絵本

世界で一番温かいわけは!? 『サナのあかいセーター』

おばあちゃんからサナに届いた手編みのセーター。せっかくの素敵なセーターなのに、サナには小さいようです。でもどうしても着たくて、友だちとあれやこれやと奮闘するサナ。あらあら、何だか収拾のつかない方向に進んでいくのですが……。小さかったセーターがサナにぴったりの世界一温かいセーターに生まれ変わるお話『サナのあかいセーター』。読み進めば進むほど、心がポカポカと温まります。

執筆者:千葉 美奈子

小さくて着られない『サナのあかいセーター』の大変身

冬のある日、おばあちゃんの手編みのセーターがサナに届きました。でも、きっとなかなか普段は会うことができない距離なのかもしれません。おばあちゃんはサナの体の大きさをしっかり把握していなかったようで、袖も丈も短くてきついのです。そんな「サナのあかいセーター」が、サナが友だちの男の子や動物たちと一緒にあれこれ考え、紆余曲折をへて、ちょうどいい大きさのとびきり温かいセーターに生まれ変わります。そこに至るまでの、笑いと優しさに満ちたドラマ。読み進むにつれて、そして読み終わった後に、何ともいえない温かい空気に包まれるでしょう。


 


やることなすこと裏目に出る!?

セーターが小さければ大きくするためにみんなであちこちの方向に引っ張る、伸びすぎてしまったら縮ませるためにみんなでごしごしざぶざぶ水洗いする……。ものすごく単純な行動に見えますが、サナも友達みんなも、ちょうどよい大きさのセーターにしようと知恵を出し合い、力を合わせています。でも、やることなすこと裏目に出て、しまいには行き過ぎて、セーターが原形をとどめなくなってしまいました。最後の頼みの綱はやっぱりおばあちゃん! みんなはおばあちゃんのもとに向かいます。温かい赤い毛糸のかたまりに包まれて。おばあちゃんの笑顔を見たサナの目に、思わず涙が浮かびます。


みんなの愛の詰まった極上のセーター

手編みならではの温かさ

手編みならではの温かさ

送ったときとは全く違う姿になって戻ってきたセーターに、おばあちゃんもびっくりしたことでしょう。でもきっとそれ以上にびっくりしたであろうことは、自分が思っていたより大きくなっていたサナが、友だちのみんなと一緒にはるばるやってきて姿を見せてくれたこと。

セーターをちょうどよい大きさにするために、どうしたらいいか一緒に考えてくれた友だちの思い、みんなが時間をかけて関わってくれた作業、それらは直接の解決策にはなりませんでしたし、随分回り道をしてしまいました。でも、おばあちゃんによって生まれ変わったセーターの中に、みんなの思いがしっかり編み込まれました。

幼児期の子どもたちには、ハラハラするお話の展開も楽しいでしょう。もう少し大きい子には、周りの人とのつながりも絡んだ、物への愛着というものを感じさせてくれそうです。「物を大切にすること」と書くとどうしても教訓じみてしまいますが、もっと自然で色々な角度からの愛着が表現されているように感じます。そして大人は、物や命の限りある寿命を思って少しほろりとしてしまうかも。やはり冬にぜひ読んでいただきたい、温もりに満ちています。
 
【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場で絵本を見るAmazon で絵本を見る
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます