工事風景

大規模修繕には様々なリスクが・・

マンションの長期修繕計画では、概ね12~15年毎に大規模修繕工事が実施される予定になっています。大規模修繕においては、管理組合は多額の費用を負担するだけでなく、下記のようなリスクや不安に直面します。


◆ 工事の品質に問題がないか?
◆ 見積書通りの仕様で工事が行われているか?
◆ 工事後に瑕疵が見つかった場合に、確実に補修してくれるのか?
◆ 工事実施後に、工事業者が倒産したら瑕疵の対応はできないのか?
◆ 工事業者が瑕疵の責任を認めなかったらどうなるのか?

しかしながら、これらのリスクや不安を軽減するための保険商品が存在することは、管理組合はもちろんのこと、管理会社のフロントマンにもあまり認識されていないと思います。

だからこそ、管理組合に助言する専門家としてマンション管理士なら必ず押さえておく必要があります。

大規模修繕瑕疵保険の概要としくみ

大規模修繕瑕疵保険とは、2009年(平成21年)に「特定住宅の瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律」(住宅瑕疵担保履行法)が制定されたのに伴い、国交省が認可した管理組合保護のための保証制度です。

そのしくみと特長は以下の通りです。(詳細は、一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会のサイトをご参照ください)

(1) 国が指定した法人だけが提供できる保険商品
2015年(平成27年)2月現在、国交省に指定された下記の住宅瑕疵担保責任保険法人5社がこの保険を提供することができます。

● 住宅あんしん保証
● 住宅保証機構
● 日本住宅保証検査機構
● ハウスジーメン
● ハウスプラス住宅保証

(2) 工事業者が保険に加入することで、発注者が保護されるしくみ
この保険を利用するには、工事業者があらかじめ上記の保険法人のいずれかに登録したうえで、個別の工事ごとに保険申込みを行う必要があります。それによって、発注者である管理組合が保護されます。

(3) 保険法人による工事検査の実施
保険法人の設計施工基準にもとづき、保険法人の検査員が工事実施前と工事完了後の2回にわたって現場検査を行います。この検査に合格することが保険契約締結の条件となります。

(4) 原則5年間の瑕疵保証付き
保険の対象は、大規模修繕工事を実施した部分のうち、構造部分、防水部分、給排水設備と管路、電気設備などです。
保険期間は、手摺り部等(2年間)を除いて原則5年間です。ただし、オプションとしてタイル剥落や防水、給排水管路などの瑕疵は10年間の延長特約を付けることも可能です。

(5) 瑕疵発見時の責任の所在確認の実施
瑕疵発見時には保険法人の調査員が鑑定を行い、その瑕疵が経年劣化によるものか、施工ミスによるものかを判定します。

(6) 工事業者が倒産した場合にも有効な保険
保険金には、修補費用のほか、調査費用や転居・仮住まい費用等も対象になります。
これらの費用のうち10万円を超える部分の80%相当額が登録した工事業者に支払われます。
【保険金=(修補費用等-10万円)×80%)】

なお、保険期間中に工事業者が倒産した場合には、発注者である管理組合に保険金が100%支払われます。
【保険金=(修補費用等-10万円)×100%)】
したがって、工事業者が保険に加入していれば、冒頭に紹介した管理組合の不安やリスクはかなり軽減されることになります。

管理組合にどう助言するか

この瑕疵保険の保険料は、保険法人や工事規模によって異なりますが、施工金額に対しておよそ0.5%前後の金額(オプションなしの場合)です。実質的に発注者が保険料を負担するとしても、瑕疵対応や工事検査のメリット等を考えれば検討の余地は大きいでしょう。

特に、下記のいずれかのケースに該当する場合には有効だと考えます。
● 工事業者が中堅以下の規模で信用力に不安がある場合
● 責任施工方式による工事で、設計監理する第三者が不在な場合

大規模修繕の工事業者を選定する際には、まずこの保険の存在としくみについて理事会等に説明し、正しく認識してもらうようにすべきです。

そして、この保険を活用したい場合には、施工業者を選定する際に大規模修繕瑕疵保険への加入を要件とすることを薦めるとよいでしょう。


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