2月20日~3月11日=シアター・クリエ、3月13~15日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、3月21~22日=中日劇場、3月24日=福岡サンパレスホテル&ホール
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
【見どころ】
“トニー賞の授賞式のように楽しくて、パリ・コレクションに負けないくらいお洒落”というキャッチフレーズがぴったりの、スペシャルなミュージカル・コンサートが帰ってきました。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
昨年の第一弾では、ミュージカル界を代表する華麗な顔ぶれが話題沸騰となり、「観たかったのにチケットが買えなかった」と涙を呑んだ方も多かったようですが、今回もドリーム・キャストが勢揃い。五十音順で女性陣が大塚千弘さん、涼風真世さん、保坂知寿さん、男性が泉見洋平さん(東京公演のみ)、岡田浩暉さん(東京、大阪、名古屋公演のみ)、今拓哉さん、田代万里生さん、中川晃教さん(東京、福岡公演のみ)、吉野圭吾さん、山口祐一郎さんと、いずれも帝国劇場等で大役を務めて来たスターばかりです。
ナンバーやキャラクターに合わせて選ばれたスタイリッシュな衣裳が目を楽しませるいっぽうで、選曲には事前に寄せられたリクエストも反映されているそうなので、「そうそう、この人のこの曲が聴きたかった!」と感涙にむせぶ方もいらっしゃるかも。逆に上演時とは異なるスターが歌うことで新たな魅力が引き出されるナンバーも用意されており、初心者からコアなミュージカル・ファンまで、幅広い層が楽しめるコンサートとなりそうです。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
【観劇レポート】
幕が上がるとしっとりとしたピアノの音色が響く中、中央の長椅子に後ろ向きで腰かけていたキャストが振り向き、“マイ・コレクション”(自分にとって思い入れの深い一曲)を語り始めます。この日は大塚千弘さんの『この森で、天使はバスを降りた』から「光よ照らして/shine on me (shine)」トーク。作品のあらすじや上演当時の思い出を丁寧に話し、一つ一つの作品が役者の人生に刻むものの大きさを感じさせます。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
出演者のトークはこの冒頭のみ。以降は彼らの歌唱にしっかりとフォーカスされ、観客の脳裏には舞台の思い出が鮮やかに蘇ります。近年の上演作ばかりでなく、“お久しぶり演目”からも数多く選曲されているため、改めて“名曲!”と感嘆する瞬間も多々。例えば2006年に初演された『マリー・アントワネット』は2007年帝劇公演以降、日本では上演されていませんが、涼風真世さん(アントワネット役)、今拓哉さん(フェルセン役)がスケール感たっぷりに道ならぬ恋を狂おしく歌う1幕のデュエット「すべてはあなたに」を聴くと、たまらなく全編を再見したくなります。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
いわゆる各人の「持ち歌」披露のみならず、「この曲をあの方が!」と新鮮な組み合わせで聴けるのも今回のお楽しみ。『モンテ・クリスト伯』の「罪を着せろ」では、悪党たちの企みをぐいぐいと練りこんだフランク・ワイルドホーンのメロディを、男性陣(この日は岡田さん、今さん、田代さん、吉野さん)が嬉々として(?)ダークに、エネルギッシュに歌唱。『エニシング・ゴーズ』の「吹け、ガブリエル」では、舞台ではマダム役を演じた保坂知寿さんが今回はヒロイン役を、チャーミングに、軽快に歌います。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
保坂さんは“持ち歌”としては『パイレート・クイーン』の「愛していると言えたなら」を山口祐一郎さんとデュエットしましたが、このツーショットは劇団時代からのお二人のファンにとっては、非常に感慨深いものだったのでは? 衣裳こそロックなテイストでしたが、紆余曲折を経た主人公たちの「もう二度と離れない…」という味わい深い歌詞を、しっとり、かつ爽やかなお二人の歌声で聴いていると、筆者などはこのゴールデン・カップルに胸ときめかせた頃を思い出し、感じ入らずにはいられませんでした。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
いっぽう、涼風真世さん、吉野圭吾さんによる「Young and Healthy」(『42nd Street』)は、「とても若くて健康~」のフレーズが何とも楽しいコミカル・デュエット。ベテランでありながら、言葉通りYoung and Healthyなお二人だからこそ成立するデュエットを余裕たっぷりに歌っており、選曲の妙にも唸らされます。
30曲あまりのナンバーをたっぷりと聴かせるショーは「Good Bye」(『Catch Me If You Can』)で一度幕を下ろしますが、アンコールとして再び幕が上がると、照明をやや落とした中に山口祐一郎さんの姿が浮かび上がり、静かに“あの名曲”がスタート。心なしか以前にも増して愛情深く、優しく響くその歌声を堪能すると、再び全員が現れ、盛大なフィナーレへと転じる、心憎い演出(山田和也さん)です。
『クリエ・ミュージカル・コレクション2』写真提供:東宝演劇部
パリ・コレを意識したショーにふさわしく、度々変わる衣裳もそれぞれラグジュリアス。耳にも目にも楽しく、「これ以上何を望む?」とばかりに、心満たされるショーと言えます。