生肉を規制しなければならない理由
生のレバーは食中毒の危険性大です!
生の肉には、食中毒の原因となる様々なものが含まれています。食中毒の知識なしに生肉を食べるのは大変危険です。生肉で起こる食中毒について解説します。
生肉が原因で発症する食中毒とは
生肉が原因で発症する食中毒としては以下のようなものがあります。- カンピロバクター
- サルモネラ
- 腸管出血性大腸菌(O-157、0-111など)
- 寄生虫
食中毒の感染経路や特徴、症状、予防法について考えてみましょう。
生肉が原因の食中毒の感染経路・特徴・症状・予防法
- カンピロバクター
■感染源・感染経路
鶏、豚、牛などの家畜、犬や猫などのペット、野鳥や野生動物などの腸管内に生息している菌です。血液やリンパ液を通じて肝臓内にも分布します。ペットや野鳥から水が汚染されることで感染することもあります。
鶏の保菌率が50%と高いのが特徴です。原因は鶏肉が多く、鳥刺しなどの生食や半生での摂取、焼き鳥、バーベキューでの加熱不十分な事例が考えられます。また、牛などの肝臓(レバー)では、内部にも高率にカンピロバクターが存在しています。
■主な原因食品
生肉、鶏肉、生レバー、サラダ、井戸水、生水など
■潜伏期間・症状
潜伏期間は2~7日と比較的長いのが特徴です。発熱、頭痛などの「かぜ症状」ではじまり、腹痛、下痢をきたします。潜伏期間が長く、発症した時には原因食品が保存されていないことも多く、原因が特定できないこともよくあります。
■予防法
熱や乾燥に弱いので、汚染された食品でも十分加熱すれば食中毒を起こすことはありません。牛などのレバーでは内部にも病原菌が存在します。生で食べるのは危険です。
- サルモネラ
■感染源・感染経路
動物やペット、人の腸管内に存在します。保菌動物の糞便から土や川の水が汚染し、農作物を汚染することがあります。鶏肉の汚染率は20~30%と高率です。生卵、豚肉、レバーや菌が付着した手指やまな板、包丁などの調理器具を介しても食中毒を起こします。
■主な原因食品
食肉、鶏肉、卵を使った食品、生レバーなど
■潜伏期間・症状
潜伏期間は6~72時間。発熱、下痢、腹痛、嘔吐を引き起こします。発熱が高頻度に見られる点が特徴です。菌血症や敗血症、乳児では髄膜炎などの合併症をきたすこともあります。サルモネラ菌はチフス菌に似た腸管組織侵入能力をもっており、免疫力の低下した人は合併症をきたしやすいので注意が必要です。
■予防法
肉や卵は購入したらすぐに冷蔵庫に入れ、食べるときは十分に加熱しましょう。肉の菌は75℃1分の加熱で死にますが、乾燥には強く、「バリバリイカ」などの乾燥イカ菓子から感染した例もあります。
- 腸管出血性大腸菌
■感染源、感染経路
通常の大腸菌は問題となりませんが、一部の大腸菌は人体に悪影響を起こすことが知られており、これを「病原性大腸菌」と呼んでいます。腸管出血性大腸菌は病原性大腸菌の一つです。主に牛の腸にいる細菌で、食肉や糞便で汚染された水や食物を介して感染します。
■主な原因食品
ひき肉、ハンバーガー、生レバー、汚染された野菜など
■潜伏期間・症状
潜伏期間は10~15時間。腹痛、水様下痢、血便などの激しい症状をきたします。抵抗力の弱い子どもや高齢者は、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症を起こして死亡することもあります。
■予防法
75℃1分以上の加熱をします。焼肉などでは「生肉をつかむ箸」と「食べる箸」は別の物を使用しましょう。ハンバーグや成型肉のサイコロステーキなどは、生焼けでは感染の危険性があります。内部まで十分に火を通すことが必要です。 - 寄生虫
■感染源、感染経路
豚のほか、シカやイノシシなどの野生動物にも寄生虫が存在します。牛は比較的寄生虫が少ないとされていますが、レバーなどの内臓は危険です。
■主な原因食品
豚、イノシシ、シカ、クマ、淡水魚、淡水性カニ類、サケ、サバ、イカ、汚染された水や野菜など
■潜伏期間、症状
潜伏期間は、数日から数週間と寄生虫により異なります。腹痛や下痢をきたすものから、皮膚や脳、脊髄の中まで入り込んで重い症状をきたすものなど様々です。「ブタの生き血」が大好物だった男性が、脳内から寄生虫が19匹発見されたという例が中国で報告されています。
■予防法
獣肉は生で食べてはいけません。ゲテモノ食いも危険です。魚の生食もアニサキスにあたる可能性があります。
ジビエなどの生肉によるE型肝炎も増加
ジビエとして好まれるシカの肉にもE型肝炎ウイルスが存在します
E型肝炎に感染した場合、すべての人が肝炎を発症するわけではありませんが、発症した場合は黄疸や食欲不振、発熱などの症状をきたします。E型肝炎の治療は状況に応じた対症療法しかなく、肝不全となり集中治療室での高度医療が必要になることもあります。
以上のように、生肉には細菌や寄生虫感染、肝炎などのリスクがあります。いずれも十分に加熱することで予防は可能です。