悪魔の橋と白雪姫城、世界遺産「セゴビア旧市街とローマ水道橋」

田畑と草原に浮かぶ石の船にたとえられるセゴビアのアルカサル

田畑と草原に浮かぶ石の船にたとえられるアルカサル。©YOSHIHIRO TAKADA/a.collectionRF/amanaimages

ローマ時代の都市遺跡と、中世の美しい城塞都市が融合した歴史の街・セゴビア。あまりの完成度の高さから悪魔が作ったと伝えられる美しい水道橋と、ディズニーの生んだ世界初の長編カラーアニメ『白雪姫』のお城のモデルとなったアルカサルは、スペイン屈指の見所のひとつといえる。

今回はマドリード近郊にあるスペインの世界遺産「セゴビア旧市街とローマ水道橋」を紹介する。

ひと粒で二度も三度もおいしい、セゴビアの町歩き

アルカサルのフアン2世の塔から眺めたセゴビア旧市街

アルカサルのフアン2世の塔から眺めたセゴビア旧市街。中央の大きな塔はセゴビア大聖堂のもの

サン・ミリャン教会

サン・ミリャン教会。ゴシックなどの派手な建物もいいが、ロマネスクをはじめとするシンプルな教会がまた美しい

マドリードの近郊には数多くの世界遺産がある。

50km圏内に「マドリードのエル・エスコリアル修道院とその遺跡」「アルカラ・デ・エナレスの大学と歴史地区」「アランフェスの文化的景観」、100km圏内に「セゴビア旧市街とローマ水道橋」「アビラの旧市街と城壁外の教会群」「古都トレド」、200km圏内に「サラマンカ旧市街」「サンタ・マリア・デ・グアダルーペ王立修道院」「歴史的城壁都市クエンカ」「水銀関連遺産:アルマデンとイドリ」だ。このうち特にオススメしたいのがトレドとセゴビアだ。

 

水道橋と街並み

ローマ時代の水道橋と街並みの調和が見事

セゴビアの特徴は、ローマ時代から中世に至るさまざまな建物が街並みと見事に調和しているところ。たとえばローマ水道橋は1世紀、アルカサルは12~19世紀に増改築を繰り返した城で、千年以上の開きがある。これだけ時代が離れている建物が混在しているのに、街はとても美しく、一枚の絵のように均整が取れている。

この水道橋は1884年まで約1800年にわたって使用されてきた。そして現在では水道管が通してあって、その中をやはり水が流れている。古いものを上手に活用して街と調和させる伝統は、いまなお生きている。

 

水道橋の「悪魔の橋」伝説

ローマ時代の水道橋

ローマ時代の水道橋。歩行者と比べると一つひとつの石の大きさがわかる

ローマ水道橋の技術はあまりに高度で、同レベルの水道はそれから1,500年以上も造られることがなかったといわれる。そこで誕生したのが「悪魔の橋」伝説だ。簡単に紹介しよう。

マリア像と十字架と水道橋

上部にはマリア像、下部には十字架が設置されている

セゴビアの街に美しい少女がいた。少女は毎日の水くみに疲れ果て、傷めた腕を見つめてこうつぶやいたという。「夜明けまでに私の家まで水を引いてくれるなら、私の魂を差し上げます」。これを聞いた悪魔はひと晩の内に水道橋を仕上げるが、最後の石をアーチの頂上に置く瞬間にニワトリが声をあげ、約束の時間に間に合わすことができなかった。少女は悪魔と約束をしたことを恥じ、教会で懺悔し、橋の中央に守り神としてマリア像を設置するよう嘆願したという。

この話は多数のバリエーションがあるようだが、共通しているのが「悪魔」。それほど中世の人たちにとって、この橋は信じがたい存在だったのだろう。