「先立つものがなければ」問題

この騒動をさらに複雑にしている背景には、日本の教育への公的支出の割合が低いことや授業料や生活費を捻出する家計が切迫しているなどの経済事情が挙げられます。

OECDの調査では、日本のGDPに占める教育への公的支出の割合は2.9%で、OECD平均の3.9%を下回っています。国からの支援は決して十分とは言えないのです。私立大学と比べて授業料が安いと言われる国立大学ですが、県外の国立大学へ進学するとなると下宿代や生活費が必要となり、意外にも費用がかかる点が見逃されがちです。
自宅から国立大学へ通うのに必要な費用(年間)は約117万円と最も安く、一方で下宿から国立大学の約180万円と意外と高いことがわかる。

自宅から国立大学へ通うのに必要な費用(年間)は約117万円と最も安く、一方で下宿から国立大学の約180万円と意外と高いことがわかる。


日本学生支援機構「学生生活調査」(2012年)によると、自宅から国立大学へ通うのに必要な費用(年間)は約117万円と最も安く、次いで自宅から私立大学の約176万円、下宿から国立大学の約180万円となっています。国立大学とは言え、下宿するとなると経済的な負担は決して小さくありません。

また、大学生(学部進学者)が奨学金を受給している割合は50%を超え、大学生の2人に1人が奨学金をもらっているのが現状です。その奨学金も、日本では制度が十分とは言えず、返済義務のある、いわば「借金」なのです。

さらに、全国大学生活協同組合連合会の2014年の調査では、学生の生活費全体に占める「仕送り」の割合は57.4%と調査開始以来過去最低を記録しています。

これらすべて、家計にとっては教育費が重い負担となっている現状が読みとれます。こうした経済事情を考えると、この制度、必ずしも批判の矢面に立たされることではないと言えそうです。

「給付型の奨学金」と考えるべし

経済的な理由で大学進学をあきらめたり、県外の大学を受験することをためらったりする人は少なくありません。そういう人たちにとっては、この制度、大変ありがたい制度であることは間違いありません。

お金というニンジンでつっていると考えるから物議を醸すのであって、シンプルに給付型の奨学金と考えればしっくりくる問題と言えるのではないでしょうか。
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