マンションの修繕積立金 75%の管理組合で国の目安を下回る

「マンションは管理を買え!」―― マンション購入時の指針として、誰もが耳にしたことがある言葉でしょう。マンション管理の重要性を指摘した格言です。

そのせいか、中古マンション購入の指南本を見ると事前に検討物件の管理状況を確認するよう書かれており、物件見学時には「エントランスや廊下にゴミが落ちていないか」「駐輪場やゴミ置き場は整理整頓されているか」「外壁にヒビが入っていないか」など、具体的な確認ポイントが記されています。

しかし、こうした“表面上”の管理状態を目視しただけで、そのマンションの管理が適正に運営されているかどうか、全体像を把握するのは困難です。なぜなら、「上下階での騒音トラブルは発生していないか」「定期に理事会は開催されているか」、さらに「修繕積立金に不足はないか」といった“内面的”な問題までは確認できないからです。

日本経済新聞社が全国のマンションストックの1割に相当する1万4000棟の修繕積立金について、積立基金の実勢平均額を加えて独自に試算・分析したところ、約1万500棟が国の目安を下回っていることが分かりました。調査した管理組合の75%で修繕積立金が不足していたのです。

国の目安とは、国土交通省が2011年に策定した修繕積立金の水準を定めた指針を指します。新築時から30年間(築30年までの間)に必要な修繕工事費の総額を、30年均等で積み立てた場合に必要となる毎月の積立金額を試算したのが国の目安額です。15階建て未満のマンションでは1平方メートルあたり月額178円~218円、20階建て以上では同206円を必要額の目安としています。

修繕工事のイメージ写真

75%の管理組合で不足していることが判明。修繕積立金不足はマンションの資産価値を悪化させかねない。。


いうまでもなく修繕積立金の残高不足はマンションの資産価値に悪影響を及ぼします。修繕工事が計画的に実施されず、適時・適切なメンテナンスが遅延すると、建物の劣化・老朽化を加速させます。これでは快適なマンションライフが実現するはずもありません。

それだけに、すでに分譲マンションにお住まいの人、あるいは中古マンション購入を検討中の人も含め、修繕積立金口座に必要な残高があるか、また、毎月徴収される修繕積立金の金額は適正水準かどうか、丹念に確認する必要があります。

そこで、本稿では(1)なぜ、多くの管理組合で修繕積立金が不足するのか、(2)積立金が足りない場合、どう対処すればいいのか?―― この2点について考察を深めることにします。


修繕積立金が不足する2つの原因とは?

それでは、1番目のどうして多くの管理組合で修繕積立金が不足するのか、この点から考えてみることにしましょう。

最も可能性が高いのが「当初の設定金額が低すぎた」という理由です。マンション管理の世界では「修繕積立金は管理費の1割」という設定方法が依然として残っています。たとえば管理費が月額1万5000円とすると、機械的に修繕積立金は同1500円と算出されるのです。

本来、修繕積立金は長期修繕計画に基づいて設定されなければなりません。いつ(時期)、どこを(部位)、どのような工法で修繕し、その費用がいくらかかるのかを時系列にして落とし込んだ計画が長期修繕計画です。

この長期修繕計画の実効性を担保するためには、修繕積立金の金額設定は明確な根拠を伴っていなければなりません。にもかかわらず“1割ルール”に従って機械的に金額設定されていては、残額が不足するのも当然です。「修繕積立金は安ければ安いほどいい」といった錯覚からは抜け出さなければなりません。

さらに、修繕積立金が不足する2番目の理由として、「滞納者の発生により、計画通りの徴収ができない」ことも挙げられます。国土交通省の「マンション総合調査(平成25年)」によると、調査対象となったマンションの37%の管理組合で「滞納者がいる」と回答しています。

その一因が居住者の高齢化です。今では区分所有者の2人に1人(50.1%)が世帯主年齢60歳以上という高齢化に見舞われています。世帯主年齢の偏在が積立金不足に拍車を掛けているのです。


修繕積立金不足を解消する5つの方法を解説

修繕積立金不足を解消イメージ写真

修繕積立金は足りないでは済まされない。「事前」と「事後」2つの対策で不足解消を目指してほしい。


そこで、修繕積立金が足りない場合、管理組合はどうすればいいのか?―― 以下の5つの対処法が考えられます。

  1. 大規模修繕工事の直前に一時徴収する
  2. 毎月の修繕積立金の金額を値上げする
  3. 工事費用を金融機関から借りる
  4. 予定していた修繕工事の時期を遅らせる
  5. 修繕積立金を運用する

足りない以上、どうにかして不足を補う必要があるわけですが、予定している修繕工事まで時間的余裕がなければ、一時金を徴収あるいは金融機関から借り入れるしかありません。他方、一定の余裕があれば毎月の修繕積立金を値上げして対応します。

ただ、区分所有者からの反対は必至です。しかし、避けては通れません。どちらの場合も総会決議を要しますので、総会を開催して区分所有者の納得を得たうえで実行する必要があります。

にもかかわらず、賛成が得られなかった場合は予定していた修繕工事の時期を遅らせるしかありません。決して望ましいことではありませんが、仕方ないでしょう。それだけに、管理組合は「事後対策」ではなく「事前対策」に重点を置いた積立金の資金計画が欠かせません。

その一助(事前対策)となるよう、2000年から住宅金融支援機構では「マンションすまい・る債」の募集を開始しています。マンションすまい・る債とは、管理組合が修繕積立金を計画的に積み立てられるよう設計された10年満期の利付き債券です。

お金の性格上、修繕積立金は元本割れが許されないため、大多数の管理組合は銀行の預金口座に預けっぱなしにしています。マンションすまい・る債の2017年度の募集利率は0.152%(税引き前)です。10年満期の新規国債の利回りが0.05%(2018年4月募集分)ですので、国債よりも利息は高く、積立金不足の解消に一役買います。「運用」という視点も対策の1つに加えておくといいでしょう。

近年は分譲マンション業者が新築物件の引き渡し時に「修繕積立基金」を区分所有者から徴収するケースが一般化しています。これも積立金不足の事前対策といえます。

繰り返しになりますが、適時・適切な修繕工事の実施があって初めて、快適なマンションライフが実現します。管理組合には修繕積立金を不足させない努力が欠かせません。

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