KISSが目指した「悪趣味なビートルズ」

「歌舞伎よろしく白塗り化粧で派手にメイクし、鎧のような衣装に身を固めた4人組のロックバンド」と言えば、ロックをなじみが薄い人でも「あー、見たことある」と思われるのではないでしょうか。彼らの名前はKISS。デビューは74年。昨年40周年を迎えた、まさに老舗ロックバンドです。

解説

チケットはすべてソールドアウトだった13年のKISS来日公演

KISSがデビュー当時から他のバンドとは一線を隔する印象を与えていたのが、その奇抜なメイクでした。実はこのメイク、単に奇抜さで目を引こうとしたのではなく、4人のパーソナリティを象徴したキャラクターとして表現されたものだったのです。各キャラクターは、悪魔の化身、愛の戦士、キャットマン(獣人)、宇宙人という設定がなされ、その後メイクそのものが商標登録されるなど徹底的な管理がされてもいます。コンセプトがしっかりしているからこそ、ゲテモノとして短命に終わることなく長きにわたり人気を博してきたと言えるのです。

彼らがヒントにしたのは、意外にもポピュラー音楽界の王者ビートルズでした。ビートルズはその音楽性もさることながら、4人が代わる代わるリードボーカルを取るスタイルや映画制作などを通じて、当時他のバンドにはなかったメンバーの個性を立たせることで音楽以外の面からも一層人気を盛り上げるビジネス・モデルを作ったのです。KISSはデビューの段階から彼らを意識的に真似することでキャラクターありきのバンドづくりをおこない、メイクで個性を立たせメンバー曰くの「悪趣味なビートルズ」を目指したのです。

キャラクタービジネスと「ロック界のディズニーランド戦略」

キャラクター戦略と共にKISSを支えてきたのが、そのステージにおける飛びぬけたエンターテイメント性です。4人4様のド派手な衣装に身を包み、火を噴き、血を吐き、宙を舞う。ステージ上では、火柱が上がりマグネシウムの閃光が炸裂する。テレビ放映された77年の初来日ツアーで、そのステージは伝説になりました。彼らのライブは実物のキャラクターとの出会いと非日常体験の場であり、KISSのビジネス戦略はマーケティング的観点で見れば「ロック界のディズニーランド戦略」であると言ってもいいでしょう。

メイクと派手なステージ構成で世界最強のエンタメ・バンドとなったKISSは、キャラクターのアニメ化やメイクをオマージュしたグッズの販売などを通じて、他のバンドには類を見ないビジネス展開を見せます。キャラクターと共にKISS人気の一翼をなっているのが、デビューの時点ですでに確立されていた「KISS」のロゴ・マーク。ローリング・ストーンズの「ベロマーク」にも匹敵するKISSグッズは、定番のTシャツやキャップ等ファッショングッズや文房具、ランチボックス、トイレットペーパー、果ては話題を呼んだKISS肉まんに至るまで、とにかく幅広い。今やKISSブランドは、4人のキャラクター・ビジネスと相まってKISSファンにとどまらない購買層を広げ確固たる地位を確立しています。