メキシコ、台湾、ベトナム…濃厚で美しい料理の世界
『赤い薔薇ソースの伝説』(1992年度作品)
メキシコの農家。ティタ(ルミ・カヴァソス)とペドロ(マルコ・レオナルディ)は愛し合っていたけれど、母親に結婚を反対され、ペドロはティタの姉と結婚をしてしまいます。結婚式の日、ティタはペドロから薔薇の花束を渡されます。彼女はその薔薇でソースを作りペドロに食べさせると、二人は触れ合わずとも性的に結ばれ……。
メキシコ料理を楽しむというより、魔法の料理を堪能するという感じでしょうか。薔薇ソースがエロティックな妄想(?)を呼ぶという設定がいいですね。ウエディングケーキを食べた人が涙を流したり、性的に興奮したり……。ありえないけど面白い!不思議なソースをベースにしたハーレクインロマンス風のラブストーリー。スピリチュアルな力も感じる、ちょっと風変わりなメキシコ映画です。
監督:アルフォンソ・アラウ 出演:ルミ・カヴァソス、マルコ・レオナルディ、レヒーナ・トルネ、ヤレリ・アリスメンディ
『祝宴!シェフ』(2013年度作品)
お祝い事があると屋外で宴会を行う台湾。その宴会には総舗師(ツォンポーサイ)というおもてなしのプロである料理人が料理を作ります。主人公はその総舗師の娘(キミ・シア)。彼女は料理が苦手だったけど、夢破れて実家に帰ったとき、亡き父のレシピを見つけて、宴会料理に挑戦することになるのです。
身近な台湾料理から素晴らしいデコレーションの美しい台湾料理まで様々な料理を堪能しながら、宴会料理に挑むヒロインと、彼女をとりまく個性的な人々との明るく前向きなストーリーが楽しい!
ハイライトは、全国宴席料理大会。「料理の鉄人」さながらの料理対決は見応えがあります。しかし、おいしそうな台湾料理と同じくらい魅力的なのが、継母演じるリン・メイシウの豪快なオバチャンぶり。関係ない人も巻き込むパワフルなオバチャンには大爆笑です。
監督:チェン・ユーシュン 出演:リン・メイシウ、トニー・ヤン、キミ・シアほか
『青いパパイヤの香り』(1993年度作品)
サイゴンのある一家に奉公にやってきた10歳の少女の成長を綴った物語。特に事件が起こるわけでもなく坦々と過ぎ行く日々を少女の成長を照らし合わせて描いた、ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督作です。
ユン監督の映画は映像が美しく、セリフは少なく、視線や振舞や表情で登場人物のうつろう心を描くといった印象なのですが、これはまさにそれ。奉公に出された少女といっても、孤独に苦しんだり、悲しみをこらえたりというしんどさがなく、軽やか。そんなヒロインの生活を彩るのが料理なのです。ベトナム料理の数々がもうおいしそうで、この映画見たあとは、ベトナム料理店を探してしまうでしょう。
監督:トラン・アン・ユン 出演:トラン・ヌー・イェン・ケー、リュ・マン・サン、グエン・アン・ホアほか
※というわけで、グルメ映画をピックアップしてみました。今回はグルメ映画の定番の『かもめ食堂』など飯島奈美さんの料理が登場する映画はあえてハズしました。ほかにもいろいろあるよ~というのを伝えたかったので。食欲のないときに見ると、ちょうどいいかもしれませんね!