大学生の就職活動/就職活動事例

楠木建氏に聞く!大学生の就活に競争戦略は必要なのか(2ページ目)

さまざまな分野で活躍するプロフェッショナルに若者のキャリアについて聞く対談企画の第二弾。今回はベストセラー経営書『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)の著書である一橋大学大学院教授の楠木建氏に、大学生の就職活動における“競争戦略”の必要性について聞いた。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

キャリア形成は計画や戦略よりも「感覚」を大切にしてほしい

では就職活動における「競争戦略」を、楠木教授はどのように考えているのだろうか。

キャリア形成にとって大切なのは計画や戦略よりも感覚

キャリア形成にとって大切なのは計画や戦略よりも感覚

楠木:私が思うのは、人のキャリアには計画も戦略もないと思うんです。例えば私が研究しているのは製品・サービスの市場での競争戦略で、「長期的に利益をあげる」という明確な目的がありますが、キャリア形成については労働市場での競争戦略なので目的はお金以外にも本人の幸せや仕事のやりがいなど非常に幅広い。だからそう簡単に計画や戦略なんて立てられない。少なくとも私自身のキャリアについていえば、「ストーリーとしての競争戦略」はまったくありませんでした。

小寺:では若者は就職活動の際に会社や仕事は、どうやって選んでいけばよいのでしょうか?

楠木:まずは自分の中にある「好き嫌いの感覚」を大事にして決めて良いのではないでしょうか。自分が何が好きで何が嫌いかわからないなんて言って周りに相談する人がいますが、そんなの嘘です。うどんが好きか、そばが好きかを誰かに相談して決める人なんていないはず。みんな必ず感覚的に「こっちが好き」っていうのはあるのです。それでまず選んでやってみて、後になって違ったなと思えば変えてもいいんです。今の就職活動を見ると、「環境決定的」だと感じます。つまり、自分がどこに行くべきか、どういうポジションになるべきか、を先に考えてしまっている。大事なのは「どこに自分を置くか」ではありません。繰り返しになりますが、自分の「好き嫌い」が一番大事だと思います。どこに行ったって、20年以上かけて築き上げた「好き嫌い」はそう簡単に変わるものではありませんから。


うまくいかない時こそジタバタしないことが大切

小寺:ということは社会人になって、もし仕事や会社が合わないと感じた時は転職するのはありだという考えですね?

楠木:年齢が若ければ若いほど、道を変えてみるのはありだと思います。ただちょっと仕事がうまくいかなくなった時にジタバタするのはよくないですね。そういう時は最低限のことはやりながら、うどんでも食べて布団かぶって寝てればいいんです。私だってそういう時期が2年ほどありました。もちろん授業とか目の前の仕事はやるんだけど、そんなに張り切り過ぎない。そうやって過ごしている期間がある程度あると、機が熟すというか「よし!今だ!」という時がくるんですよね。そういう時はいい仕事が夢中でできる。『ストーリーとしての競争戦略』を書いている時なんか、気づいたら12月31日も仕事をしていた記憶があります。だから機が熟すのを待つためにも、うまくいかない時はうどん食って布団かぶって寝るんです(笑)。


多くの経営者の価値観を知ることができる著書「好き嫌いと経営」

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楠木教授は終始ユーモア溢れる例を出しながら、若者のキャリア形成についての考え方を熱く語ってくれた。それは“ゆるく”肩の力が抜けているかのような感覚で、自然体であった。私は大学生の就職活動のガイドとして 若者の就職を支援するためにキャリアの計画や戦略を立てさせてしまいがちだが、それは逆に無駄な力を入れさせてしまっていたのかもしれないと少し反省した。楠木教授の言葉を借りれば、学生にはもっと自分の好き嫌いと向き合う「感覚」を大切にしながら、やる気が出ない時はうどん食って布団かぶって寝るくらいの心の余裕を持って、自分のキャリアがどのように形づくられていくのかを自然体で楽しんでほしいと思う。


楠木建氏の著書


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