新卒採用活動における“AIDMA”
新卒者の採用活動におけるAIDMAのプロセスを説明すると添付の図のようになる。表の上段は各ステップにおける応募学生の状態を、また下段はめざすべきゴールを示している。新卒採用活動におけるAIDMA
多くの会社は概ねこのAIDMAのプロセスに沿った採用活動を行っている。実際、就職サイトなどで採用の告知を行った後、かなり綿密に作り込まれた会社説明会を開催し、応募学生の状態は“Interest”や“Desire”のステップには充分到達している。しかし一方で、内定を出す前の“Motive”のステップでは明らかにコミュニケーションが不足している会社が多い。
勢い、内定者懇親会などを実施して候補者の入社意志を固めようとするが、これが期待するほど効果的に機能しないケースが多い。豪華な会場でおいしい食事を提供し、楽しい雰囲気のイベントに仕立てあげても、“入社の決め手”を提供できないからだ。言うまでもなく、採用活動のゴールは学生が入社することである。“Interest”や“Desire”のステップでいくら成功しても、最終的に学生の“Action”、つまり内定承諾が取れなければ意味がない。だからこそ、多くの会社において採用成功のキーポイントは“Motive”を適切に機能させることだと言える。
面接を“Motive戦略”のベースとする
あらためて先ほどの自動車購入のAIDMAを考えてみると、“Desire”まではコンテンツの良さ自体が次のステップへのドライバーになるが、“Motive”はそのコンテンツが自分に与える意味を消費者自身が確信することがカギであることが分かる。例えば、乗り心地が良いということはその車への評価を高めることにはなるが、購買の動機付けには、乗り心地の良さがもたらす消費者にとってのメリットを理解してもらう必要があるということである。同様に、会社説明会や内定者懇親会で自社の競争優位性を説明できればもちろん会社への評価は高まるが、それが入社の決め手にはならない。例えば、自身の成長を大切に考えている学生に対しては、「その優位性によってビジネスの拡大が見込まれ、会社の成長とともに管理職ポジションも増えて、あなた自身の成長のチャンスが大きくなる」ということまでを訴求してはじめて入社への動機付けとなる。
この動機づけにもっとも適した場面は実は面接である。1対1の場で、候補者の過去の経験や価値基準、将来の希望や不安などに注意深く耳を傾け、その候補者が大切にしていることを詳しく理解する。そのうえで、自社の状況を積極的に開示しながら、候補者が願うことを自社で成し遂げていくイメージを具体的に伝える。こうしたコミュニケーションが最も説得力をもった動機づけとなる。面接は評価の場と考えがちであるが、本来、会社と候補者が自然な流れで相互理解を図る場であることをあらためて認識したい。
AIDMAは一貫性を保ちながら研ぎ澄ましていく
一般的に、採用活動におけるAIDMAプロセスのキーポイントは“Motive”であるということを説明してきたが、もちろん会社の状況によって異なる。会社説明会への参加学生を増やす必要があれば“Attention”にフォーカスすべきであるし、面接枠が埋まらない場合は“Interest”や“Desire”に注力する必要があることは言うまでもない。ただ、どのケースでもゴールの“Action”に向かって一貫性のある戦略を立てることが重要になる。特に“Interest”→“Desire”→“Motive”については、相互に関連性をもったテーマを設定し、後半の個別対応のステップに向けて訴求ポイントを徐々に絞り込んでいくイメージで構成することで、効果的な動機づけにつながる。
今年の新卒採用はその時期が大きく変わるため従来のスキームが機能しにくい。一般的には長期化すると予想されることを踏まえ、あらためて自社の採用力強化に向けて戦略を練ることが求められている。