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都市部の狭小住宅 ハウスメーカーもここまでできる(2ページ目)

一般的に設計事務所(建築家)が建てるものと思われている都市型狭小住宅。近年はハウスメーカーも取り組みを積極化しています。この記事では旭化成ホームズの建物を事例に、「ここまでできる」というところを紹介します。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

次に(2)の加齢配慮について。元来、狭小住宅、中でも3階建ての場合は、上下階を上り下りすることが多くなります。それは若い時は問題ないのですが、年齢を経るごとに身体的な負担になります。旭化成ホームズでは、そのあたりについても解決策を提示していました。

身体機能の衰えを予測しエレベータ設置スペースを用意

具体的には「ソフィット」という商品で、1階の子ども部屋の収納スペースと2階の収納スペースを同じ位置に上下に配置することで、そこに将来、エレベータを設置することが想定されていました。

エレベータ準備スペース

「ソフィット」の2階の収納。下階の子ども部屋と同じ位置にあり、ここにコンパクトサイズのホームエレベータを設置するとされている(クリックすると拡大します)

この商品は2階リビングを提案したもの。2階リビングは都市部で採光や通風を取りやすい快適な空間を実現しやすいのですが、これも将来的に階段の上り下りが身体に負担となるケースがあるというデメリットがあります。

それに対して、将来的にエレベータを設置できるよう配慮しておくというのは、よく考えられたプランだと思います。このあたりは大手ハウスメーカーならではの提案。3階建てについても参考になるアイデアではないでしょうか。

ちなみに、旭化成ホームズは箱形のフラットな屋根による建物のイメージが強いですが、この商品は軒の出がほとんどない寄せ棟屋根の建物です。これにより、箱形の建物と同様に隣家との境界に近接し、敷地を有効活用できる建物配置ができるようになっています。

(3)の採光や通風の工夫が最も良く表れていたのが、「STEP BOX クロスフロアのある家」。こちらは、「X-SHIFT(クロスシフト)プランニング」という手法を用い、「階」というより、「層」で住空間を構成していました。

こちらも「テラ クラフト」と同様に床に段差を設けるわけですが、イメージとしては1層から4層までを交互に配置。大まかですが1層目にワークスペース、2層目には子ども部屋、3層目にリビング、4層目にダイニングキッチンがあるという感じです。

こちらも間仕切り壁やドアがほとんどない空間ですから、1階に子ども部屋やワークスペースがあっても、2階のリビングから家族の気配を感じ取りやすくなっています。

層や段差を用いることで採光や通風にもメリット

3層目(南側)のダイニングキッチンスペースと1層目(北側)の子ども部屋には大きめの開口(窓)が配置され、そこから光や風を取り入れるわけです。中でも3層目の窓は通常の建物の2階部分に配置されていますから、外部からの視線も気になりません。

外に開く

都市部でも様々な工夫により「外に開く」ことで、明るく自然を感じられる居住空間とすることができる(クリックすると拡大します)

要するに層にする、あるいは段差を設けることで、プライバシーを確保しながら快適な住空間を実現できるというわけです。このようなことも、近年のハウスメーカーは狭小住宅の提案で行っているのです。

このほか「ソフィット」では、トップライトを屋根に設置することで、日照を建物内に取り込む工夫も。この建物は小屋裏空間が実現できるのが特徴で、トップライトはここに配置されていました。

また、プライバシーを確保しながら、明るく風通しの良い空間とするために、格子状のルーバーも採用されていました。最近、一般的な住宅にも良く取り入れられるものですが、この建物では外観デザインを損なわないよう、専用の部材を採用していました。このあたりが(4)の「プライバシーの確保」についてです。

最後に(5)の「火災への対策」ですが、これは旭化成ホームズのオリジナル外壁材「ヘーベル版」が効果を発揮。阪神・淡路大震災では、建物の焼失を免れるなどこれまでに多くの実績があります。

この記事をまとめると、都市部の狭小住宅を建築する際、耐火性能といった基本性能に加え、狭くなりがちな居住スペースを豊かに活用するための設計提案、さらにはそれを可能とする構造強度といった、様々な検討が必要になるというわけです。

もちろん、外観を含めスタイリッシュさも大切。それは都市型住宅ならではのこだわりとなるからです。今回の取材を通じて、改めて「ハウスメーカーでもここまでできるんだ」と再認識させられました。
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