狭小住宅の建築に積極的に取り組むハウスメーカー
一般的に狭小住宅というのは建築設計事務所、いわゆる建築家が得意にしている分野ですが、近年は大手ハウスメーカーも積極的に取り組んでいます。中でも、旭化成ホームズは元々、二世帯住宅など都市型住宅に定評があるハウスメーカーで、近年は狭小住宅の建築にも力を入れています。例えば、商品のラインアップをみてみると
「SOFIT(ソフィット)」
「terra craft(テラ クラフト)」
「STEP BOX クロスフロアのある家」
などが、狭小住宅ニーズに対応するものです。
2014年11月に、私は旭化成ホームズの住宅総合技術研究所(静岡県富士市)にあるこれらの商品を含むモデル棟を見学・取材してきましたので、そこに表現されていた工夫をこの記事で紹介していきます。
モデル棟の具体的な中身を紹介する前に、まず狭小住宅でどのような問題が発生しがちなのかについて整理しておきたいと思います。大きく以下のように整理できるのではないでしょうか。
- そもそも居住スペースに限りがある
- そのため加齢配慮などに無理が出やすい
- 採光や通風の確保が難しい
- プライバシーの確保が難しい
- 密集地に建つことが多く火災への対策が必要
狭小の度合いにもよりますから、問題はこれだけにとどまるとは言い切れませんが、一応このくらいはありますよ、ということでご理解ください。
さて(1)について。狭小住宅ですから当然ですが、居住スペースに限りがあり、LDKや寝室といったメインの居室以外の場所の確保が非常に難しくなります。そのため、○LDKなどといった従来の間取りでは対応が難しくなります。
そこを、「テラ クラフト」(3階建て)では、1階と2階、3階のそれぞれに段差を設けており、これによりあたかも6つの空間があるようなイメージとなっていました。例えば、1階は段差が下がった土間キッチンと、その奥に一段上がったLDKがあるという感じです。
開放感とこもり感にメリハリを付ける設計
つまり1階といっても床の高さや天井の高さが異なるのです。これにより空間の印象に変化が生まれます。1階LDKは2階天井までの吹き抜けとなっており、白い内壁と相まって、通常はLDKを配置しない北側でありながら明るく居心地の良い空間に。なぜ、このような設計にするかというと、住む上で必ずしも同じ天井高である必要は無いからです。例えば、寝室というところはある意味寝るための場所と考えれば、例えば天井高が2メートルを超える必要はないという考え方もあるからです。
逆に「籠もり感」がある方が良いという人もいるでしょう。つまり「開放感」のある場所、「こもり感」がある場所という風にメリハリを付けることで、狭い居住スペースの中に様々な居場所を作ることができるわけです。
この建物では、中にドアがほとんどなく、階段も蹴込み板を設けない「オープン(シースルー)階段」としていましたから、建物内のどこにいても家族の雰囲気が感じられます。
ちなみにこのような設計は大変難しく、旭化成ホームズでも構造の強化などを行った上で商品化をしたといいます。また、設計スタッフの中でも高い技量がないとこのような設計は難しいそうです。
狭小住宅については、概して高度な技術とスキルが求められるのですが、より快適性を求めるためにはさらにハイレベルな工夫が求められるということです。
次のページでさらに狭小住宅の建築にあたっての問題解決の手法を探っていきます。