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演劇ガイドが選ぶ!2014年ベスト8プレイ発表!(2ページ目)

2014年も様々な作品が上演され、沢山のドラマが生まれました。今年も3桁の回数劇場に通ったガイドが、独断とツボで選んだ『2014年ベスト8プレイ』をどーんとご紹介!あなたがハマったアノ舞台は……入っていますか?

上村 由紀子

執筆者:上村 由紀子

演劇ガイド


◆2014年 演劇ガイドが選ぶベスト8プレイ 7月~12月上演◆

THE SHAMPOO HAT 第29回公演 『風が吹く夢』
作・演出 赤堀雅秋 ザ・スズナリ

風

『風が吹く夢』 劇場前のパネル


作・演出:赤堀雅秋
出演
赤堀雅秋 黒沢あすか
野中隆光 児玉貴志 日比大介 滝沢恵 駒木根隆介 遠藤留奈 勢古尚行 
池田成志 ・ 銀粉蝶

こちらも『殺風景』と同じく赤堀雅秋さんの作・演出作品。ですが、劇場の規模も大きく商業的な予算もあった『殺風景』と比べると、ハコの大きさも予算もかなり抑えめ。が、ここでも赤堀ワールドは熱く静かに炸裂していました。

特に事件らしきことは何も起こらず、同じ工事現場で働く大人の男たちが「新人に中古の冷蔵庫を渡してやりたい」との一心から、ロードムービーよろしく関係者の家をただ周っていくという物語。またこの”関係者”の家が全てしょっぱく、何とも言えない物悲しさに満ちているワケです。

個人的に舞台を観ていて感じる大きなツボが「この世界なんてクソだ!でもクソの中に一筋の光が見えるから何とか苦笑いして生きて行けるんだ」というモードなのですが、本作は正にビンゴ!

特に、あるメンバーの自宅に押しかけた男たちが「何だか……臭ぇな」とアイコンタクトしていると、実は子供が初めておまるで用を足したのを、帰りの遅い夫に見て欲しかった妻がおまるを隠していたという展開には完全にノックアウトされました。生きるって素晴らしい……そして生きるって死ぬほどセツナイ。

昨今俳優としての仕事も多い赤堀さんですが、劇作&演出=THE SHAMPOO HATとしての公演もコンスタントに続けて欲しいと心から願うのです。


ナイロン100℃ 42nd SESSION『社長吸血記』
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ 本多劇場

社長

ナイロン100℃『社長吸血記』


とある古びたビルの屋上。昼間は何やら怪しい会社の社員たちが集まってランチを摂ったり不穏な研修をしたりしている。夜になって屋上に集うのは、かつてこの会社で働いていたらしい老人たち。”現在”と”過去”を自称”良い探偵”が繋ぎながら、行方不明になった社長の謎や、かつて自殺をしたらしい社員の真実が解きほぐされていく……。

この作品では「劇団」という形態について改めて考えさせられました。劇団=ナイロン100℃以外でも活躍しているメンバー達が一つの舞台の為に集まり、何とも独特なKERAさんの創り出す世界の中で生きる。このある種特殊な”文体”をここまで作者の思う通りに演じられるのは、ナイロンのメンバーとして長い時を一緒に過ごしてきた蓄積と経験があるからなのだろう、と。

演劇界の主流がプロデュース公演になりつつある今だからこそ、長く「劇団」という形態を維持し、そこで完璧な世界を立ち上げている舞台に出会えると、何だかとても幸せな気持ちになれるのです。

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