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マンションは今貯水槽ではなく給水方式?水道の仕組み

マンションの水道の仕組みは、これまで貯水槽方式が主流でした。しかし、最近では多くの自治体が貯水槽を経由しない「直結給水方式」を推奨しています。その背景や理由とともに、今後の設備更新を迎える管理組合への助言方法についてご案内します。

村上 智史

執筆者:村上 智史

マンション管理士ガイド

マンションの貯水槽

マンションは今貯水槽ではなく給水方式?水道の仕組みをご存知ですか

マンションの給水方式をご存知ですか?


これまで多くのマンションの給水として採用されてきたのが、いわゆる貯水槽(受水槽)方式です。この方式では、各自治体の水道から供給された水をいったん建物内の水槽に貯めてから、増圧ポンプや高架水槽を介して各住戸に配水しています。安心・安全な水を住戸に供給するために、10トン超の貯水槽の場合には年1回以上の水質検査(残留塩素の濃度を確認)と清掃がそれぞれ法律で義務づけられています。

しかし最近では、東京都、横浜市、さいたま市をはじめ多くの自治体が貯水槽を介さずに給水する「直結給水方式」を推奨しています。
   

直結給水方式が推奨される理由

昨今、各自治体が直結給水方式を推奨するのは、大きく2つの理由があります。

1.貯水槽内の衛生状態への懸念
法律上は、貯水槽の設置者が水質も含め、責任を持って維持管理することになっていますが、必ずしもすべてが良好に維持管理されていないため、貯水槽水道における残留塩素の低下や水質の変化等が問題となっています。また、以前よりも貯水槽内の水が滞留する時間が長くなり、その結果、水中の残留塩素の濃度が低下し、衛生状態が悪化するケースもあります。

この背景には、節水機能の高い水洗トイレや洗濯機の普及、ペットボトル型飲料水の利用機会が増えるなどの生活スタイルの変化、単身・共働き世帯の増加に伴う住戸の滞在時間の減少などが影響しているようです。

2.直結方式で給水可能な建物の増加
近年、増圧ポンプの口径が拡大されるなど、給水装置の技術開発が進んだため、貯水槽を経由しなくとも水道から各住戸に直接給水できるマンションが大幅に増えたという事情があります。さらに、これまでは不可能と考えられていた20階以上の高層マンションでも、増圧ポンプを多段階に設置すれば直結式の給水が可能になっています。
 

直結給水方式と貯水槽方式の比較

しかしながら、直結給水方式が貯水槽方式に比べてすべてが優れているわけではなく、それぞれに長所・短所はあります。

1. 直結給水方式の場合
配水管の圧力だけで給水する「直圧直結給水方式」(概ね3~5階までの低層建物向け)と、配水管の水圧の不足分を増圧ポンプで補う「増圧直結給水方式」(中高層建物向け)の2種類があります。

■長所
  • 蛇口まで水道水が直接届くので、水質に不安がない。
  • 貯水槽の維持点検・清掃が不要になる。
  • 貯水槽の撤去に伴い、スペース跡を有効活用できる。
  • 直圧方式の場合、配水管の圧力だけで給水するため省エネになる。

■短所
  • 事故や災害時等には、即断水状態になるリスクがある。
  • 増圧給水設備を設置する場合は、定期点検が必要になる。

2.貯水槽方式の場合
■長所
  • 事故や災害時等でも、貯水槽内の水を利用可能なため、即断水しない(ただし、停電の際に給水ポンプが停止した場合はその限りでない)。

■短所
  • 貯水槽の点検・清掃、水質検査等の維持管理費、貯水槽の更新費用がかかる。
 

管理組合にどう助言するか?

分譲マンションの長期修繕計画では、築20~25年の時期に古くなった貯水槽を単純更新する予定になっていることが多いと思われます。しかし、技術的には以前に比べて管理組合の選択肢が広がっていることをまず認識すべきでしょう。そのうえで、必ず所管の自治体に事前に相談するとともに、衛生面でのリスクや将来の経済的負担のあり方等を踏まえたうえで検討を進めるよう助言することが必要です。


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