「何もしていないのに疲れた」と感じるのは、「疲労蓄積」のサイン
疲れた表情の自分を鏡で見て、さらに疲れが増してしまったという人もいます
鏡に映った自分を見た時、抜け殻のように活力の無い顔をしていると気づくことはありませんか? 蓄積した疲労は体に感じるだけではなく、表情にも表れてしまいます。
疲れの要因は、人それぞれ。疲れた表情の自分を見て、さらに疲れが増してしまったという人もいます。「新製品のプレゼンがあり、人前で話すのに緊張して疲れた」「納期ぎりぎりで、睡眠時間を削って仕事をしたから疲れた」など、疲れの原因がはっきりしている場合もあります。
しかし、このように疲れの原因となる出来事が起こる以前に、既に疲れが溜まりやすい基盤ができあがっている人もいます。そうなると、本来であれば問題なく取り組める仕事や何気ない日常生活での出来事に対しても、予想以上の労力・気力を要してしまいます。
何もしていないのに疲れるなら、生活習慣の見直しが最優先
いつの間にか疲れやすさを感じるようになったというケースも少なくありません
筆者が受ける健康相談でよくあるものに、「特に疲れるようなことをしたわけでもないのに、すごく疲れを感じる……」というものがあります。疲れる理由の心当たりが無いケースです。
疲労する原因には、肉体的疲労と精神的疲労があります。両方が絡んでいるケースも少なくありません。しかし、疲労状態がいつの間にか慢性化していたり、疲労がきっかけとなって、体調を崩してしまうことになったりと、ひどくなってからでないと、自分の体に目を向けることがないという人もいます。早期回復ができない状態へと進んでしまうと、仕事も休まざるを得なくなるでしょう。
普段、特に気にせずに繰り返している習慣が、疲労しやすい体を作り出しているケースがよくみられます。いつも当たり前のように行っていることなので、それが疲労と関係するとは思えないこともあるでしょう。
では、疲労に繋がる生活習慣と注意すべきポイントについて見ていきましょう。ちょっとしたことでも、生活習慣を見つめ直すきっかけになると思います。
疲れを招く朝のNG生活習慣と改善ポイント
- 時間ギリギリ! 慌てて起床し出勤の準備
- 時間が無い、または食欲が無いなどの理由で朝食を食べない
- 外出時の靴は、ファッション性重視。多少歩きにくくても気にしない!
- 今日1日のことをあれこれと心配し過ぎてしまう
- 「おそらく大丈夫だろう」と、1日のスケジュールを複数詰め込んでしまう
- 靴底のすり減りを気にせずにそのまま外出
- 目覚めた時から肩こりが……「まぁ、仕方ない!」と何もせずに出勤
■朝の習慣の改善ポイント
1. 寝起きはゆっくりと体を目覚めさせる
朝はベッドから飛び起きずゆっくりと動き始めましょう
目覚めてから慌てて飛び起きて、すぐに支度を始めても、体はまだ活動する準備が万全ではありません。その状態で体への負担をかけながら、急に活動を始めると早々に疲れを感じてしまうでしょう。
特に夜更かしをして就寝時刻が遅かった人は、目覚めに向けての体のリズムが狂いがちですので要注意です。
2. 意識的に酸素を体内に取り込もう
朝は時間の余裕をもって起床を心がけます。布団の中で深呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと伸びをしましょう。意識的に酸素を体内に取り込んで、筋肉へも刺激を与えましょう。朝の日の光を浴びながら……が理想的ですが、起床時刻によっては日の出前ということもありますよね。その場合はなるべく明るい明かりをつけて、目を覚ましましょう。
3. 胃にやさしい朝食を心がけましょう
1日を元気にスタートさせるためには、朝食は必要なエネルギー源です。特に疲労時は、胃の働きも低下しているケースがあります。満腹になるまで食べる必要はなく、胃の負担も考慮して、消化の良いものを摂るようにすると負担が少なく、エネルギー不足による朝の疲労感が予防できます。
4. 頭をフル回転させてしまう傾向のある人は脳を休めて
考え込む傾向があり、あらゆることを想定して心配になったり、スケジュールを詰め過ぎたりすると、脳疲労の要因になります。心配事やスケジュールの密な段取りを頻繁に考えるだけでも、心身を緊張させつつエネルギーを要する場合があるのです。
5. 靴底の減りと朝の肩こりは健康状態のバロメーター
靴底がすり減っていると、余計な筋力を使って姿勢を保ち、動くことになるため、気付かないうちに疲れが溜まります。そして、目覚めの肩こりは睡眠中に疲労が回復していないサインの場合もあります。
1日を快適に過ごすためのポイントについては、「1日の充実度が変わる!寝起きのだるさ解消法」をあわせてご覧下さい。
疲れを招く昼のNG生活習慣と改善ポイント
- デスクワークなど座り時間が長くても、ストレッチや体操などをしない。または、全く運動習慣が無い
- 脚を組んで座ることが多い
- 手軽にジャンクフードで昼食をとることが多い
- 運動後に特にケアをしない
- 毎日、筋トレで鍛えている
- 家にいるのがもったいないので、休日はいつも外出をする
- 風邪をひいても休まずに頑張って出勤する
1. デスクワークは「疲労」の温床!?
