「誤答」からわかる子どもの個性
「聖徳太子って超かわいそうじゃね?」。きっと太っていたから「太子(たこ)」って名前を付けられたんだろうというとんでもない誤解をしていたさやかちゃん。しかし、著者の坪田氏は、そんなさやかちゃんにある可能性を見出していました。それは、名前から人物を想像しようとしていたことです。
歴史では、このように連想する力はとても重要です。知らないことでも、自分なりに想像力を働かせることができる子は、歴史の勉強に向いているとも言えます。一方、歴史が得意ではない子は、想像や連想をしていなかったり、苦手だったりする場合が多いので、人物や出来事のつながりを意識させる教え方が歴史克服のポイントになります。
また、見た目が派手で、素行に問題のあるさやかちゃんですが、仲間を大切にする意識が強く、理不尽なことにはたとえ相手が学校の先生であっても堂々と立ち向かっていきます。ここから想像できるのは、さやかちゃんは人となりをよく見ているということです。この人はどんな人間なんだろうと観察し、その人間性に良くも悪くもぶつかっていく。だからこそ、坪田氏の魅力に惹かれていったのでしょう。
このように、勉強が好きになる子の中には、教えてくれる人がおもしろいからとか好きだからという理由で好きになる子もいるのです。
以上から、ただ勉強を教えるのではなく、子どもの個性を活かした指導が大切だということがわかります。
これは良い塾選びのヒントにもなります。単に受験テクニックだけを教えるのではなく、人としてのあり方を教えてくれ、人間的な成長までも見込める塾が良い塾と言えるでしょう。そんな塾はなかなかないかもしれませんが、人を育てるのはやはり人。塾選びの際は、料金や指導方法だけでなく、塾長や講師の人柄も参考にできると良いですね。
子どもの可能性を信じきる「モンペとギャル」親子の絆
周りから否定的な目で見られることが多かった母娘(親子)ですが、お母さんと娘の絆は確かなもので、終始さやかちゃんを支え続けたのもああちゃんだったのです。実はさやかちゃんが坪田氏の塾で勉強するのに一つだけ問題がありました。それは、訳があって授業料が払えないかもしれないということでした。そんな中、いつやめるかわからない、合格する可能性などほぼ0パーセントに近い状況で、ああちゃんは我が子の可能性を信じて、無駄になるかもしれないお金をかき集めてきたのです。そんな強い絆で結ばれた親子関係が、最終的に慶應義塾大学現役合格という栄冠を勝ち取ることへとつながります。
受験の中でも中学受験は、準備期間や進学後の学校生活など、最も多感な小学校高学年から高校生までの数年間に影響を与える、人生にとても大切な出来事です。
受験前も受験後も、テストの点数や志望校への合格可能性など、数字ばかりに目がいきがちです。しかし、本当に大切なことは、子どものためを思う親の気持ちや、我が子が苦しくなったときやくじけそうになったとき、それを支えてくれる家族がいること、すなわち親子の絆ではないでしょうか。
後悔しない中学受験にするために
受験というと、他の受験生との競争であったり、受験生本人の個人戦あったりというイメージが強いかもしれません。しかし、夢や目標に向かって親子が二人三脚で歩んでいける道のりでもあります。偏差値や合格実績だけでなく、子どもの個性に合った志望校選びや個性を生かした受験対策を心がけると、きっと後悔しない中学受験になることでしょう。■参考・引用文献
坪田信貴著 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話 KADOKAWA