不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

マンションの提供公園、公開空地

規模の大きなマンションでは、敷地の一角に提供公園や公開空地が設けられている場合もあります。これらがなぜ造られるのか、どのような性質のものなのか、提供公園などを利用する近隣住民の人も含め、しっかりと理解しておきましょう。

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.062】

マンションの提供公園

敷地の一角にある小さな公園。地域の憩いの場を設ける目的だが……


大きめのマンションの脇を通ると、その一角に小さな公園や広場、遊歩道などが設けられていることがあります。また、販売用のパンフレットなどを見ると、敷地全体図の一部が公園になっているケースもあるでしょう。

これらは建築基準法の総合設計制度や自治体の条例などにより、一定規模以上の開発に対して一定面積割合以上の設置が義務づけられたもので、提供公園または公開空地といわれます。

土地そのものを自治体へ無償譲渡、つまりタダで寄付をしてその後の管理も自治体に任せるものを「提供公園」、マンションの共有財産(私有地)として維持管理するものを「公開空地」と呼ぶことが一般的で、たいていはその片隅に標識を立てるなどして明示されます。

どちらも区分所有者(居住者)だけでなく、近隣住民などの利用も認めるものですが、第三者から見て提供公園か公開空地かの判別が難しかったり、それが分かったとしても「どう違うのか」がはっきりしなかったりする場合もあるでしょう。

提供公園は土地の所有権が自治体へ移りますから、原則として街区公園などと同じ扱いであり、そのぶんの固定資産税などがかかることはありません。また、ブランコや滑り台など子ども向けの遊具やベンチなどが設置されるケースも多くなっています。

公園として整備したうえで無償で寄付されるため、その整備費用と公園部分の土地代が原価に含まれ、間接的に購入者が費用負担をすることになりますが、必ずしもそのぶんが割高になるというわけではありません。

提供公園や公開空地を設ける代わりに容積率の割増しや高さ制限・斜線制限などの緩和を受け、建設戸数を増やすことによって、結果的に分譲価格が安くなるケースもあるためです。

ただし、公開空地の場合はあくまでもマンションの私有地であり、その後の維持管理も区分所有者全員の負担でやっていかなければなりません。植栽が多いと、その剪定などの手入れにかなりの手間や費用がかかることもあるでしょう。

さらに、公開空地部分に不審者が入り込んだり、ペットの糞の放置、ゴミやタバコのポイ捨てなどがあったりすると、居住者側の負担や管理員の心労も増えることになります。「私有地」として、何らかの利用制限がマンション独自に設けられることも仕方がありません。

その一方で、提供公園や公開空地として整備される区画が裏通り側で、近隣住民などが利用するのには不便だったり、高低差のある敷地で人通りの多い面からは死角になるような位置に設けられていたりするケースもあります。

提供公園や公開空地の面積割合には規定があっても、その「使いやすさ」や「防犯対策」などに明確な基準はないため、実際にはほとんど使われることがないままで、うら寂しい雰囲気になってしまっている公園も少なからずあるでしょう。

敷地に隣接して公園などがあることで「物件の価値が高まる」「まちなみ景観や居住環境が向上する」など、そのメリットが強調される場合もありますが、本当にそうなのかどうかはあくまでも物件次第です。

提供公園や公開空地がある中古マンションを検討するときは現地の様子をよく観察すること、これから建てられるマンションであればその配置をもとにイメージを思い描いてみることが欠かせません。

また、公開空地を利用する近隣の人などは「マンションの私有地であること」を念頭に、マナーをしっかりと守ることも大切です。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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