デスクワークを毎日行う人は、職場でも疲労をためないようケアしましょう
デスクワークには疲労の要素が複数あります。同じ姿勢で作業をすることによる疲労、近い距離の書類や画面を見続ける「目」の疲労、業務内容に関する精神的疲労など、人によってはもっとあると思います。これらの疲労蓄積を予防するには、体を動かすことがオススメです。気分もスッキリして精神的疲労も和らげます。
2. 脚を組むと余計に疲れやすい体に!
体のどこかしらの筋肉が疲労してくると、椅子に座っていること自体がつらくなる場合があります。その際脚を組むことで、安定して座っていられるようになります。しかし、楽に感じたとしても、体の歪みを悪化させ、全身の筋肉や脳への血流を滞らせる要因となり、疲労しやすい状態へ近づいてしまいます。
3. 疲労回復に必要なのは栄養バランス!
ジャンクフードは、時間が無いランチタイムでも手軽に食べることができます。しっかりとした味付けで、ボリュームもあるので満足度は高いかもしれませんが、これが連日、昼も夜も……と習慣化されると健康問題に発展することも。栄養価が偏り、疲労回復に必要な栄養素の摂取には至りません。
4. 疲労しやすい運動習慣に要注意
「毎日筋トレで鍛えているから、疲労には強い!」と思い込んでいたら危険です。筋トレ後の筋肉には、疲労回復時間も必要です。約2日は筋肉を休ませなくては、筋肉が疲れ切ったままになってしまいます。また、スポーツの後にはクールダウンをして筋肉をほぐしましょう。
5. 頑張り屋さんをやめてみる
風邪をひいた時は、免疫力が低下しているサインです。免疫系のバランスが崩れ、発熱や倦怠感に襲われても、「体は動く!」と頑張って家事や在宅ワークをしてしまう人も多いと思います。ひどい咳が続くと体力を奪われる感覚は得られやすいかもしれませんが、咳の出ない風邪症状でも体を回復させる力が必要であるため、休息が大切なのです。体が動くからと、気力で活動していると疲労が蓄積され、体調が戻りにくくなります。
疲れを招く夜のNG生活習慣と改善ポイント
- 仕事が終わり、疲れているけど人付き合いを重視! 居酒屋へ……
- 「疲れている時は、栄養を沢山摂らなくては!」と無理にでもお腹いっぱい食べる
- 夜食が欠かせない
- 熱めのお風呂に入らないと満足できない
- お風呂に入る時間が短く、シャワーのみのことも多い
- 就寝の直前まで、パソコンやスマホ・携帯などを使用している
- 就寝時間が遅い
1. 人付き合いも大切だけれどそれ以上に休息が重要な時もある
人付き合いも大切ですが、休息を優先させるべき時もあります
疲労の自覚がある時や休息の時間が少ない時期などは、なるべく仕事の後そのまま帰宅してゆっくりと過ごしましょう。居酒屋でのストレス解消も不可欠という人がいるかもしれませんが、飲食の時間帯が遅くなると、消化器系に負担がかかり、睡眠の質も低下してしまいます。結果、睡眠中の疲労回復を妨げることになりかねません。
2. 元気になるためにたくさん食べる!?
疲労回復には、バランスのとれた栄養は必要です。しかし、体調が思わしくない時に「栄養を摂らなくては」と頑張って食べる人がいます。内臓が疲労していると消化不良や栄養の吸収率低下がみられるケースもあるため、たくさん食べるよりもその内容を考慮しましょう。栄養学的疲労回復のポイントは、「疲労回復のための食事・栄養学的に効果がある献立のコツ」に詳しくまとめてあります。
3. 入浴のタイミングも大切
1日の疲労を回復させてぐっすり休むためには、就寝の直前を避けて、38~40度の湯温で入浴するのがおすすめです。リラックスした状態になり、入眠が促されます。入浴の時間帯やタイミングは諸説ありますが、厚生労働省は「就寝時間の2~3時間前まで」の入浴を推奨しています。また、シャワーだけで済まさず、ゆっくりと湯船に浸かる方が、血行が促進されて疲労回復に役立ちます。
4. 眠る前にはディスプレイを見ないように!
パソコンやスマホなどの画面は、とても明るく目への刺激が強いです。目に対する光刺激によって、体内のリズムが乱されることがあり睡眠障害のきっかけとなることも考えられます。疲労回復に関係するホルモン分泌にも悪影響を与えるので、朝目覚めた際にも疲労が抜けておらず、スッキリしない1日のスタートとなる恐れがあります。夜、帰宅後はなるべく照明を夕日に近い色に落としておくと心身が休まる方向へ向かいます。就寝前のスマホの身体への影響については、「寝る前のスマホは危険?!熟睡しにくくなることが判明」や「スマホは危険!? ブルーライトの睡眠への影響と対策」をあわせてご覧下さい。
ちょっとしたことばかりですが、これらの要因が重なり続けると、疲れの抜けにくい状態になってしまいます。慢性的な疲労感や体調不良を起こす前に、生活習慣を見直して、改善できる部分から少しずつ変えてみてはいかがでしょうか?
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