喫茶業界のブルー・オーシャンはスターバックス・コーヒー
喫茶業界にも同じような流れが存在します。ドトールコーヒーは、70年代に旧来の喫茶店業をコーヒーの味を落とさずにいかに安価なサービス提供ができるか、というコンセプトで生みだされた新業態でした。しかし、回転寿司同様にドトールのセルフサービスと高回転率による収益モデルのマネは比較的容易で瞬く間に広まり、この業態もまたほどなくレッド・オーシャンと化してしまいます。高付加価値のセルフコーヒーで満席御礼なスターバックス・コーヒー
ブルー・オーシャンに不可欠な企業理念の浸透
こうして見てくると飲食業界におけるブルー・オーシャンは、まず「コロンブスの卵」ともいえる発想に基づく低価格化戦略にはじまります。そして、それがレッド・オーシャン化する中で、価格戦略はそのままに、サービスの質を上げる高付加価値化戦略を付加する流れで登場してくることが分かります。「俺の」シリーズもしかり。長期化するデフレ経済下において各居酒屋チェーンがこぞって低価格路線を打ち出し、それがあたり前の流れになったところで目から鱗の高原価率、高回転の新たなビジネスモデルが生まれたのです。美登利寿司チェーンもスターバックス・コーヒーも、登場から既に10年以上。比較的長きにわたって確固たる地位を保っています。それはなぜか。低価格は比較的容易にマネができるものの、低価格を維持したままでの高品質は一朝一夕にはマネができない。これはこの両立には、物理的なハード条件以上にソフト部分である企業理念的なものの組織内浸透が不可欠であるからとされています。
ブルー・オーシャンは、海外の実例からはたいてい10~15年はその地位を保てるとされています。しかし、その地位とて永久に安泰ではありません。常に次なるイノベーションを模索しながら、突き進むたゆまぬ努力もまた求められるのです。
「俺の」シリーズ、美登利寿司、スターバックス・コーヒー、日本に飲食業界に出現したこれらのブルー・オーシャンたちの次なるイノベーションはいかなるものになるのか。はたまた新たなブルー・オーシャンが別に登場するのか。そんな目で見ていくと、飲食業界はワクワクさせられるおもしろさに溢れているのです。