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ハンドドライヤーは不衛生?正しい手の乾かし方を検証

【医師が解説】外出先のトイレの「ハンドドライヤー」の衛生面が気になる方がいるようです。「ハンドドライヤーは汚い、不衛生」という説がありますが、誤った使い方では細菌拡散の危険も示唆されています。感染症を拡大させないための正しい手の洗い方、乾かし方を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

ハンドドライヤーは衛生的? トイレの乾燥機の危険性

ハンドドライヤーは不衛生?正しい手の乾かし方を検証

みなさんは外出先で手を洗った後、ハンドドライヤーを使用していますか?

駅やデパート、ホテル、ショッピングセンターなど、街中のトイレに設置されている「ハンドドライヤー」。基本的にはヘアドライヤーと同じ原理で、空気を使って乾燥させる機械です。ハンドドライヤーには、高出力の空気(ジェット・エア)で水滴を飛ばし乾燥させるタイプと、暖かい空気で乾燥させるタイプがあります。

ハンドドライヤーは電気を使用しますが、ハンカチを出す必要もなく、ゴミも出ないため、便利でエコだと考えられています。しかし、便利なものにはやはり不安視される点もあるようで、英国リーズ大学はある研究を行い、「ハンドドライヤーの危険性」を指摘しました。

そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行以降、多くの「ハンドドライヤー」が使用禁止になったままです。この理由はなぜか、解説したいと思います。
 

便利なハンドドライヤーが細菌拡散の原因に?

英国リーズ大学が行った研究の実験内容は、通常存在しない乳酸菌で参加者の手を汚染させ、ドライヤーの周りと1メートル離れた場所で細菌を採取するというもの。研究にあたり、高出力の空気で乾燥させるタイプと暖かい空気で乾燥させるタイプ、2つのハンドドライヤーを使用し、比較検討したようです。

結果は以下の通りで、ペーパータオルで拭きとった場合に比べ、ハンドドライヤーで乾かした場合の細菌数が圧倒的に多いことが判明しました。つまり、ハンドドライヤーは手についている細菌を拡散させる恐れがあるということです。
  • 高出力の空気(ジェット・エア)で水滴を飛ばし、乾燥させるタイプ:約27倍
  • 暖かい空気で乾燥させるタイプ:約6倍
本研究ではさらに、ハンドドライヤーを使用した後の細菌の状態も検証しています。細菌は「ドライヤー近くの空気中に15秒間とどまる上、5分以上経っても48%、15分以上でもまだ残っていた」と報告されています。

この研究から、公衆トイレのハンドドライヤーで手を乾かすことによって、自分の手に付いた細菌を広め、かつ他人の手に付いた細菌をもらってしまう可能性があると言えるでしょう。特にトイレの場合、便には多くの細菌が含まれていますから、手洗いが不十分の場合、細菌をうつし、うつされの状況になってしまうことが考えられます。

細菌だけでなく、ウイルスも周りに拡散させる可能性がありますし、風向きによっては水しぶきが顔にかかってしまう可能性もあります。

では、この状況を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか?
 

正しい手洗いの徹底と、ハンドドライヤーの正しい使い方

手洗い

基本は手洗いです。周りの人のためにも大切ですね

ハンドドライヤーで細菌を拡散させないために大切なのは、「とにかく手をきれいに洗うこと」です。手洗いの基本をおろそかにせず、石鹸を手につけて、爪や指と指の間から、手首までしっかりと洗い、流水で洗い流しましょう。正しい手洗いの順序は以下の通りです。
 
  1. 十分に石鹸で泡立てる
  2. 手全体をすり合わせる
  3. 指の間をしっかりと洗う
  4. 爪の間、指先をすり合わせる
  5. 手首までしっかりと洗う
  6. 様々な方面で5回ずつすり合わせる
  7. 流水を使用し、しっかりと洗い流す

しっかりと手を洗うことで、手に付着した細菌をかなり減らすことができます。つまり、一人一人がしっかりと手を洗うことで、細菌が拡がることはなくなり、ハンドドライヤーも安全かつ衛生的な便利なものとして使うことができるのです。ただし、手洗いが不十分ですと、水しぶきに菌やウイルスが含まれていることになります。その水しぶきが付着した箇所を触ることで手が汚染させることもあります。
 

経団連によるハンドドライヤーの利用禁止は解除。再開の動きは?

2021年4月には、経団連が『新型コロナの感染予防の指針』からハンドドライヤーの利用禁止の部分を削除しました。水滴の蒸発後に残るウイルスを含む微粒子(エーロゾル)の発生量を実測・解析した結果、発生量は洗面所で手を洗う時より少なく、ハンドドライヤーを使用した時の感染確率は0.01%という低さだったことが明らかになったためです。そのため、「(トイレの)使用頻度が高い場合は清掃を1日複数回行う」「ハンドドライヤー設備は定期的に清掃する」などの注意点を明記した上で使用するようにした上で、2021年11月現在は利用禁止の部分は削除されています。

手洗い自体は重要ですが、水、栄養、温度は、人間だけではなく、菌やウイルスにとっても必要なもの。そのため、人の汗や体温によって、細菌やウイルスが短時間で増殖する環境が整ってしまいます。手をこまめにしっかりと洗うことで、細菌やウイルスを減らすとともに、汗なども洗い流すようにしましょう。

なお、他の人によって拡がった細菌が付着している可能性は否定できないため、ハンドドライヤーそのものには触れない方がよいでしょう。基本的には、ハンドドライヤーは非接触であり、ペーパータオルが無く、ゴミ箱もないときには、手を乾かすには有効な方法の1つです。

現実的には難しいかもしれませんが、医学的な安全性を考えるのであれば、前の人が使ってから15分以上過ぎてからの使用が望ましいです。

ハンドドライヤーのような便利な器具は、適切に使用してこそ効果があるとも言えます。

手洗いは病院内での感染症の予防に、最も重要で基本的な方法で、医療機関では、こまめに手を洗い、ハンドドライヤーではなく、ペーパータオルを使用して手を乾かします。その他、日常的な衛生管理の落とし穴については、「握手で感染リスク増!医師推奨は「グータッチ」」も併せてご覧下さい。

ハンドドライヤーはエコとはいえ、医療機関レベルの安全性を考えるなら、ペーパータオルを使用して手を乾かします。そして、アルコール消毒する手指衛生になります。

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