『ボンベイドリームス』では海外版にはないダンスも?
『ボンベイドリームス』
「今回は“マサラ・ミュージカル”ということで、初めて耳にするジャンルでどういうものなのかなと思ってたけど、ブロードウェイ版を観たらダンスがとにかく新鮮だし、独特のエキゾチックな魅力が前面に出ていて、こういうものをやるのかと明確になりました。難しさもありつつ、(演出の)荻田(浩一)さんがどういう舞台を作り上げていくのか、楽しみにしています」
――加藤さんが演じるのは主人公の青年アカーシュが住むスラムの開発に関わる弁護士、ヴィクラム。私がロンドンで観た時のオリジナル・キャストもすこぶるセクシーな方(映画『カーマ・スートラ』でヒロインの相手役を演じたラモン・ティカラム)が演じていましたが、ロンドン版でのヴィクラムの造型はとっても分かり易い“悪い奴”でした(笑)。
「基本的にはそうですね(笑)。僕の役割としては、都市開発にスラムの人たちが反対する中で、間を取り持ちながらも実は……ということで、もちろん悪い役ではあるんですけど、僕の中では完全な悪ではなくて、やはり彼は彼なりの信念があって動いてると思うので、彼の思いもちゃんと描きたいなと思います」
――深みのある役になりそうですね。
「そうしたいなと思いますね。悪役として完全に作りこむこともできると思うんですけど、ちょっとでも救いがあったほうがいいかなと僕は思うんですね、やるからには。そこは荻田さんと相談する部分もあると思うんですけど、浦井(健治)さん演じるアカーシュには目指すところがある、ヴィクラムにも場所は違えど目指す場所がある。そこの部分をちゃんと浮き彫りに描ければ、ちょっと違う見方もできるのかなと思います」
――これまで、インド文化と接点は?
「インドに実際行ったことはないけれど、映画の『ムトゥ 踊るマハラジャ』とかはもちろん観ています。そういった作品で描かれているお祭り騒ぎ的な楽しさも今回の舞台にはありますから、それはそれでちゃんと描きながらも、ただのエンターテインメントには終わらず、筋もしっかり見せたいなと思いますね」
――ロンドン版では終盤にヴィクラムさんも少しだけ踊っていましたが……。
『ボンベイドリームス』
歌に関しては、インドの旋律に日本語の歌詞を自然に乗せられるかどうかが課題です。その国独自の音楽って、(外国語で歌うと)乗る言葉と乗らない言葉があると思うんですよね。海外のメロディに日本語を乗せるのは難しいところがあって、それがインド独特の音楽となるとなおさらだと、歌稽古で感じました。インド独特のフェイクだとか、一歩間違うと日本のこぶしになってしまうんです。きっと、“音”でとらえるのではなく、“気持ちで歌い上げる”ことが出来れば正解なのかな。とはいえまずは音を体に入れ込まないとそれが自然なものとして出てこないので、まずはその作業だなと思っています」
*次ページで加藤さんのこれまでをうかがいます。デビュー後まもなく引退してしまった彼を、もう一度奮い立たせたものとは?!