第一位 トニー・ベネット&レディ・ガガ「チーク・トゥ・チーク」より「エニシング・ゴーズ」
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レディ・ガガのジャズと言うだけでもインパクトが大の上に、88歳の歌手とのデュエット。どんなものなのか、聴く前から色々な意味でドキドキさせられた話題盤でした。
さて、半ば怖いもの見たさ(聴きたさ)で、聴き始めてみると、1曲目コール・ポーターの名曲「エニシング・ゴーズ」から、最初の杞憂を吹き飛ばす快唱。二人のパンチの効いた声量やリズムの乗り、歌いまわし、つまりはすべてにノックアウトされてしまいました。
ここでは、特に若いパートナーを得たトニーの張り切りぶりが素晴らしく、聴くほどに、トニーの年齢が信じられなくなってきます。
トニー・ベネットと言えば、「アイ・レフト・マイ・ハート・イン・サンフランシスコ」に代表される1950年代から活躍する大ポップスター。それから60年以上が経過しているというのに、ここでの歌唱がまったく声の衰えを感じさせないばかりか、むしろ艶があって伸びがあるのには驚嘆するばかりです。
それも、歌手と言う職業に真摯に向き合い、何十年にもわたって精進した成果だと思うと、トニーのエンターテイナーとしてのプロ意識に感動すら覚えます。
対するガガもお見事。ジャンルを問わず、最高のパフォーマンスをすることができる、実力を兼ね備えた、現代における真のスーパースターだということを証明してみせました。
そもそもこの二人はこの共演が初めてではありません。2011年9月のトニーのアルバム「デュエットII」において、はじめてデュエットを披露。大好評で迎えられました。このアルバムでトニーは85歳にして、Billboard 200で自身初の初登場1位を獲得。また最年長首位記録を大幅に塗り替えた作品となりました。
そんな手ごたえ十分な中で、満を持して再演となったこのアルバムが悪かろうはずはありません。今年最高に売れたジャズ・アルバムとしてだけではなく、ジャズ・ヴォーカルアルバムとして今後も長く聴かれるであろう名盤となっています。
1928年のジミー・マクフューによる古いスタンダード「捧ぐるは愛のみ」では、トニーは「ベイビー」という歌詞の部分を「ガガ」と歌詞を変え歌っています。その艶っぽさには拍手を送りたい気分です。
二人が仲良く手を取り合っているジャケットも楽しいこのアルバム。題名の「チーク・トゥ・チーク」とは、まさに頬(チーク)と頬を合わせて踊ることを言うのですが、ジャケット写真の二人もまさにダンスをしているかのよう。
ここで、ダンスを知っている人ならば、少しおかしいと思われる構図だということに気が付きます。本来ダンスは男性が左手を上げて女性の右手を持つのがきまり。ここでは、トニーが右手でガガの左手を持っています。
これは、おそらくはガガのトレードマークの左肩のタトゥーを目立たせようとするガガとトニーと製作者側の配慮。ダンス文化が根付いているアメリカにおいて、ここでのトニーの大人の対応もさすがと思わせます。
懐の深さを思うと同時に、二人が生きてきたショウ・ビズの世界の徹底したショーマン・シップを感じさせるジャケットになっています。ここまでやって、売れないわけはない!といったところでしょうか。
いずれにしても、作品としての出来、話題性でも、近年群を抜いた楽しいジャズ・ポップスアルバムと言えます。
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