になると、通学の足となるバスや電車などの利用者が減り、公共交通機関の衰退へとつながりかねません。また、高校生が必要とするはずの学用品や弁当などを販売する店舗は売り上げが激減するなど、周辺地域への影響も無視できません。

このように、高校一つが廃校になることで、過疎化した地域がますます衰退するという悪循環に陥ることへの危機感が背景にあるのです。

県外への人材の流出につながるのでは?

さて、関東や関西、福岡など県外の難関大学受験を推奨した結果、優秀な人材が県外へ流出してしまうことを懸念する声もあります。しかし、高校受験の時点で、市内の中学校の成績上位者が、鹿児島市などの市外の高校に進学しているのが実態です。つまり、大学受験以前に、高校受験の時点ですでに人材の流出が始まっているのです。

大学受験に関しても、鹿児島県内には国立・私立合わせてたった6大学しかありません。もともと、より広い選択肢を選ぼうとしたら、県外の大学を目指さなければならないことに変わりはないのです。

ですから、この制度のせいで、県外への人材のさらなる流出につながるとは必ずしも言えないでしょう。

そして、この問題、一番のポイントは「先立つものがなければ」問題にあると言えそうです。

その、「先立つものがなければ」問題とは?