ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.12 加藤和樹

ミュージシャンとして活動しつつも、近年は『ロミオ&ジュリエット』(13年)のティボルト、『レディ・ベス』(14年)のロビン役など、大作ミュージカルでの活躍が目覚ましい加藤和樹さん。15年は『ボンベイドリームス』に始まり、春には主演舞台『タイタニック』が開幕します。さらなる飛躍が期待される加藤さんに、舞台への思いをとくとうかがいました。*観劇レポートを掲載しました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

加藤和樹undefined愛知県生まれ。05年に『ミュージカルundefinedテニスの王子様』に出演して脚光を浴び、06年にCDデビュー。歌手活動と並行して俳優、声優としても活躍し、映画『仮面ライダーNEXT』TVドラマ『仮面ライダーカブト』舞台『罠』、『真田十勇士』、『コーヒープリンス1号店』『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』等に出演している。(C)Marino Matsushima

加藤和樹 愛知県生まれ。05年に『ミュージカル テニスの王子様』に出演して脚光を浴び、06年にCDデビュー。歌手活動と並行して俳優、声優としても活躍し、映画『仮面ライダーNEXT』TVドラマ『仮面ライダーカブト』舞台『罠』、『真田十勇士』、『コーヒープリンス1号店』『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』等に出演している。(C)Marino Matsushima

*5頁に『タイタニック』観劇レポートを追記しました!*

97年にブロードウェイで開幕したモーリー・イェストン作詞・作曲のミュージカル『タイタニック』。1912年のタイタニック号沈没事件を題材に、乗客乗員それぞれのドラマを描いた同作が、スペクタクルよりも群像劇としての性格をより鮮明にしているとして高く評価された2013年ロンドン版の演出家、トム・サザーランドを招聘し、日本人キャストによって3月、上演されます。

そのオーディションで来日したサザーランドが、物語の中心人物であるタイタニック号の設計士アンドリュース役にと指名したのが、加藤和樹さん。2013年の『ロミオ&ジュリエット』ティボルト、翌年の『レディ・ベス』ロビン、そして年明けの『ボンベイドリームス』と進境著しい方ですが、今回の主演は想定外だったのだとか。まずはその経緯からうかがいましょう。

想定外だった『タイタニック』の主役


――今回の『タイタニック』アンドリュース役は、オーディションで決まったのだそうですね。

「はい。特定の役のオーディションではなく、まずは歌を聞かせてほしいということだったので、昔演じたミュージカルの曲を歌いました。その時、サザーランドさんに言われたのは“(曲として)クラシカルに歌い上げるのではなく、お芝居として役の気持ちで歌っていただきたい”ということ。“うまく歌うのではなく、中から湧き出てくるように歌って欲しい、加藤さんはおそらくそれができる”と言われて、できるかなと思いながら歌わせていただきました。主演ということは予想だにしていなかったので、アンドリュース役に決まったと聞いた時には驚きました」

――乗員乗客それぞれのドラマが描き出された本作の中で、アンドリュースはどんな人物ととらえていらっしゃいますか?

「彼はタイタニック号の設計技師で、誰よりもその処女航海を楽しみにしていたと思います。だからこそ、沈没を防ぐための対策を講じきれなかったことに後悔を残す。パニックの中で乗客、乗員たちの醜い部分も見てしまって、こんなはずではなかったのに、もっとこうしていれば違ったのではないかと悔やむのですが、起こってしまったことを変えることはできない。そこで自分は何が出来るのかと思い直し、女性や子供たちを優先的に救助ボートに乗せていきます。まっすぐな人なんだなと思うし、すごく人間臭い人物なんじゃないかなと思いますね」
『タイタニック』

『タイタニック』

――船がパニックに襲われてゆくなかで、アンドリュースは冷静に状況を見わたし、語っています。

「本当は一番パニックになってもおかしくない人物だと思うんです。緻密な設計図を、それこそ何百回も見直しながら書いたのに、それでも設計は完璧ではなく、弱点はあった。どうして沈没などという事態になってしまったのか、と誰よりも叫びたいかもしれない。一番悔しい思いをしているだろうけれど、彼の中の冷静な部分が、残された道で何が出来るかと考えさせるんですね」

――作品全体が描き出しているものは何だととらえていらっしゃいますか?

「タイタニックの事故については、氷山にぶつかって沈没したということは誰もが知っているけど、そこに乗っていた人たちが何を感じて、最後に何を残したのかということについては、あまり知られていないと思います。(豪華客船の処女航海という)ある意味天国から、地獄に突き落とされた時の人間の醜さであるとか、だからこそ見えてくる美しさ、残される者への愛だったりといった“人間の本質”を、この作品は描いているんじゃないかと思います」

――科学万能を信じる人類への警鐘的な作品にも見えますね。

「この世に完璧なものはない、と僕も思っています。人は完璧であれば“これでいける”と自信を持つかもしれないけれど、不完全だからこそ愛おしく思えたりするもの。そういうことから一人一人の物語を描いていければと思います。とにかく登場人物の一人一人にドラマがあるので、それが一つに繋がれるような作品になってゆくといいなと思います。僕自身のテーマは、やっぱり(ハートをおさえて)ここですかね。心と言うか、魂と言うか。曲が難しければ難しいほどちゃんと歌わなきゃと思いがちだけれど、作品世界の中でしっかり生きて、その場で生まれた感情を歌に、演技に素直に乗せられたらと思っています」

*次ページでは1月末から出演するもう一本の新作『ボンベイドリームス』についてうかがいます!
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